台湾とベトナム、南シナ海において中国に勇猛果敢な対抗措置【米・ロシア・台湾メディア】(2017/07/28)
7月15日付Globali「南シナ海仲裁裁定から1年、中国による裁定無効化が実現?(2)-フィリピン・インドネシアの細やかな抵抗」の中で、“中国から軍事行動を起こされないぎりぎりのところで、フィリピンが領有権争いの海域での天然資源探査活動の再開を目論めば、インドネシアは、自国の主権範囲と主張する海域について(南シナ海から切り離して)独自の命名を行う等、細やかな抵抗を試みている”と報じた。そして、今度は台湾が、実効支配する南沙(スプラトリー)諸島内のイツアバ島(注後記)に6基の榴弾砲(大砲の一種)を配備して防衛を強化すれば、ベトナムはスペインの多国籍企業に委託して同海域での石油の探査活動を進めている。
7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。...
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7月26日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「台湾、南シナ海で実効支配する小島に榴弾砲を配備して防衛強化」
台湾の
『台北タイムズ』紙の報道によると、台湾は7月24日、南シナ海の南沙諸島内で実効支配するイツアバ島の警護を担当する台湾海岸巡防署(沿岸警備隊や海上保安庁に相当)南沙部隊に、6基の榴弾砲を供給したという。
同島は1956年から台湾が実効支配しているが、他に中国・ベトナム・フィリピン・マレーシアが領有権を主張している。ただ台湾は、榴弾砲の射程内にある、同島至近のサンド礁を実効支配しているベトナムについて脅威は感じておらず、むしろ、南シナ海全域のほぼ90%を自国主権と主張して、軍事拠点化を進めている中国を念頭に置いた防衛強化とみられる。
なお、同島については、昨年の7月の常設仲裁裁判所(PCA)によって、同島含めて、南沙諸島内には排他的経済水域(EEZ)を設定できる“島”はなく、12海里(約22キロメーター)の領海を主張できる“岩”しか存在しないと裁定されている。そこで、台湾としては、EEZで認められる漁業権・天然資源探査権を行使できなくなったことから、この点においては、PCA裁定を無効とする中国と意見は一致している。
同日付台湾『台北タイムズ』:「イツアバ島に生命維持装置備え付けの飛行機を派遣」
台湾空軍と海岸巡防署は7月24日、生命維持装置備え付けのロッキードC-130貨物機を南沙諸島内のイツアバ島に向かわせ、海難事故等による重傷患者の救出訓練を実施した。同島は台湾から1,600キロメーター南方にあるが、万一同海域で漁民や貨物船などの海難事故が発生した場合、台湾南部の屏東(ピントゥン)空軍基地までの3時間半の飛行中も、重症患者の延命措置が機上で可能とすべく、救出体制を強化する一環で行われた。
海岸巡防署の王茂霖(ワン・マオリン)主任は、南シナ海において2000年以降で累計74回(負傷者延べ104人)の海難救助を実施しており、多くが台湾人漁師であるが、海外貨物船の乗組員も含まれているという。そして同主任は、かかる海難救助体制を強化することで、同海域で領有権を争う周辺国との関係改善に繋がることを期待しているとも語った。
一方、同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「中国、南シナ海で石油掘削を進めるベトナムに圧力」
中国外交部(省に相当)の陸慷(リウ・カン)報道官は7月25日、南シナ海の領有権問題に関わる当事国に対して、一方的な海洋活動を慎むよう強く求めるとした上で、必要に応じて強硬措置を講ずるとも表明した。
目下、南シナ海の南沙諸島において、ベトナム政府から委託されたスペインのレプソル(石油・天然ガスの探査・生産を行う多国籍企業)が、3億ドル(約330億円)を掛けて石油掘削を進めている。
報道によると、中国はベトナムに対して7月24日、即刻探査活動を中止しない場合、強硬措置に出ると圧力をかけたと言われている。
なお、中国海洋石油総公司(CNOOC)の評価によると、南シナ海には約1,250億バレル(約198億7,500万キロリットル)の石油、及び500兆立方フィート(約142億立方キロメーター)の天然ガスが賦存しているという。
(注)イツアバ島:中国名太平島(タイピンダオ)は、南沙諸島の北部に位置する環礁州。南沙諸島中、自然形成された陸地面積が最大の海岸地形で、東西約1,290メーター、南北約370メーターの小島。イツアバとはマレー語で“あれは何だ”の意。
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中国、北朝鮮の脅威増幅で南シナ海問題フェードアウト期待?<米・英・ロシア・中国メディア>(2017/05/30)
5月28日付Globali「東・南シナ海問題でG-7対中国が火花、また米軍対中国軍の挑発行動も>の中で触れたとおり、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)による東・南シナ海問題懸念の共同声明に中国側が不快の念を示せば、米軍による“航行の自由作戦(FONOPS)”等の行動に対抗するように、中国戦闘機が妨害行為に出ている。しかし、米メディアによれば、5月29日に北朝鮮が3週連続の弾道ミサイル発射による脅威増幅によって、トランプ大統領もマティス国務長官も、南シナ海問題より北朝鮮問題での中国の協力を仰ぐ方が大切としている模様と報じれば、ロシアメディアは、貿易と気候変動問題で意見の統一ができないG-7が、日米の策略によって、東・南シナ海問題に関し中国を非難することで唯一の合意点を見出したと皮肉な報道をしている。一方、日中高官の協議について、西側メディアが、北朝鮮問題で日本が中国側圧力強化に期待すると述べたと報じているのに対して、中国メディアは、北朝鮮問題の話題には一切触れず、日中間の中・長期的問題について協議したとのみ報道している。
5月30日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「北朝鮮、中国は意識しているかどうか不詳だが、南シナ海問題から目を逸らさせることで間接的に中国に協力」
北朝鮮は5月29日、3週間で3度目の弾道ミサイルを発射したが、国際社会以上に中国が辟易しているとみられる。しかし、別の見方をすると、北朝鮮の脅威が世間から注目されればされる程、中国が真に関心のある南シナ海問題について、国際社会の目を逸らさせるアシストとなっている。...
