中国は、日本海の排他的経済水域(EEZ)上空に初めて戦闘機を飛行させたり、米大統領の「国家安全保障戦略」内において、力によって現状変更を試みる“修正主義勢力”と見做されたりと、軍事上何かと国際社会を騒がしている。そしてこの程、南シナ海覇権を強化する一環で、29隻目となる新型誘導ミサイル搭載フリゲート艦を新たに進水させた。更に、同海域における他勢力の動きを具に監視するため、追加10基の偵察衛星を打ち上げる計画が明らかになった。
12月10日付米
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「中国最新鋭の054A型誘導ミサイル搭載ステルス性フリゲート艦が進水」
英軍事専門誌
『IHS Jane’s』レポートによると、中国人民解放軍(PLA)海軍は12月16日、4千トン級の江凱(チャンカイ)II型(054A型)誘導ミサイル搭載フリゲート艦を進水させたという。
PLA海軍は、目下25隻の054A型フリゲート艦を保有しているため、本船を含めて追加4隻が建造・進水することになる。
054A型フリゲート艦は、2005年に第1船目が就役して以来、従来型より遠洋性に優れ、また、PLA海軍初の艦隊防空能力を備えている。
そこで中国は、同艦を南シナ海に就航する艦隊に随行させたり、その他海外へも派遣している。
なお、PLA海軍の計画では、対潜能力が増強され、更に電気推進装置搭載の5千トン級の江凱Ⅲ型(054B型)を2018年に投入する予定である。
一方、12月19日付英『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国、南シナ海を四六時中監視可能な偵察衛星をあと10基打ち上げ計画」
中国国営『新華社通信』報道によると、中国は今後3年間で、南シナ海全域を四六時中監視可能となる偵察衛星をあと10基打ち上げる計画であるという。
香港の『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙は、シンガポールの南洋理工大学の海洋安全保障専門家コリン・コウ氏のコメントを紹介している。すなわち、コウ氏は、これまでの中国の偵察衛星は天候の影響や技術的問題で、監視が行き届かない時間・海域が生じていたが、最新鋭の偵察衛星によって、南シナ海全域の全ての船舶等を捉えることが可能となると述べている。
なお、中国としては、米国が北朝鮮問題に忙殺されて南シナ海が疎かになっている隙に、また、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領が同海域で不穏な動きをしようとしている背景もあって、同海域監視を強化していく考えとみられる。
12月20日付中国『チャイナ・デイリィ』:「海南省、10基の衛星打ち上げ計画」
中国最大のミサイル製造メーカーの中国航天科工集団(CASIC、中国宇宙開発の主要国営企業)は、海南省(ハイナン、海南島及び南シナ海の南沙・西沙・中沙諸島を管轄)の衛星打ち上げ計画実行に応えるため、合計10基の衛星を運ぶロケットを打ち上げると発表した。
同計画では、2019年に3基、2020年に5基、2021年に2基の衛星を打ち上げる予定である。
同計画の主席技術者の陽(ヤン)氏は、10基の衛星が打ち上げられれば、南シナ海全域をリアルタイムで監視可能となるため、同海域の主権擁護の強化や開発促進等に貢献できると表明した。
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6月2日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用)の報道「南シナ海問題対策で米国防衛費が急増」:
「・軍事関連情報誌発行元のHIS Jane’s(注1後記)は6月2日付情報誌で、南シナ海問題に対応するため、アジア太平洋地域での米軍の防衛費が2020年までに23%上昇しようとレポート。
・西欧と北米からアジアへのシフト(リバランス政策)によるものだが、昨年4,350億ドル(約47兆8,500億円)だった防衛費が、2020年には5,330億ドル(約58兆6,300億円)に膨張すると予測。...
