ロシア反プーチン派;野党勢力代表ナワルニー氏危篤でも与党・統一ロシア打倒のため草の根運動継続【米・ロシアメディア】(2020/09/05)
既報どおり、ロシア野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏は何者かに毒を盛られたが、緊急搬送されたドイツの病院で一命は取り留めた。ただ、依然昏睡状態は続いているが、同氏を中心とした反プーチン派グループは、卑劣な圧力には屈しないとばかり、9月中旬に行われる地方選挙で与党・統一ロシア打倒を目指して、草の根運動を粘り強く進めている。一方、同氏を診たロシア人医師は、ダイエットのやり過ぎとストレスによる容体急変であり、また、同氏の体内から毒物は検出されなかったと訴えている。
9月4日付米
『AP通信』:「反体制派主導者ナワルニー氏の勢いを止めようとした試みは今のところ失敗」
ウラジーミル・プーチン大統領(67歳)の長年の政敵である、野党勢力代表アレクセイ・ナワルニー氏(44歳)はこれまで何年もの間、政治活動を妨害されてきた。
度々逮捕・拘束されただけでなく、横領と詐欺の容疑を掛けられて2度も刑事裁判にかけられている。
また、自宅軟禁や、暴漢によって顔に化学物質を浴びせられ、視力障害も負ってしまっている。...
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9月4日付米
『AP通信』:「反体制派主導者ナワルニー氏の勢いを止めようとした試みは今のところ失敗」
ウラジーミル・プーチン大統領(67歳)の長年の政敵である、野党勢力代表アレクセイ・ナワルニー氏(44歳)はこれまで何年もの間、政治活動を妨害されてきた。
度々逮捕・拘束されただけでなく、横領と詐欺の容疑を掛けられて2度も刑事裁判にかけられている。
また、自宅軟禁や、暴漢によって顔に化学物質を浴びせられ、視力障害も負ってしまっている。
更に、昨年には拘置所内で毒を盛られた疑いで、一時的に入院もさせられた。
そして今度は、西シベリア地方都市での政治活動中の8月20日、再び毒を盛られ、安全確保のためとして、ベルリン(ドイツ)の病院に緊急搬送されたが、依然昏睡状態にある。
しかし、数々の妨害行為に遭っても、彼が推進する反プーチン運動は、支援者や共感者によって地道に進められてきている。
同氏の最も近い盟友であるリューボフ・ソボル氏は、“ナワルニー氏の被毒事件に非常にショックを受け、一時活動が停止したが、今は以前に増して怒りとともに反政権運動に注力している”と語った。
また、同氏の活動戦略担当トップのレオニード・ボルコフ氏は、“確かに、危篤状態に陥ったナワルニー氏をドイツの病院に緊急搬送する等が優先されたが、今や彼は同病院で容体が安定していることもあり、我々は当初の方針通り、スマート・ボウティング(SV)戦略を何とかやりぬいていく”と強調した。
SV活動とは、ナワルニー氏が発案したもので、与党・統一ロシアの一党独裁を打ち破るため、選挙に当たって、統一ロシアの支援を受けた候補を落とす、あるいは、対抗馬としての候補を推薦して、勝利に結びつけようとする地道な運動である。
実際に、2018年のモスクワ市議会議員選挙ではSV活動が奏功し、野党勢力が全45議席中20議席を獲得している。
そして今年は、9月13日に投票日を迎える、ロシア国内31地方・市議会議員選挙においても、SV活動によって統一ロシアの候補を打ち破る作戦を展開している。
もうひとつの武器は、ナワルニー氏が2017年に立ち上げた2つのユーチューブ・チャンネルで、この中で、地方の役人や政治家の不正・汚職疑惑を市民に広く知れ渡るようアピールしている。
最近も、8月31日にリリースした40分のビデオの中で、ノボシビルスク(シベリア最大都市)の汚職疑惑を暴いた。
このユーチューブは400万人が視聴しており、同市の市議会議員選挙に立候補している野党勢力の30人以上の候補者の追い風になろう。
ボルコフ氏によれば、まず地方・市議会議員選挙で統一ロシア勢力を駆逐することが肝要で、これが達成できれば、2021年の国家院(下院に相当)議員選挙においても、SV活動によって統一ロシア勢力を打ち負かすことも可能になるという。
