これまで安倍政権が推進してきた、株高・円安を梃子に企業の賃上げを実現し、デフレを脱却するという狙いが、現下の金融市場の混乱によって打ち砕かれようとしている。安倍首相が標榜するアベノミクスがいよいよ正念場を迎え、今月26、27日に上海で開かれる、主要20ヵ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、政策協調による対応が頼みの綱になってきた。一方、かかる危機が迫る中、現金授受問題で甘利前経済再生担当相が辞任したのに続き、今度は不倫問題で若手自民党議員が辞職するに至り、安倍政権の足を引っ張っている。各国メディアが詳細に伝えている。
2月12日付米
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の、「日本のトップ、アベノミクスを脅かす円高・株安に警戒信号」と題した報道記事:
「・安倍首相は2月12日、今週2度目の緊急金融政策会合を招集。
・同会合に急きょ出席した日銀・黒田総裁は、現下の金融と経済情勢について討議したとのみコメント。
・これに先立ち同総裁は、衆院財務金融委員会において、先月末導入のマイナス金利政策が、(目下混乱した金融情勢に)影響を与えたとは考えていないと発言。
・しかし、円高・株安で、安倍政権が推す企業収益の押し上げ、及び物価上昇という目標達成に危機。
・一方、麻生財務相は、今月上海で開催される、G20財務相・中央銀行総裁会議で、目下の金融混乱を収める強調対応に期待とコメント。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙の、「アベノミクス、日経平均株価続落で瀬戸際」と題し
た報道記事:
「・2月12日の日経平均株価は、7年余り振りの週単位での最大幅で落ち込み、2014年10月以来のレベルまで下落。
・これによって、2014年10月に日銀が行った追加金融緩和策(市場に毎年80兆円の資金注入)によって昂揚した株価上昇分を一挙に吐き出し。
・また、1年以上振りの円高も足かせ。
・原油安や、日本の経済活動の6割を支える一般消費低迷で、日銀が目標としている物価2%上昇に対し、先月発表のデータでは、2015年通年のインフレ率は僅か0.5%と、大きなかい離。」
2月13日付台湾
『台北タイムズ』紙(
『AFP通信』記事引用)の、「世界経済先行き不安で、
日本市場下落」と題した報道記事:
「・2月12日の東京市場は、急激な円高で輸出関連企業株に売りが入り、前日比▼4.84%
(▼760.78円)の14,952.61円となり、1週間で▼11%も値下り。
・米連邦準備制度理事会(FRB)イエレン議長が、市場混乱が及ぼす米経済への懸念や、中国の人民元政策の不透明さについてコメントしたことから、ドル売り・円買いが一気に加速。
・2月12日のニューヨーク市場では、1ドル=112.17円まで一挙に上昇。」
一方、2月12日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースの、「父親の育休を求めていた衆議院議員が辞職」と題した報道記事:
「・与党自民党所属の宮崎謙介衆議院議員(35歳)は2月12日、不倫問題が週刊誌で取り上げられたことから、辞職表明。
・同議員は、国会議員として初めて育休取得を推進しようとしていたが、再婚相手の金子恵美衆議院議員(37歳)が出産する直前、他の女性との不倫が発覚して、自民党はもとより、国会全体から非難。
・安倍政権にとっては、現金授受問題で辞任した、甘利明前経済再生担当相に次ぐ痛手。」
同日付英
『ザ・ガーディアン』紙の、「国会議員として初めて育休取得を試みた議員が辞職」と題した報道記事:
「・宮崎議員の不倫相手は、34歳の女性で、同議員の妻が出産する数日前に、地元・京都の自宅で同衾。
・国会議員として初めて育休取得を推し進めることに批判が出ていたが、安倍首相は後押し。
・何故なら、日本における父親の育休取得率は僅か2.3%であるため、安倍首相としては、景気昂揚に女性の活躍は不可欠で、そのため父親の育休取得率を2020年までに13%まで引き上げたいとしていたから。」
同日付中国
『シナ(新浪)ニュース』(
『新華社通信』記事引用)の、「安倍首相の与党自民
