米・ベトナム・中国メディア;南シナ海での中国のしたたかな戦略(2016/03/31)
3月29日付
Globali「南シナ海でも中国に対抗するインドの存在」の中で、“中国と南シナ海で領有権争いをしているベトナムは、ベトナム戦争時代の敵国である米国には支援は求められないとして、インドに後ろ盾になるようアプローチを続けていた模様で、この程、そのベトナムにインドが全額出資の人工衛星センターを建設することになった”と報じた。そして、時を同じくして今度は中国が、ベトナムとの間で、両国間の領有権問題は対話で解決することとし、軍事的緊張を和らげる旨両国国防相間で合意した。今週、ワシントンで開催される核保安サミットで米中首脳が顔を合わせる前に、南シナ海問題に関して、米中それぞれがお互いに牽制する動きを見せている。
3月30日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「米国、中国の南シナ海における防空識別圏設定を認めないと表明」:
「・米国防総省のロバート・ワーク副報道官は3月30日、中国側に対して、同国が南シナ海に設定しようとしている防空識別圏(ADIZ)を認めないとし、更に、そのような動きは同海域を不安定にさせると釘を刺したと表明。
・ワーク氏は、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の審理結果が数週間内に判明しようが、これに対抗して中国が、2013年に東シナ海で一方的にADIZを設定したと同様、南シナ海でもADIZを設定する恐れがあることから、前以て注意喚起と説明。...
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3月30日付米
『ロイター通信米国版』の報道記事「米国、中国の南シナ海における防空識別圏設定を認めないと表明」:
「・米国防総省のロバート・ワーク副報道官は3月30日、中国側に対して、同国が南シナ海に設定しようとしている防空識別圏(ADIZ)を認めないとし、更に、そのような動きは同海域を不安定にさせると釘を刺したと表明。
・ワーク氏は、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所の審理結果が数週間内に判明しようが、これに対抗して中国が、2013年に東シナ海で一方的にADIZを設定したと同様、南シナ海でもADIZを設定する恐れがあることから、前以て注意喚起と説明。
・領有権問題に関し、米国はあくまで武力等でなく、国際仲裁による解決を望むとも付言。
・なお、今週ワシントンで行われる核保安サミットに習国家主席が参加することから、前以て牽制したものと推測。」
同日付米
『AP通信』の報道記事「南シナ海での緊張が高まる中、オバマ大統領が中国習主
席と会談」:
「・3月31日から始まる核保安サミットを前に、オバマ大統領は習主席と個別会談を予定。
・北朝鮮問題等重要議題はあるが、やはり南シナ海における中国の海洋活動牽制が主題となると予想。
・習主席は昨年9月に訪米した際、中国は南シナ海の諸島を軍事拠点化する考えはないと発言したが、実態は逆で、ここ数週間だけでも、彼らが埋め立てた人工島に多くの軍事施設を建設し、兵力を配備。」
3月29日付ベトナム
『ベトナム・プラス』オンラインニュースの報道記事「ベトナム及び
中国の両国防相、国境付近の共同パトロールを視察」:
「・ベトナムのフン・クアン・タイン国防相と中国の常万全(チャン・ワンクァン)国防部長(国防相に相当)は3月29日、ベトナムのラン・ソン県と中国の広西チワン族自治区の国境における共同パトロールを視察。
・中国国防部長のベトナム訪問は、3年目の国境警備友好式典出席のため。
・ベトナム国防省側は3月30日、中国側主催の行事出席のため訪中予定。」
3月31日付中国
『東方日報(上海)』の報道記事「海洋問題は対話による解決が重要」:
「・中国とベトナム双方の国防相は3月30日、南シナ海における領有権争いについて、対話による解決を目指すことで合意。
・中国の常国防部長とタイン国防相が、広西チワン族自治区の萍郷(ピンシャン)で開かれた記者会見の場で公表。
・これに先立つ3月27日、常国防部長はハノイを訪問して、グエン・フー・チョン共産党書記長及びタイン国防相と面談。
・両国は1,450キロメーターに亘り国境を接しているが、2012年に両国間で国境の共同パトロールにつき合意。」
一方、3月26日付米
『エポック・タイムズ』オンラインニュースの報道記事「中国、西沙
諸島に対艦ミサイル配備か」:
「・IHS Jane’s(注後記)のリチャード・フィッシャー上級研究員は、3月20日に中国の短文投稿サイト“微博(ウェイボ)”に掲載された写真を分析したところ、中国製の対艦ミサイル“YJ-62”が西沙(パラセル)諸島のウッディ島に配備されていると発表。
・同島は台湾とベトナムも領有権を主張。」
なお、南沙(スプラトリー)諸島において中国が埋め立てた、7つの人工島における中国の軍備配備状況は以下のとおりである。
・ミスチーフ岩礁、ファイアリークロス岩礁、スービ岩礁:滑走路
・ヒューズ岩礁、ジョンソン南岩礁、クアテロン岩礁、ガベン岩礁:レーダー施設
(注)IHS Jane’s:1898年設立。軍事と軍需産業情報に関する週刊誌(ジェーンズ・ディ
フェンス・ウィークリィ)を発行。
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米・英・ロシア・中国メディア;中国、武器輸出でも大幅躍進(2016/02/26)
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は2月1日、人民解放軍の幹部たちを前にして、人民解放軍を、これまで長く分かれていた7つの軍区から、新たに設けた5つの軍区に再編すると発表し、今後習主席が直接統括する体制を整えている。その際習主席は、21世紀の戦争は、陸・海・空・天(宇宙間部隊)・電(サイバー攻撃部隊)の5軍によって決まるとも発言したという。すなわち、従来型の陸・海・空3軍の戦いでは、到底米国に歯が立たないので、宇宙空間とサイバー攻撃で、世界の覇権を狙おうとしているとみられる。そして、更に米国に対抗する政策として、武器輸出にも注力し、米国に追い付こうとしていると各国メディアが伝えている。
2月22日付米
『CNNニュース』の、「中国の武器輸出が急増」と題した報道:
「・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2月22日に発表したレポートによると、中国の2011~2015年間の武器輸出額は、2006~2010年間より88%も急増。
・同期間の米国、ロシア、英国も伸ばしているが、中国程増加したところはなく、一方、ドイツ、オランダ、フランスは中国急増の煽りを受けて激減。...
