国連報告書、シリア内戦で市民への組織的な虐待が続く(2020/09/17)
国連人権理事会の独立調査委員会は、9年に及ぶ内戦が続くシリアで、市民に対する拷問、性暴力、殺人などの人道に対する罪がいまだに犯され続けているとする報告書を公表した。
報告書は、アサド政権だけでなく、トルコが支援する反政府勢力も同様に行っていることを指摘しており、治安改善のためより努力するようトルコに求めている。
カタールの
『アルジャジーラ』によると、第21回目となる国連の独立調査委員会のシリアに関する報告書は、538人のインタビュー、資料、衛星画像、その他の証拠に基づいて作成された。
報告書は、反政府勢力の支配下にあるイドリブ地域で反政府勢力と政府およびその同盟軍との間で3月の停戦合意以降も停戦がほぼ維持されている2020年前半に行われた調査結果をまとめたものである。
調査委員会によると、内戦が始まった2011年以降、暗殺やレイプが増加傾向にあるという。...
全部読む
カタールの
『アルジャジーラ』によると、第21回目となる国連の独立調査委員会のシリアに関する報告書は、538人のインタビュー、資料、衛星画像、その他の証拠に基づいて作成された。
報告書は、反政府勢力の支配下にあるイドリブ地域で反政府勢力と政府およびその同盟軍との間で3月の停戦合意以降も停戦がほぼ維持されている2020年前半に行われた調査結果をまとめたものである。
調査委員会によると、内戦が始まった2011年以降、暗殺やレイプが増加傾向にあるという。
報告書では、アサド政権が「強制失踪、殺人、拷問、性的暴力、投獄などの人道に対する罪を犯し続けている」と信じるに足る合理的な根拠があげられている。また、誘拐、拷問、強姦などの戦争犯罪は、北東部でトルコ政府が敵対視しているクルド人武装勢力と対立している反体制派の自由シリア軍によっても犯されている可能性があると指摘されている。
同委員会は、昨年1年間に少なくとも49人のクルド人とヤジディ人の女性が、自由シリア軍によって拘束された案件について調査していると報告しており、「可能な限り、公的秩序と安全を確保し、女性と子どもを特別に保護する」というトルコの責任を強調している。
『ルモンド』や『フランス24』によると、調査委員会は、トルコ支配下にある都市アフリンの拘置所で、シリア国軍(SNA)のトルコ人民兵がクルド人囚人を集め、未成年のクルド人の少女がトルコ兵に順番に強姦される様子を見せられたという証言を報告している。
また、このシリア国軍は、国際人道法に違反して遺跡などの文化財を略奪し、破壊したとして告発されている。
調査委員会は、トルコがこれらの地域に居るすべての個人に対して適用される人権条約の義務に拘束されていると指摘し、「この点で、トルコ軍が民間人の財産の略奪・横領行為を認識していたこと、シリア国軍が管理する拘置所にトルコ軍がいたこと、被拘禁者に対する虐待が頻繁に行われていたこと、特に尋問中に拷問が行われていたことなどの申し立てを銘記する」と述べている。
そして「武装グループのメンバーがトルコ軍の実質的な指揮・統制の下で行動していることが判明した場合、トルコ側の指揮官たちはこれらの犯罪行為を認識していたはずであり、犯罪の実行を防止または抑圧するために必要かつ合理的な措置をすべて取らなかったとして彼らの刑事責任につながる可能性がある」と警告している。
閉じる
緊張高まる東地中海、ギリシャが対トルコ軍備増強(2020/09/14)
共にNATO加盟国であるギリシャとトルコ。しかし、8月中旬に両国が排他的経済水域を争っている東地中海で、トルコが海底資源探査活動を開始したことから、二国間の緊張関係がいっきに高まった。12日、ギリシャはフランスから戦闘機を購入するなど軍隊を強化することを発表した。
『レゼコー』によると、経済的に困難な状況の中でも、常にGDPに占める防衛費の割合が最も高い国の一つであるギリシャは、欧州復興計画の下で受け取る欧州援助金の大部分を武力強化に充てる方針を固めた。
ギリシャのミツォタキス首相は、ギリシャがフランスからの戦闘機に加えて、米国やドイツから4隻のフリゲート艦、4機の海軍ヘリコプターを購入し、対戦車兵器、魚雷およびミサイルの在庫を一新すると発表した。...
全部読む
『レゼコー』によると、経済的に困難な状況の中でも、常にGDPに占める防衛費の割合が最も高い国の一つであるギリシャは、欧州復興計画の下で受け取る欧州援助金の大部分を武力強化に充てる方針を固めた。
ギリシャのミツォタキス首相は、ギリシャがフランスからの戦闘機に加えて、米国やドイツから4隻のフリゲート艦、4機の海軍ヘリコプターを購入し、対戦車兵器、魚雷およびミサイルの在庫を一新すると発表した。また、国の景気回復の一環として技術移転と国産化を約束しながら、1万5000人の兵士の新たな採用も発表した。
同首相は、トルコが欧州の東側の国境を「脅かしており」、地域の安全保障を「危険にさらしている」と非難した。今回の軍備増強は、「国家の盾」を形成するためだと述べ「対話は必要だが、頭に銃を突きつけられている時には必要ない」と付け加えた。
ここ数週間、トルコは力の政治を展開している。キプロスの排他的経済水域に異議を唱え、リビアへの武器禁輸を回避し、今ではギリシャの排他的経済水域に軍艦を送っている。そうした中、8月中旬に、トルコが海底資源探査船をギリシャが主張する海域に送り込んだことで、緊張関係がいっきに高まった。
トルコとギリシャは共にNATO同盟国であるため、同じ加盟国のドイツが仲介を試みたものの、トルコは対話に応じなかった。こうした状況を受けて南欧7ヵ国の首脳は10日、トルコが対話に応じ、一方的な活動に終止符を打たなければ欧州連合(EU)による制裁の可能性を提起した。
その後トルコは、ギリシャのカステロリゾ島沖2キロの小島に配備されていた海底資源探査船が帰港したと発表し、両国間の和解への道が開かれた。
『フランス24』によると、西側のクレタ島とロードス島から東のアジア沿岸に広がるレバント海には、2010年の米国地質調査所の推計によれば、5兆7,650億立方メートルのガス田が埋蔵されているという。
トルコのエルドアン大統領は、国際法で定められている排他的経済水域(EEZ)は、「トルコをその海岸の内側に閉じ込めている」ため、クレタ島とキプロス島の間に潜む可能性のある鉱床へのアクセスをすべて奪っているとその公平性に異議を唱えている。
2019年11月、トルコは、地中海をはさんで対面するリビアの暫定政府との間で、排他的経済水域(EEZ)の境界を定める協定を締結した。トルコが領海の領域を拡大する権利を自ら主張するためだけでなく、キプロス、ギリシャ、イスラエル間の合意の成果であるEastMedガスパイプラインプロジェクトを阻止する狙いもあった。
『フランス24』は、南シナ海で、ベトナム、フィリピン、マレーシアを含む数カ国と、いくつかの島々の開発と支配を巡って対立している中国と同様に、「既成事実」政策を試みているトルコだが、緊張状態がエスカレートしたことからも分かるように、報復の手段を持つ欧州近隣諸国と地中海では、同じ方法で成功することは難しいと報じている。
閉じる
その他の最新記事