党議員、参議院議員選挙前に女性スキャンダルで辞職」と題した報道記事:
「・安倍内閣においては、甘利前経済再生担当相の辞任初め、他何人かの閣僚が政治資金問題等で辞任。
・今回の宮崎議員辞職問題も、政治家の倫理感欠如が問われるものであり、今夏の参議院議員選挙を控え、安倍政権にとっては痛手。」
なお、上記以外にも、与党自民党には直近数ヵ月でも以下のような問題が発生している。
・武藤貴也衆議院議員:未公開株を巡る金銭トラブルで自民党離党、議員辞職はせず。
・丸川珠代環境相:福島第一原発事故の除染で、国が長期目標として示す年間追加被曝線
量について、何の根拠もないと講演で発言。2月12日発言撤回。
・島尻安伊子沖縄北方担当相:閣議後会見で、北方領土ネット検定を紹介した際に、歯舞
群島の“はぼまい”が読めず、秘書官に助け求める。
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中国では、これまでの経済成長の勢いが削がれ、2015年は、1990年の3.84%以来の低成長率である6.81%を記録した。更に、昨夏以降断続的に続く株式市場の乱高下に遭い、世界経済にも暗い影を落とし始めている。しかし、そういう時であっても、また、厳しい時であるからこそ、多くの都市部出稼ぎ中国人は、春節を故郷で家族と祝うことが楽しみのようである。そして、今年の2月7~13日の春節休暇の期間も含め、延べ29億人と推定される民族大移動が1月24日から始まったと各国メディアが伝えている。
2月3日付米
『Foxニュース』(
『CNNニュース』引用)は、「春節の混雑もあって、数万人が鉄道駅で足止め」との見出しで、次のように報じた。
「・今年の春節時の民族大移動は1月24日から約40日間続くが、延べ29億人が飛行機、鉄道、車などで移動。
・鉄道だけで3億3,200万人が移動すると言われるが、中国南部の広州駅では、折からの吹雪で列車が立ち往生したこともあって、一時期は10万人が足止め。2月2日に5万人 となったが、2月3日でもまだ3万3千人が列車待ち。
・広州鉄道公社は、旅行客に列車発車時刻の3時間以上前には駅に来ないよう通知し、また、6,200人もの警備員を配備して混雑緩和に努力。」
2月4日付英
『ザ・ガーディアン』紙は、「春節に寒波襲う」との見出しで、以下のように伝えた。
「・中国南部にはまれな25センチメーターの積雪と寒波が襲い、広州駅で一時10万人が足止めされ、また、中国中西部湖北省(フーペイ)の武漢(ウーハン)空港では67便が欠航。
・春節における世界最大の民族大移動の時期と重なったため、中国全土で混乱。
・また、中東にも寒波が襲い、クウェートでは気温が摂氏零下3度で、降雪も記録。」
同日付米
『NYSEポスト』オンラインニュースは、「新年に女性一人のフライト」との見出
しで、次のように報じた。
「・中国の春節を迎えた2月2日未明、中国南方航空の武漢発広州行きのフライトは、乗客の女性一人を乗せて就航。
・同フライトは137人乗りボーイング737-700機だが、中国南部を襲った降雪と寒波により、定刻より10時間遅延し出発が深夜となったことから、一人の乗客以外は全て他フライト等へ変更したため、さながらチャーター便化したもの。」
また、同日付中国
『シナ(新浪)ニュース』は、「北京で、春節を祝い6万2千の提灯」と
の見出しで、以下のように伝えた。
「・北京政府は春節を迎えるに当り、市内の174の道路、27の公園や観光名所、そして28の商業地区に6万2千もの提灯と7,100の中国式注連飾りを飾った。
・また、市内中に730キロメーター余りに及ぶ電飾も設置しライトアップ。
・今年の新年は2月8日に当り、当局は2月6日~13日の間、毎夜ライトアップ。」
日本でも、年末年始の帰省や旅行客で飛行機、鉄道、高速道路が軒並み混雑するが、中国
の春節大移動は半端ではないことが覗える。なお、人口2千万人を擁する北京でも、市民
の約3分の1が旅行等で市外へ移動するため、年中渋滞している高速道路や混雑のひどい
地下鉄はガラガラとなり、また、悪名高いスモッグもひどくなくなるという。
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