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5月30日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「北朝鮮、中国は意識しているかどうか不詳だが、南シナ海問題から目を逸らさせることで間接的に中国に協力」
北朝鮮は5月29日、3週間で3度目の弾道ミサイルを発射したが、国際社会以上に中国が辟易しているとみられる。しかし、別の見方をすると、北朝鮮の脅威が世間から注目されればされる程、中国が真に関心のある南シナ海問題について、国際社会の目を逸らさせるアシストとなっている。
すなわち、5月25日に米軍が南シナ海の中国人工島周辺でFONOPS作戦を展開し、更に、5月27日にG-7が中国の一方的な海洋活動に懸念を表する共同声明を発信したばかりであるのに、5月28日の報道番組に登場したジェームズ・マティス国務長官は、北朝鮮について“(米国にとって)直接的な脅威”だと深刻に危機感を表明したものの、南シナ海問題には一切言及しなかったからである。
5月29日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「米国、“中国の弱点を突くため”G-7サミットを利用」
G-7サミットは5月27日、東・南シナ海における中国の海洋活動に懸念を表する共同声明を出した。しかし、本紙がインタビューしたロシアの政治及び軍事評論家の多くは、G-7で貿易及び気候変動問題で意見の一致を見出せないことから、日米が画策して、中国が関わる東・南シナ海問題を挙げることで共同声明をまとめるべく腐心した、とコメントしている。
また、政治評論家は、G-7他西側諸国は中国の成長に危機感を覚えているとした上で、国際通貨基金(IMF)やその他の国際経済・金融組織の評価では、2050年までに中国が世界最大の経済大国となり、米国はインドに抜かれて3位に落ち、更に、欧州主要国は上位10傑からも漏れると予測していると言及している。
なお、ロシア極東問題専門家は、日米の主導もあって、いずれにせよ今後ともG-7は中国を目の敵にしようから、中国にとってロシアとの連携強化が重要となるとコメントした。
一方、5月30日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「日本、北朝鮮問題で中国に大きな役割期待と表明」
日本の国家安全保障局の谷内正太郎局長は、北朝鮮が再度の弾道ミサイルを発射したのと同日の5月29日、中国の楊潔篪(ヤン・チエチー)外交統括担当国務委員を迎えて、更に脅威を増した北朝鮮問題を改善するため、中国側に更に大きな役割が期待されると表明した。
一方、中国外交部は当日夕方、楊国務委員は日本側に対して、目下日中関係は重要な局面にあること、また、南シナ海問題は当事国間の対話に委ねられていることを認識するよう話したと発表したが、北朝鮮問題については一切言及していない。
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』配信):「日中高官が4度目の政治対話」
中国の楊国務委員と日本の谷内局長が共同議長となって、日中高官による4度目の政治対話が5月29日に日本で開催された。
楊国務委員は日本側に対して、日中間は目下重要な局面にあり、また、国交回復45周年に当ることもあって、歴史を忠実に捉えて将来に繋げるべきだと表明した。すなわち楊氏は、台湾問題や南シナ海問題につき、歴史的事実に則して日本側に建設的な対応を求め、また、東シナ海の平和と安定のために双方の努力が必要と述べた。
更に楊氏は、中国が推進する一帯一路経済政策への日本の参加・協力に期待するとも表明した。
これに対して谷内局長は、アジアにおける経済大国である日中は、今後とも地域の安定のために、脅しあうのではなく相互協力体制の構築が必要だと述べた。更に同局長は、日本は台湾問題含めてこれまでの歴史認識について変更はないと語った。
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