そうすれば、統一ロシア独裁政権の下で今年憲法が改正され、長期政権が可能になったプーチン大統領が任期を迎える2024年に、野党勢力が大勢を占める国家院において、同大統領の続投を阻止することができるとしている。
なお、9月3日にリリースされた、トムスク(ナワルニー氏が被毒犯罪に遭った西シベリア地方都市)の汚職疑惑を報じた40分のユーチューブ放送も、僅か5時間で85万人の市民が視聴しており、野党勢力の地道な活動は奏功しているとみられる。
トムスク市議会議員選挙に立候補しているクセニア・ファデエバ氏も、ナワルニー氏の同市訪問を歓迎した際、“ナワルニー氏が市中を歩くと、信じられない程多くの市民が声を掛け、一緒に写真を撮るよう迫り、また、話を聞きたいと寄ってきた”とし、同氏のカリスマ性と人気の高さに驚いたという。
かかる経緯もあって、ボルコフ氏は、“プーチン政権は、我々の活動に脅威を持ち始めており、それを妨害するため、ナワルニー氏の被毒事件を画策した疑いが濃厚”だと強調している。
一方、同日付ロシア『モスクワ・タイムズ』紙:「ロシア人医師、ナワルニー氏はダイエットのやり過ぎとストレスで容体悪化とアピール」
オムスク(ナワルニー氏搭乗機が緊急着陸した西シベリアの地方都市)の地元紙は9月4日、地元病院の毒物学者による、ナワルニー氏の容体急変は、ダイエットのやり過ぎとストレスが原因だとする見解を報道した。
オムスクの毒物学権威のアレクサンドル・サバエフ医師がメディアに語ったもので、同医師は、“患者は体重を減らすためダイエット食品を摂取していた”とし、“容体急変前に胃腸に問題が生じている”と述べた。
また、同医師は、“ダイエット食品に加えて、特定はできないが、何か過剰反応をするものを摂取したはずだ”とも付言した。
更に同医師は、“患者の体内から毒物は検出されなかった”とも強調している。
なお、プーチン政権支持者からは、ナワルニー氏の身体から毒物が検出されたとしたら、それはドイツで誰かに盛られたか、あるいは自身で服毒したものだ、との耳を疑う意見が出ている。
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ロシア;ウィルス禍による感染者数ごまかしの次は死者数過少申告?【米・ロシアメディア】(2020/05/21)
ロシアは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染の初期段階で、国境を接する中国はもとより、往来が頻繁な欧州諸国に比して、異常なほどCOVID-19感染者数が低かった。当局は認めていないが、初期段階での検疫の不正確さや実検疫数が極端に低かったことが原因と言われ、目下は、欧州並みどころか、遥かに凌駕する感染者数となっている。そして今度疑われているのが死者数で、致死率(全感染者数に対する死者数の割合)が世界平均6.6%に比して、ロシアの場合は0.96%と、これも英国・イタリア(14%)、スペイン(12%)、更には、最良の医療体制が敷かれていたこと等が理由で低数値となっているドイツ(4.6%)よりも遥かに低く、かなりの過少申告となっていることは疑いの余地がない。因みに、日本(4.7%)、中国(5.5%)、韓国(2.4%)となっている。
5月20日付米
『CNBCニュース』:「ロシア政府は“ごまかしはない”とするも、感染者数30万人超に対して公表死者数が異常に少ないという事実」
ロシアにおけるCOVID-19感染者数は、5月20日現在30万8,705人(前日比+8,764人)と、米国に次ぐ世界2位の地位を不動のものにしつつある。
一方、死者数は2,972人(同+135人)と異常に少ない(世界16位)。
専門家の間では、ロシア政府の公表数値は疑念だとする声があがっているが、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は5月19日、『CNBC』への文書回答で、“ごまかしも過少申告もしていない”と強調している。...