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2月22日付米
『CNNニュース』の、「中国の武器輸出が急増」と題した報道:
「・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が2月22日に発表したレポートによると、中国の2011~2015年間の武器輸出額は、2006~2010年間より88%も急増。
・同期間の米国、ロシア、英国も伸ばしているが、中国程増加したところはなく、一方、ドイツ、オランダ、フランスは中国急増の煽りを受けて激減。
・中国の主要輸出先はアジア太平洋地域で、パキスタン、バングラデシュ、ミャンマー向けが大。
・21世紀初め、中国は最大の武器輸入国であったが、直近では、サウジアラビア、インドに抜かれ、武器輸入量は減少中。
・一方、IHS Jane’s誌(ジェーン・ディフェンス・ウィークリィ、英国の軍事と軍需産業情報に関する週刊誌)の2月21日号によると、アジア太平洋地域での緊張状態の高まりの影響で、同地域諸国の防衛費用は、2010年の20%から2020年代初めには33%まで上昇と予想。
・中国の他、フィリピン、インドネシア、日本、ベトナムの国防費も増加。」
2月21日付英
『メール・オンライン(デイリィ・メール電子版)』(
『ロイター通信』記事引用)の、「中国の武器輸出、直近5年で急増」と題した報道記事:
「・中国は、南シナ海やインド洋での覇権を狙ってか、国内の軍需産業発展に数十億ドル(数千億円)投資して活発化させており、2015年の国防費予算は前年比+10%の8,869億人民元(1,414.5億ドル、約16兆円)に増額。
・中国の直近5年間の武器輸出増額は+88%で、米国の+27%、ロシアの+28%を遥かに上回るものの、依然両大国には遠く及ばず、シェアは僅か5.9%。
・ただ、SIPRIの主任研究員によれば、中国製の武器は10年前に比べて格段に技術革新されており、今後武器市場での引き合いが高まると予想。」
2月23日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの、「中国、武器輸出額をほぼ倍増」と題した報道記事:
「・SIPRIレポートによると、中国の武器輸入額は直近5年で▼25%減少しているが、輸出額は+88%、特に2015年では+143%の伸び。
・中国の国防費予算も前年比+10%増となっており、特に南シナ海における米国との緊張の高まりによると推測。
・一方、世界最大の武器輸入国はサウジアラビアであって、イエメンでの空爆開始等、中東地域での緊張の高まりもあり、同国は今後も大量の武器を輸入していくと予測。」
同日付中国
『人民日報』の、「中国のFC-20戦闘機、西側と余り武器取引がない諸国への輸出期待」と題した報道記事:
「・軍事専門家は、中国製の成都(チョントー)FC-20戦闘機は、西側と余り武器取引がない国々への輸出が期待されるとコメント。
・これまでFC-20戦闘機は、例えば北大西洋条約機構(NATO)加盟国には情報管理制限のみならず、米国製のF-16戦闘機の市場ということもあって販売できず、また、裕福な国家ほど、FC-20より割高でも総合的に優れた戦闘機を購入する傾向。
・しかし、中国国営航空工業集団公司(AVIC)幹部は、今後は西側と余り武器取引がない、アジア、アフリカ、中東、南米諸国にFC-20を積極的に売り込んでいるとコメント。
・米国が武器輸出する場合、同盟関係や政治的戦略等が優先されるが、中国の場合は、輸出先と技術、メインテナンス等で対等の関係を構築する方針であるため、それを歓迎する国が多いとする。
・ただ、依然戦闘機市場では、米国製F-16とロシア製MiG-29が圧倒的シェアを保有。」
(注)SIPRI:1966年5月、スウェーデン議会によって設立された国際平和研究機関。記述内容の客観性、正確性から国際的にも評価が高い「軍備・軍縮年鑑」の刊行で知られる。
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