中国の税関総署の発表によると、2016年の貿易総額が前年比▼6.8%減の3兆6,800億ドル(約423兆円)となり、2年続けて前年を下回った。2017年には、対中国強硬派のトランプ氏が大統領に就任することから、香港(シェア17.4%)を除いて最大の輸出相手国の米国向け輸出(同16.7%)に影響が出るとみられ、中国貿易が更に減少する恐れがある。なお、中国税関の発表を受けて、世界市場は上昇したところもあれば下がるところもあり、混沌としている。
1月13日付米
『ロイター通信米国版』:「中国貿易、米国との貿易戦争も予想され2009年以来最悪の落ち込み」
「●中国税関総署は1月13日、2016年の輸出高が前年比▼7.7%下落し、また、輸入高も同▼5.5%減と、ともに2年連続で減少したと発表。
●特に、輸出高は2009年の世界金融危機以来の最悪の落ち込みで、継続的な世界需要減少が背景。
●更に、対中国強硬派のトランプ次期大統領の登場で、米国との貿易戦争勃発が懸念され、2017年は更に落ち込む恐れ。
●すなわち、米税関当局のデータによれば、米国の対中国貿易赤字は2015年で3,660億ドル(約42兆900億円)にも上っているため、トランプ氏としては関税賦課等で貿易不均衡を是正したい意向。
●ただ、中国側言い分は、自らのデータでは、2015年の対米国貿易黒字は2,609億ドル(約30兆円)だったが、2016年で2,508億ドル(約28兆8,400億円)に減少したと主張。
●なお、中国の貿易黒字が、2015年の5,940億ドル(約68兆3,100億円)から2016年には5,100億ドル(約58兆6,500億円)に減少していることから、資本流出の穴埋めを試みている中国当局にとっては冷や水。」
同日付米
『Yahooニュース』(
『AP通信』配信):「中国の貿易額減少のニュースに世界市場は混沌」
「●中国当局発表の2016年貿易総額減少のニュースを受けて、一部アジア市場は下落も、欧州市場は上昇。
●英国のFTSE 100種総合株価指数は+0.3%の7,312、フランスのCAC 40株価指数は+0.8%の4,902、ドイツのDAX株価指数は+0.5%の11,579、また、米国のニューヨーク・ ダウ工業株価指数・S&P指数もともに+0.1%と軒並み上昇。
●一方、日経平均株価は+0.8%の19,287.28、香港のハンセン指数は+0.5%の22,937.38、豪州S&P/ASX 200株価指数は+0.8%の5,721.10にそれぞれ上昇したが、上海総合指数は▼0.2%の3,112.76、韓国のKospi総合株価指数は▼0.5%の2,076.79、また台湾、フィリピン市場も下落。」
同日付英
『メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「トランプ氏の貿易摩擦で中国輸出貿
易に陰り」
「●中国の経済政策担当高官は今週初め、2016年の中国の経済成長率は6.7%だったと見込まれるとし、1月16日に発表される第4四半期(10~12月期)の数値で確認されることになるが、当初の6.5~7%成長目標の範囲内とするも、5、6年前の10%超の成長率からは大幅減速。
●一方、来週就任するトランプ次期大統領は、選挙戦最中より、中国との貿易不均衡是正のため関税賦課等の政策を実施すると発言しており、中国にとって対米輸出貿易に悪影響必至。」
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「米国との貿易戦争勃発の懸念
の中、中国輸出額が2009年以来最悪の落ち込み」
「●中国税関当局の発表では、ドル表示では2016年の輸出高が前年比▼7.7%、また、輸入高が同▼5.5%減少しているが、人民元ベースでは前者が▼2%、後者が▼0.6%の減少。
●同当局は、2017年には対中国強硬派のトランプ氏が米大統領に就任すること、また、他国でも保護貿易主義が台頭してきていることから、中国の2017年輸出貿易額を伸ばすことは至難の業とコメント。」
一方、1月14日付中国
『チャイナ・デイリィ』:「中国貿易が立ち向かう課題」
「●中国税関総局発表では、2016年の貿易総額は前年比▼0.9%減の24兆3,300億人民元
(3兆5,000億ドル)、内訳は、輸出総額が同▼2%減の13兆8,400億人民元、輸入総額が同▼0.6%減の10兆4,900億人民元。
●同当局の華(ホァ)報道官は、2017年の中国貿易は、英国のEU離脱や他の欧州諸国の選挙に表れている保護主義の台頭や不確かな世界経済動向などの逆風に立ち向かうことになり、また、対中国強硬派のトランプ次期大統領の具体的政策を注視する必要があるとコメント。
●しかし同報道官は、2016年の上半期に貿易額が大きく落ち込んだものの、下半期、特に第4四半期(10~12月期)には前年同期比+3.8%と堅調だったこと、更には、政府の貿易刺激策や欧州の需要拡大が見込まれることから、前述の逆風に十分立ち向かっていけるとも発言。」
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