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5月20日付米
『CNBCニュース』:「ロシア政府は“ごまかしはない”とするも、感染者数30万人超に対して公表死者数が異常に少ないという事実」
ロシアにおけるCOVID-19感染者数は、5月20日現在30万8,705人(前日比+8,764人)と、米国に次ぐ世界2位の地位を不動のものにしつつある。
一方、死者数は2,972人(同+135人)と異常に少ない(世界16位)。
専門家の間では、ロシア政府の公表数値は疑念だとする声があがっているが、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は5月19日、『CNBC』への文書回答で、“ごまかしも過少申告もしていない”と強調している。
しかし、ロシア誌『リドゥル(難問、難題の意)』の政治評論家アントン・バルバシン論説員は『CNBC』のインタビューに答えて、“第一に、COVID-19感染者でも死因が心不全や慢性疾患の場合、COVID-19死者数に含めていないこと、第二には、地方自治政府(注1後記)が中央政府に対して、過少申告していることが考えられる”とコメントした。
また、英国のベリスク・メイプルクロフト(1975年設立のグローバル・リスク分析、リサーチ企業)の欧州・ロシア分析担当部門のダラーグ・マクダウェル主任は、“ロシアの公表数値は、感染流行度合に比して明らかに過少報告されている”とした上で、“モスクワのセルゲイ・ソビャーニン市長が、5月7日の時点で、モスクワだけで既に30万人に到達している”と付言していると明かした。
更に同主任は、死者数の異常値にも触れて、“例えば、モスクワ以外で感染が最も深刻なダゲスタン共和国(カスピ海西岸)では、感染者3,553人のうち死者は僅か35人と報告されているが、一方で、650人以上の死者が、COVID-19ではなく”市中肺炎(慢性ではなく、通常の社会生活の中で罹患した肺炎)によって死亡と報告されている”と厳しく指摘している。
マクダウェル主任の分析にはバルバシン論説員も同意していて、“ダゲスタン共和国の例で分かるように、実際の感染流行深刻度は公表値より遥かに高い”とコメントした。
また、同主任は、地方自治政府が中央政府の印象を良くしようと、故意に“良い数値(少ない数値)”を報告している例があるとも考えられると付言した。
ロシアの死者数公表値について、欧州他国と比較してみると、多くの国の致死率がおよそ10%前後であるのに、ロシアの場合は1%以下と極端に低い。
例えば、5月19日現在の英国の数値をみてみると、感染者数24万7千人超に対して死者数が3万4,876人(致死率14%)、同様に、イタリアはそれぞれ22万6千人超・3万2,169人(同14%)、スペインは同じく23万2千人超・2万7,778人(同12%)となっている。
また、ドイツは、初期対応の緻密さや医療体制が整っていたこともあって、感染者数17万7千人超に対して、死者数が8,060人と低いが、それでも致死率は4.6%である。
いずれにしても、ロシアの感染者は依然増え続けていて、収束の見通しが立っていないことから、ウラジーミル・プーチン大統領は、モスクワとサンクトペテルブルグにおける厳しい都市封鎖措置を5月一杯継続することを決めている。
なお、ロシアの独立系世論調査会社レバダ・センターの4月の調査によると、同大統領の支持率は59%と、3月時点の63%より更に下がっており、大統領在任二十年間で最低レベルとなっている。
同日付ロシア『モスクワ・タイムズ』紙:「ロシアにおけるCOVID-19現状」
●5月17日
・ダゲスタン共和国保健相が、同国で既に1万3千人以上がCOVID-19あるいは市中肺炎に罹患していて、うち657人が死亡したと発表。ただ、公式の統計数値は、COVID-19感染者3,371人、死者は29人と報告。
●5月18日
・プーチン大統領、ダゲスタン共和国高官が、COVID-19による死者が数百人となっている可能性があると報告してきたことを受けて、同共和国のCOVID-19対策に集中的に当たるよう檄。
・ロシアのガマレイ・リサーチセンター(疫学・微生物学専門)のアレクサンデル・ギンズバーグ理事長は、ロシアにおけるCOVID-19死者数が他国に比して少ないのは、人口比における集団免疫(注2後記)が高いからだと説明。
●5月19日
・ミハイル・ミシュスティン首相が、COVID-19陽性反応が出て自主隔離後、ほぼ3週間振りに復帰。
・モスクワのソビャーニン市長、同市の感染状況は“理想より遥かに悪い”と報告。そこで、5月末までに、1日の検疫数を20万件体制と倍にする計画を発表。
●5月20日
・ソビャーニン市長が、このままでは、同市における5月のCOVID-19死者数が、4月比“異常に”高い数値となると警告。
・ロシアにおける医療従事者のCOVID-19死者数が、他国に比して16倍も多いと『メディアゾナ・ニュース』が報道。
(注1) 地方自治政府:ロシア連邦構成主体は85(但し、西側諸国はクリミア半島併合を承認していないので、83)。内訳は、連邦市3、共和国22、州46、地方9、自治管区4、自治州1。
(注2) 集団免疫:ある感染症に対して集団の大部分が免疫を持っている際に生じる間接的な保護効果であり、免疫を持たない人を保護する手段。多数の人々が免疫を持っている集団では感染の連鎖が断ち切られる可能性が高く、病気の拡大は収まるか、緩やかなものとなる。あるコミュニティにおいて免疫を持っている人の割合が高ければ高いほど、免疫を持たない人が感染者と接触する可能性は低くなる。
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