ウクライナ戦争:ロシア軍の深刻な兵士不足
英
『ザ・エクスプレス』紙や仏ニュース専門局
『フランス24』などの英仏メディアは、ウクライナでの100日以上の戦闘を経て、ロシア軍は深刻な兵士不足に悩まされていると報じている。ロシアは6月10日時点で、2月24日からの107日間で約31900人の兵士を失った。これは1日あたり200人が死亡していることになる。
『フランス24』によると、NATOのストルテンベルグ事務総長は、この紛争は「消耗戦」になっていると指摘している。そしてロシア軍は、長引く戦争によって前線の人員の充足にますます苦心しているという。ロシア軍は、ウクライナ戦線への新兵勧誘のため、シベリアを含めた全国での積極的な採用キャンペーンをすすめているという。人気ロックバンドのコンサート会場近くに臨時の採用事務所が設置された例もあると、ドイツの日刊紙「Süddeutsche Zeitung」は報じている。...
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『フランス24』によると、NATOのストルテンベルグ事務総長は、この紛争は「消耗戦」になっていると指摘している。そしてロシア軍は、長引く戦争によって前線の人員の充足にますます苦心しているという。ロシア軍は、ウクライナ戦線への新兵勧誘のため、シベリアを含めた全国での積極的な採用キャンペーンをすすめているという。人気ロックバンドのコンサート会場近くに臨時の採用事務所が設置された例もあると、ドイツの日刊紙「Süddeutsche Zeitung」は報じている。また、ロシアのプーチン大統領は5月25日、これまで40歳未満のロシア人しか入隊できなかった軍隊に、18歳から65歳までのすべてのロシア人が入隊できるようにする法律を承認した。
仏週刊誌『レクスプレス』によると、5月21日にシベリアのノボシビルスクで開催されたハーフマラソンでは、ゴール近くに「移動式採用事務所」として機能するトラックが駐車していた。また、プーチン大統領は、元兵士の軍復帰を促すために、3ヶ月の短期契約や現地賃金の4倍もの給与を出すことも躊躇していないという。
キングス・カレッジ・ロンドンのロシア軍専門家ロッド・ソーントン氏は、唯一、徴兵対象の若者だけは、違法となるため前線には送ることができないと説明している。モスクワタイムズ紙は、12人の将校が6月7日に、600人以上の若い徴兵をウクライナでの戦闘に送り込んだとして起訴されたと報じている。
ロシアの軍事問題の専門家であり、米国の地政学的研究センターである「ニューラインズ・インスティテュート」の外部コンサルタントを務めるジェフ・ホーン氏は、ウクライナ紛争以前、米国に次いで世界第2位と評されたロシア軍だが、「書類上では多数の歩兵師団が登録されている一方で、実際にそれを構成する旅団のほとんどが、冷戦終結後、人員不足に陥っている」と説明している。この慢性的な兵士不足は、「2つの世界大戦で甚大な被害を受け、スターリンによる粛清を受け、ソ連時代の強制的な工業化」を反映した数世代における人口変動が原因だという。
バーミンガム大学で旧ソ連の安全保障問題を専門とするニコロ・ファソラ氏は、こうした人口変動のゆえに「ロシアは、一般の兵士よりも大砲や装甲に重きを置くようになった」と説明している。今回の戦争が100日間を超えた長期戦になっていることで、兵士不足が深刻化している。ホーン氏は、攻撃側が勝つためには、3対1の割合で戦力が有利でなければならないという武力紛争における黄金律とは程遠い状態にあり、「今のところ、2対1、場所によっては1対1のところ」もあると推測している。
しかし、これは必ずしもウクライナに有利に働くわけでもないという。ソーントン氏は、最も可能性の高いシナリオは、「ロシア軍が防御態勢に入り、維持することを決定すること」だと述べている。その場合、ドンバスは終わりの見えない一種の紛争地帯となる。「ウクライナ側は、西側諸国からより強力な武器を受け取らない限り、ロシア人を排除する攻撃手段を持っていない」という。
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ISIS:ウクライナ戦争を利用してテロ攻撃を再開するよう呼びかけ
テロ組織「イスラム国」(ISIS)は、米国をはじめとする西側諸国がロシアのウクライナ侵攻に気を取られている間に、世界各地で新たな攻撃を開始するよう支持者に呼びかけている。
仏紙
『ルフィガロ』と英紙
『タイムズ』によると、ISISの新しい報道官であるアブ・オマル・アル・ムハジルは、非イスラム諸国がウクライナ戦争に気を取られている現在、西側諸国におけるテロ攻撃の絶好の「機会」であるとメッセージングアプリ「テレグラム」で述べた。ラマダンの期間にあわせて公開された音声メッセージで、「われわれは神に依り、祝福を受けた復讐を実行していく」と述べた。
2月3日、アメリカのバイデン米大統領は、ISISが支配するシリア北西部での米軍特殊部隊による作戦中に自爆したISIS前指導者アブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クラチの死亡を発表した。...
