仏メディアは、日本の安倍首相が病気による辞任を正式に発表した後、わずか1週間で新しい日本のリーダーがほぼ決定したこと、また新首相の前には課題が山積していることを報道している。
仏金融紙
『レゼコー』は、日本は、安倍首相が8月28日に辞任を表明してから1週間も経たないうちに、国民投票や議論もなしに新しい首相が選ばれたと報じている。公式には、9月17日に国会で選出される予定だが、裏では、すでに当選者が決まっているためだ。
安倍首相は2021年9月の任期満了を前に辞任することを決めたため、国会で過半数を占める党が自動的に執行部を担う新党首を選ぶことになるが、自民党執行部が体調不良である首相の交代が急務であることを指摘し、党員・党友が投票する正規の総裁選は行わず、限定的な選考方法を選択した。
したがって、次の党首を選ぶのは、国会議員394人と、47都道府県から各3人ずつの自民党代表者(合計141人)だけとなる。当選するためには、この535人の有権者の中から過半数の票を獲得しなければならない。
しかし、現政権のナンバー2である菅官房長官は、2日の夜に立候補を宣言する前から、日本の右派を構成するほとんどの「派閥」の支持を得ており、すでに250票以上の票を確保している。
『レゼコー』は、安倍内閣で要職に就いており、思想的な立場が非常に似ている各派閥のリーダーたちは、自分たちの影響力を失わないように、ほぼ全員が、安倍路線を継承してくれる菅官房長官を支持することを選択していると指摘。また、党員投票または、国民投票が行われたとすれば、菅氏ではなく石破氏が当選していたと全ての世論調査が示していると報じている。
『ヤフー フランス』や『ウエスト・フランス』は、新首相が直面する課題について報じている。
まずは新型肺炎対策。日本での流行規模は欧米諸国に比べて小さいものの、安倍政権の対応は、緩慢でまとまりがないという厳しい批判にさらされている。また新型肺炎の世界的流行により、景気後退が一段と強まり、オリンピックは2021年まで延期された。専門家らは、世界一の高齢化社会である日本が、医療制度の崩壊を防ぐためには対策を講じる必要があると警告している。
衰退する経済も課題となっている。日本の脆弱な経済は新型肺炎の影響を受け、4月から6月にかけて前年同期比7.8%減、前年同期比27.8%減と戦後最悪の落ち込みを記録した。専門家らは、長期的には、日本は貧弱な生産性を向上させるために主要な構造改革を実施する必要がある、という見方で一致している。
また、2020年東京オリンピックの延期の問題も引き継ぐことになる。集団感染の防止方法から、急増する費用を誰が払うのかという問題まで、多くの困難が伴う。さらに、日本の国境は依然として外国人観光客にはほぼ閉鎖されており、国内のスポーツイベントでも観客数は限定されているため、オリンピックの実現可能性について疑問視されている。
外交問題も非常に厳しいかじ取りが待っている。中国の主張が強まり、韓国との関係が悪化し、北朝鮮が予測不能な状態が続く中で、米国との同盟関係はますます重要になっていると見られている。しかし日本は、主要な貿易相手国である米国と中国との間の緊張関係にも巻き込まれてしまっている。
そして最後に少子高齢化が急速に進んでいる人口問題を引き継ぐことになる。
労働力不足は経済を阻害し続けており、移民規制を緩和してより多くの女性を労働市場に投入しようとする努力も成功には至らなかった。安倍首相が「女性が輝く」社会をつくると公約していたにもかかわらず、財界や政治の上層部は頑なに男性社会のままとなっている。世界経済フォーラムの最新の男女平等ランキングでは、日本は153位中121位にとどまっている。
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米メディアは当初、クルーズ船“ダイアモンド・プリンセス号”における新型コロナウィルス(COVID-19)対策や検疫数の絶対的不足等で、日本の対応策を疑問視してきた。しかし、現状を見ると、感染者数・死者数ともに主要7ヵ国で最も低く、また、最悪の結果となっている米国と比べると、格段の差となっている。そこで、米国内でも徐々に都市封鎖解除が始まる段階で、日本に見習うべきことがあるとして、当初の評価を変更している。
5月30日付
『ヤフー・ニュース』:「米国の都市封鎖解除に当たり、日本のCOVID-19対策が参考に」
米国において、これから徐々に都市封鎖解除が進められていく際、COVID-19再感染問題が発生しないよう、安全で賢く、しかも長続きする対策が求められている。
そこで、結果的にCOVID-19対策が奏功しているとみられる日本のやり方が参考になるかも知れない。
日本は当初、対策がどうしようもなく遅く、また、検疫数も絶対的に少なく、それは現段階においても人口比僅か0.2%と、主要国の中で最低値となっている。
更に、クルーズ船でのCOVID-19対策や、二転三転する政策発表等、混沌の極みであり、その結果として、安倍晋三首相の支持率は急落している。
