世界気象機関(WMO、1950年設立の国連専門機関のひとつ)はこの程、エルニーニョ現象(注1後記)が7年振りに発生したと正式に発表した。そのため、世界各地で猛暑となり、また熱帯病の感染拡大の恐れがあると警告している。
7月4日付
『ロイター通信』、
『ユーロニュース』、
『ザ・ガーディアン』紙等は、WMOが正式にエルニーニョ現象の発生を確認した上で、世界中で猛暑と熱帯病の感染拡大の恐れがあると警告したと報じている。
WMOは7月4日、7年振りにエルニーニョ現象の発生が認められたと発表した。
これまで同現象が発生した際には、地域によって熱帯低気圧(サイクロン)や豪雨の発生、また深刻な干ばつに襲われている。
世界の平均温度が最高となったのは2016年で、そのときもエルニーニョ現象が発生していた。
しかし、気象専門家は、気象変動の影響で更に極端な高温事態が発生する恐れがあるとコメントしている。
WMOも今年5月、今後5年間が異常気象となる可能性が高いと表明していた。
WMO気象予報部門のウィルフラン・モーフォーマ=オキア部門長は記者会見で、“厳しい気象状況となるのが今年なのか来年なのか予想するのは難しい”とした上で、“今後5年内に平均気温の最高値を更新する事態となるのは確かだと考えられる”と発言した。
WMOは6月にも、エルニーニョ現象に関連して、デング熱(注2後記)、ジカ熱(注3後記)、チクングニア熱(注4後記)のような熱帯感染症が広範囲にわたって発生する恐れがあると表明していた。
世界保健機関(WHO、1948年設立)環境・気候変動・公衆衛生担当のマリア・ニーラ理事(60歳、2005年就任)も、“今後の異常高温現象に伴って、感染症の拡大が十分考えられる”とコメントしている。
なお、WMOによれば、エルニーニョ現象は2~7年毎に発生し、9~12ヵ月にわたって続くことが多いという。
過去エルニーニョ現象が発生した際には、南米南部、米国南部、中央アジアが豪雨に襲われ、一方で豪州、インドネシア、南アジア、中米、南米北部で深刻な干ばつが発生していた。
(注1)エルニーニョ現象:中央太平洋及び東太平洋の熱帯域で発生する海面水温が上昇しては下降する振動。その結果、西太平洋に高い気圧を、東太平洋には低い気圧をもたらし、そのために発生した偏西風によって本来冷水海域の南米ペルー沖に赤道方面から暖かい海水が流れ込み、平均水温が1年余り平年より高い状態が続く現象。これまでの記録で、エルニーニョ発生時に地球上の平均気温が高くなり、一部地域に極端な少雨・干ばつ、また別の地域に豪雨をもたらす異常気象が発生している。
(注2)デング熱:デングウィルスが原因の感染症で、熱帯病の一つ。蚊の吸血活動を通じて、ウィルスが人から人へ移り、高熱に達することで知られる一過性の熱性疾患。症状には、発熱・頭痛・筋肉痛・関節痛、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。
(注3)ジカ熱:ジカウィルスによって引き起こされる病気。アジア、アメリカ、アフリカ、太平洋で感染が発生。主たる症状は軽度の発熱、結膜充血、筋肉痛、関節痛、頭痛、斑点状丘疹。
(注4)チクングニア熱:ネッタイシマカやヒトスジシマカなどにより媒介されるウィルス性の伝染病。2日から長くても2週間程度の潜伏期間の後に、40℃に達する高熱と斑状丘疹があり、関節が激しく痛む。他に頭痛や結膜炎、羞明(眩しがること)などを伴うことがある。
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1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ぶ独立記念日である。しかし、先住民や擁護団体は、1778年に英国艦隊がオーストラリア大陸を植民地とするために入境してきた“侵略の日”だとして、全国で抗議活動を展開している。
1月26日付
『ロイター通信』は、「数千人が、オーストラリア・デイは“侵略の日”だと叫んでデモ行進」と題して、先住民や彼らを擁護する団体が、英国からの独立記念日ではなく英国による“侵略の日”だと抗議して、全国でデモ行進を行ったと報じている。
1月26日は「オーストラリア・デイ」と呼ばれる、英国からの独立記念日である。
しかし、先住民のアボリジニや彼らの権利擁護の活動をしている団体が、英国艦隊が植民地化のためにシドニー湾に“侵略してきた日”だと抗議して、全国で数千人がデモ行進を行った。
ニューサウスウェールズ州都のあるシドニー市街では、デモ隊がアボリジニの旗を掲げて練り歩いたり、先住民の慣習である煙を焚く儀式を執り行った。