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仏紙
『ルフィガロ』と英紙
『タイムズ』によると、ISISの新しい報道官であるアブ・オマル・アル・ムハジルは、非イスラム諸国がウクライナ戦争に気を取られている現在、西側諸国におけるテロ攻撃の絶好の「機会」であるとメッセージングアプリ「テレグラム」で述べた。ラマダンの期間にあわせて公開された音声メッセージで、「われわれは神に依り、祝福を受けた復讐を実行していく」と述べた。
2月3日、アメリカのバイデン米大統領は、ISISが支配するシリア北西部での米軍特殊部隊による作戦中に自爆したISIS前指導者アブ・イブラヒム・アル・ハシミ・アル・クラチの死亡を発表した。3月10日、ISISは彼の死を、グループの前報道官の死とともに確認した。
ISISは3月17日、広報誌の一つに掲載された記事で、ウクライナ戦争を「十字軍同士の戦争」として歓迎しており、それは「キリスト教の悪党」の国々への「罰」となるだろうと述べていた。ISISは、2014年にイラクと隣国シリアで急成長し、広大な領土を征服したものの、2017年と2019年に相次いだ攻撃により、「カリフ制」を敷いていた領土で打ち負かされた。しかし、昨年発表された国連の報告書によると、ISISは「イラクとシリアで密かに組織を維持し、両国の国境の両側で持続的な反乱活動を行っている」という。イラクとシリアでは、「合計1万人の活動中の戦闘員」を保持していると言われている。アフガニスタンとパキスタンでもテロ攻撃を実行しており、アフリカでも関連グループが活動している。
今回のテロの呼びかけが、ヨーロッパにとって直接的な脅威となりうるのかどうかについて、仏ニュース専門チャンネル『フランス24』の記者で、イスラム過激派の専門家であるワシム・ナスル氏は、「我々は常に脅威を真剣に受け止めなければならないが、それを文脈化しなければならない。攻撃を行うよう呼びかけるというより、非難しているように聞こえる。」と分析している。ナスル氏また、ヨーロッパで実行された最後のテロ攻撃は2020年11月のウィーンでの攻撃にさかのぼり、現在は当時のような犯行グループの派遣など、活発な動きとは程遠い状態にあると指摘している。
英紙『タイムズ』によると、国際的な安全保障及び地政学的リスクのコンサルタント会社であるGlobalStratの代表取締役オリビエ・ギッタ氏も、ISISはここ数年ヨーロッパで大規模な攻撃を行っておらず、最近の攻撃はISISが組織化し積極的に促進したというより、同グループに影響されたものに過ぎないと述べている。こうした攻撃には、昨年10月の英保守党議員デイビッド・エイメス卿の刺殺事件も含まれる。裁判では、犯行者がISISのプロパガンダによって洗脳されたことが強調され、先週、終身刑が宣告された。
ギッタ氏は、「ISISは、信頼性を取り戻し、再び注目を集めるために、ヨーロッパと米国で攻撃を行う必要があると信じている。問題は、2015年のパリや2016年のブリュッセルのように、ヨーロッパで壮大な攻撃を実行するだけの兵站能力を持っているかどうかである。」と指摘している。
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