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6月2日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用)の報道「南シナ海問題対策で米国防衛費が急増」:
「・軍事関連情報誌発行元のHIS Jane’s(注1後記)は6月2日付情報誌で、南シナ海問題に対応するため、アジア太平洋地域での米軍の防衛費が2020年までに23%上昇しようとレポート。
・西欧と北米からアジアへのシフト(リバランス政策)によるものだが、昨年4,350億ドル(約47兆8,500億円)だった防衛費が、2020年には5,330億ドル(約58兆6,300億円)に膨張すると予測。
・一方、同誌によれば、中国の防衛費も、中国政府発表の昨年の1,460億ドル(約16兆600億円)から、2020年までには2,330億ドル(約25兆6,300億円)まで約5%上昇すると分析。」
同日付
『ロイター通信米国版』の報道記事「中国、南シナ海問題に関して米国に公平さを要求」:
「・中国の鄭澤光(チェン・ゼカン)外交部副部長は6月2日、米国はかねて発言どおり、南シナ海問題に関して、どちらか一方に加担することなく公平に振る舞うべきだと発言。
・同副部長は、来週北京で開催される米中戦略・経済対話を迎えるに当り、米国が南シナ海における中国の主権を脅かさないよう、改めて要求。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュースの報道記事「中国、南シナ海問題で米国に対して強硬対応」:
「・中国の鄭外交部副部長は、米高官も出席する公開フォーラムの席上、米国は南シナ海に何ら関係しておらず、また、これまで領有権問題でどちらか一方に加担することはないと述べてきた以上、これ以上南シナ海問題に口を挟んでこないよう求めると強硬発言。
・これに呼応するように、崔天凱(ツイ・ティエンカイ)駐米中国大使も同様に懸念を表明。」
同日付香港
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙の報道記事「駐米中国大使、南シナ海問題を米中関係の主要課題にすべきではないと警告」:
「・中国の崔駐米大使は6月2日、来週北京で開催の米中戦略・経済対話において、南シナ海問題を議題の中心とすべきではないと主張。
・崔大使は、米国が同対話において、国連海洋法条約(UNCLOS)を持ち出して、中国側を責めることを考えているとの情報に基づき、米中間で討議すべき更に重要課題があるとコメント。
・なお同大使は、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の審理について、南シナ海の領有権はUNCLOSの対象外の問題なので、同裁判所に裁く権限はないとも主張。」
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』の社説「米国は、南シナ海の軍事化を止めよ」:
「・6月2日から始まったシャングリラ・ダイアローグ(SLD、注2後記)において南シナ海問題が討議予定。
・南シナ海の海洋活動は中国の主権の範囲で実施していることだが、米軍は、航行の自由作戦と称して、何度も軍艦や戦闘機を中国の諸島に派遣し、悪戯に緊張を高めており問題。
・米国は、UNCLOSに基づく公海に軍艦等を派遣しているものと主張するが、そもそも南シナ海で中国が海洋活動を進めているのは、中国が定めた“九段線”内のことであるので、UNCLOS対象外のこと。
・南シナ海から何千キロも離れた米国が、中国の排他的経済水域(EEZ)、また、その延長でロシアのEEZを侵犯し、偶発的衝突を引き起こすような事態とならないよう、米国は南シナ海での挑発行為を止めるべき。」
一方、同日付ロシア
『イタルタス通信』の報道記事「中国、フィリピンが南シナ海領有権
問題を対話で解決したいとの意思を歓迎」:
「・中国の王毅(ワン・イー)外交部長は6月2日、フィリピンの新大統領となるロドリゴ・ドゥテルテ氏が、中国との南シナ海領有権問題について対話で解決したいと意思表示したことを歓迎すると表明。
・同部長は、衝突を繰り返すだけでは何の解決にもならず、相互の問題を対話によって解決しようとするのは中国がかねて主張していることともコメント。」
(注1)IHS Jane’s:軍事と軍需産業情報に関する週刊誌
『Jane’s Defense Weekly』の発行元。創立は1898年。
(注2)SLD:2002年設立のアジア安全保障会議の通称。日米中ロ等アジア太平洋地域の28ヵ国の国防相等が年に一度、シンガポールのシャングリラ・ホテルで一堂に会し、同地域の安全保障について討議。
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