他の都市でも、同様の抗議活動が行われていて、豪州『ABCニュース』報道によると、南オーストラリア州アデレードでは約2千人が参加したという。
首都キャンベラでは、アンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)が先住民の人たちを尊重している、と演説していたが、その先住民は遥か6万5千年も前から豪州の地に移り住んできていた。
同首相は、“世界で最古の文化を継承してきた先住民とともに、豪州の独特な特性として認識していこう”と訴えた。
ただ、同首相は、「オーストラリア・デイ」は先住民にとって“苦難の日”と理解するも、この祝日を変更する考えはないとしている。
豪州市場調査会社ロイ・モーガン(1941年設立、メルボルン本拠)の世論調査によると、約3分の2が“オーストラリア・デイ”のままで良いとしていて、“侵略の日”とすべきだと回答したのは3分の1で、この結果は1年前と同じ比率だという。
この日の扱いについて多くの議論がされる中、例えば豪州最大の半官半民の通信会社テルストラ(1975年設立、本社メルボルン)は今年、従業員に1月26日を祝日とせずに出勤し、代替休日を取得することを容認した。
同社のビッキー・ブレイディ最高経営責任者(CEO)はSNS上で、“(235年前の)オーストラリア・デイ以降、多くの先住民が生命・文化等を蔑ろにされてきており、祝日と捉えるかどうか含めて一考する時期に来ている”と語り、彼女自身も出社している。
総人口2,500万人の豪州には、88万人の先住民が暮らしているが、経済的にも社会指標上でも劣っており、政府は“格差が定着”してしまっていることを理解している。
ただ、昨年半ばに返り咲いた中道左派の労働党政権は、先住民のことをしっかり認識し、また、彼らの生活に影響を与えるような決定を行う場合に事前に相談する等について、憲法上でも明文化するかどうか国民投票を行う考えを持っている。
同政府は、年内に国民投票を実施できるよう、3月に必要な法整備を行う意向である。
同日付『ザ・ガーディアン』紙は、「植民地問題に関わる討論が沸騰する中、数千人が豪州の独立記念日に侵略の日と叫んでデモ行進」として詳報している。
豪州の祝日当日、植民地化された当国の歴史について政治的にも社会的にも考察すべきだとの声が上がる中、豪州全土で数万人が抗議のデモ行進を行った。
メルボルン大学(1853年設立の公立大)のマルシア・ラントン教授(71歳、人類学・地理学専問、アボリジニ出身)は1月26日、オーストラリア・デイは植民地化を祝う日であってはならず、“いい加減に嘘をつくのは止め、豪州の過去の悲惨な歴史を見直すべきだ”と訴えた。
1月26については19世紀以降認識されてきていたが、オーストラリア・デイと呼ぶ祝日となったのは1994年になってからである。
しかし、それ以降、豪州の先住民が過去から現在に至るまで如何に虐げられてきたか、との問題提起が日増しに強くなってきている。
そこで、かつては花火を上げ、祭りで賑わう日であったが、今年のオーストラリア・デイ当日には、先住民や彼らを擁護する団体が、“侵略の日”、“生存の日”、“統治された日”等と叫んでデモ行進を行っている。
近年では、“オーストラリア・デイの期日変更”運動が盛んになっていて、シドニーでは、アボリジニ出身のリンダ=ジュン・コウ氏が、数千人の群集を前にして、白人の豪州人のための日ではなく、“235年前(1788年)から、彼らは私たちの文化や慣習を消し去ろうとしてきたが、私たちは今もこの地に留まっていて、どこへも行っていない”と訴えた。
アルバニージー首相は1月26日、現政権としてオーストラリア・デイの期日変更を提案する考えはないと表明したが、「ガーディアン紙重要世論調査」によると、期日変更を支持する豪州人は、2019年に15%だったが、2022年には20%、そして今年は26%と漸増してきている。
そこで、活動家らは、期日変更の必要性が益々高まってきていると主張している。
しかし、オーストラリア・デイを尊重するグループ、例えば保守党のピーター・ダットン自由党党首(52歳、2022年就任)は、先住民と英国人の文化・歴史が融合した特異性を有する豪州を祝うオーストラリア・デイは必要不可欠であり、“我々の国民性を誇りに思うべきで、ひとつの歴史を壊して別の歴史を作りあげる必要はない”と強調している。
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