しかし、5月29日現在の結果をみてみると、日米間には大きな差が生じている。
すなわち、米国の感染者は200万人に近づきつつあり、死者は10万人を超えている(編注;実数は、それぞれ172万1,750人、10万1,617人)。
一方、日本は、総人口1億2,600万人のうち、65歳以上が4分の1以上占めているにも拘らず、それぞれ1万6,673人、886人と圧倒的に少ない。
世界保健機関(WHO)報告では、4月12日に一日の感染者743人の最多記録を出して以来、直近1週間では14~90人と激減している。また、1ヵ月前にはCOVID-19入院患者が1万人いたのに、現在は僅か2千人まで減少している。
これらの結果を踏まえて、効果的だったと考えられる点として、国民皆保険制度、ウィルス耐性の差、遺伝的特徴、高齢者保護や介護施設の拡充等が挙げられる。
ただ、これらのほとんどは米国に適用されておらず、また、今後の対策としてはすぐには採用できない。
そこで、米国が参考にすべきは以下と考えられる。
(1) 国民の自発的な心構え
・日本において、都市封鎖措置等、強制的な方法は取られず(行政はその法的権利も有せず)、ただ国民に、外出自粛、テレワーク採用、バーやレストランに閉店要請等々、協力を訴え続けた。
・『ワシントン・ポスト』紙報道によれば、レストランでは対面ではなく横並び着席、おしゃべりは控えめにしてBGMを聴く等々、非常に細かいところまで要請されたという。
・一方、米国では、ある日ドナルド・トランプ大統領が都市封鎖を打ち出したかと思えば、次には経済活動再開を各州知事に訴え始める等、首尾一貫していないこともあってか、米市民自身も、マスク着用、ソーシャルディスタンスを保つ等々、役人が言うことに耳を傾けない傾向が強い。
・従って、都市封鎖解除後の感染第2波を防ぐためにも、自発的な心構えに訴えかけることが肝要。
(2) 専門家の具体的提言
・感染対策の具体例として、専門家が“3密を避けること”と強調。すなわち、密接、密閉、密集を極力避けることにより、感染リスクが低減可能とアピール。
・多くの国が検疫、感染ルート解明、隔離政策に努めたのに対して、日本は集団感染(クラスター)発生回避に注力。具体的には、スポーツジム、ライブハウス、カラオケバー等、クラスター発生源となったり、あるいは、なりそうな場所に対して、徹底的な対策を講じた。
・一方、ハーバード大精密医療専門のジュリア・マーカス教授は、“米疾病予防管理センター(CDC)は一切実用的な助言をしていない”とし、“マスク着用、外出自粛、手洗い、ソーシャルディスタンスを保つこと、に留まらず、例えば「3密を避ける」等、更に突っ込んだ具体的助言が必要であった”と強調。
(3) マスク着用の習慣化
・日本ではずっと以前から、マスク着用文化が根付いている。例えば、冬季のインフルエンザ対策、また、早春からの花粉症対策。
・そのためもあってか、悪名高い満員電車でも、マスク着用者が多数で、かつおしゃべりもしないため、そこでのクラスター発生は認められていない。
・一方、CDCも漸く、ソーシャルディスタンスが保てない場所-スーパーマーケット、薬局、ガソリンスタンド等-でのマスク着用を提言しているが、残念ながら、米国では、もはやマスク着用が“政治問題化”して“二極分化”してしまっている。
・すなわち、民主党支持者の87%は、都市封鎖解除後でも人混みの中ではマスク着用するとしているのに対して、共和党支持者は42%しか賛同せず、かつ、34%もの人がCDCの提言は厳しすぎると回答している。
・更に、トランプ大統領が、マスク姿のジョー・バイデン民主党候補を嘲笑ったことも影響したのか、同大統領支持者の多い街では、マスク着用者の来店拒否や、ハグ・握手を奨励する店も現れる程。
一方、同日付『CNNニュース』:「日本のテーマパーク、COVID-19対策の新ガイドラインとしてジェットコースター等で叫ばないよう提言」
東・西日本テーマパーク協会はこの程、COVID-19対策上の新ガイドラインとして、非常にユニークな提言を打ち出した。
それは、テーマパーク内のジェットコースター等に搭乗した際、叫ばないよう心掛けること、というものである。
本来のジェットコースター等搭乗の醍醐味と正反対の要請だが、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ユニバーサル・スタジオジャパン等、日本国内の30以上のテーマパークに適用される。
協会は更に、全従業員に対して、“COVID-19後の新しい形のサービススタイルとして、マスク着用しながらでも目元の笑み、ジェスチャー等でゲストを歓待するよう心掛けること”、また、“手洗い・うがい、ソーシャルディスタンスを保つことはもとより、マスク着用不可のキャスト等は、ゲストと少なくとも1メートルの距離を保つこと”等を求めている。
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