11月8日に投開票が行われる米大統領選は迷走する一方だ。クリントン候補が優勢とされるも献金疑惑の浮上で不安定さをみせ、差別発言で支持率を落とすも人気を保つトランプ候補。投資家筋では、夫と共に中国に広い人脈を持つクリントン候補で実は決まりだが、バブル経済崩壊後の中国に狙いを定めた政策を隠すための茶番劇、という見方すらある。この一部投資家の見解はともかく、暴言や差別発言を繰返しても続くトランプ支持が、世界中の目に奇妙に映る事は間違いない。仏メディアはトランプ人気の不思議を改めて読み解く。
『レゼコー紙』は社説で「ドナルド・トランプに投票する三つの理由」と見出しをつけて、依然として不動の支持を維持する理由を分析し、恐らく世界中が不可解に感じる点を要約する。「女性蔑視、外国人排斥、民衆扇動、無知で知られ、不動産開発という名の賄賂やカジノによるマフィアとの関係で巨額の剤をなした人物」が「世界最強かつ民主主義発祥の国の一つ」において「5千万近い米国民がトランプ氏に投票する」事である。
まず、現行の政治システムの拒否を挙げる。既に多くのメディアで報じられた通りだ。「米国人は既存の政治体制や秩序を疑い、トランプ氏はこの既存の体制を非難攻撃する事に依存する」。人民のための人民による政府を謳う叩き上げの不動産王は米国民の心をつかみ、弁護士で元大統領夫人、大臣まで務めたクリントン候補は、エリート主義への拒否感をより感じさせたと見る。「特に金融危機以来、米国は経済回復はおろか、既存の価値観を壊したと、特に白人中産階級は感じている」。トランプ支持層とそのまま重なる。確かに上位3%が富の54%を牛耳る米国は、もはやアメリカンドリームの国とは言えない。
『ルモンド紙』も、大卒資格を持たない人達のトランプ人気が突出する事に触れている。
また「レゼコー紙」によると前述の「既存の体制と秩序」にはメディアが含まれ、興味深いデータを掲載する。
『YouGov』の世論調査で「トランプ支持者の23%しかジャーナリストや政治の専門家を信頼しない」のに対し「クリントン支持者は89%が信頼する」。また米メディアのトランプ批判の異例ぶりも目を引く。
『USA Today』は1982年の創刊以来初めて「トランプ氏に投票しないよう読者に助言」した。1857年創刊の月刊誌
『The Atlantic』は「クリントン候補への投票を呼び掛けた」が、1964年のジョンソン候補と、1860年のリンカーン候補の例外を除いて、「常メディアが回避してきた」事だと驚きを隠さない。
『フィガロ紙』も「メディアと対決姿勢を強めたメディア王」と報じ、既存の体制や秩序と決別する構図作り上げた事に勝因の一つを見る。
トランプに惹かれたのは最貧困層ではなく、「中国製品、メキシコ系移民、黒人、女性、機械化」によって雇用を失う恐れをもつ「小市民の白人」である。さらに「エリートを拒絶する小市民は、強引で黒いやり方でもやり手のビジネス手腕にも期待を寄せる」。この点はフランスを始め欧米各国でみられる傾向だと
『レゼコー紙』は懸念も示す。
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26カ国(米国、豪州、ブラジル、日本、カナダ、韓国、他欧州国)の回答者を対象にしたロイター・ジャーナリズム研究所(RISJ)の年次調査・報告書によると、若者と女性を中心に、ここ数年でニュースをTVで見る人に対しソーシャルメディアを通して見る人が上回ったとする。スマートフォンでのニュース閲覧も増加、オンライン利用者の半数以上がフェイスブックなどのソーシャルメディアを通じて無料でニュースを見るため、広告収入も期待できない。調査の前書きには、世界中の報道機関にとって出版とニュースの未来への深刻な状況となる「混乱期」に入ったと綴られている。ネット時代において業績拡大に苦戦する老舗の報道機関にとって当報告書は耳に痛いものである。フェースブック幹部は動画ニュースが今後主流となるとしているが、当報告書では、テキストニュースは広告を回避でき、より早く読み易いため続伸すると結論づけている。
6月15日付英
『BBCニュース』は「若者のニュース閲覧、ソーシャルメディアがTVを上回る」との見出しで以下のように報道している。
・ロイター・ジャーナリズム研究所(RISJ)による18歳~24歳を対象とした調査で、28%が主なニュース元としてソーシャルメディアを使うと回答、TV(24%)を上回った。インターネット使用者の51%がソーシャルメディアでニュースを見ると回答。これまでのビジネスモデルが通用しなくなってきている。...
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6月15日付英
『BBCニュース』は「若者のニュース閲覧、ソーシャルメディアがTVを上回る」との見出しで以下のように報道している。
・ロイター・ジャーナリズム研究所(RISJ)による18歳~24歳を対象とした調査で、28%が主なニュース元としてソーシャルメディアを使うと回答、TV(24%)を上回った。インターネット使用者の51%がソーシャルメディアでニュースを見ると回答。これまでのビジネスモデルが通用しなくなってきている。
・5年目となるこの報告は、英世論調査会社YouGovが26か国(2千人の英国人を含む)5万人を対象に行った調査。
・老舗メディアにとって良い事は、現在でも多量の情報を提供し続けている事。欠点はプロのジャーナリズムのビジネスにかかるコストを埋める収益が難しくなっている事。新聞紙の売り上げ減少が続く一方、消費者がよりオンラインニュースのコンテンツにお金をかけるわけでもない。
・フェースブックなどのソーシャルメディアは「ニュース項目を閲覧する」だけの場所から、ニュースを消費する場所となっており、特に女性や若者の間で顕著。
・ニュースの閲覧、シェア、コメントで、1位「フェースブック」で44%、2位「ユーチューブ」で19%、3位「ツイッター」が10%、アップルニュースは米国で4%、英国3%、メッセージアプリ「スナップチャット」が1%以下。
・閲覧記録からの自動ニュース表示を好む人が約3割、一方、偏った思考を形成する危険があるとして、人の目で編集されたメディアを好むと回答が3割。著者ニック・ニューマン氏は、「好みによる自動選別が便利だと思う一方で、大事な視点を欠くのではないかとの懸念がみられる」とする。
・有料オンラインニュース利用者の上位は北欧、(1位ノルウェイ、2位ポーランド、スェーデンと続く)日本は7位で12%。(米国は9%、フランス12%、英国7%で最下位)
・スウェーデン、韓国、スイスの回答者の6割超がスマホでニュースを閲覧すると回答。更に、ニュースサイトやアプリよりも、ソーシャルメディアからニュースを閲覧。ソーシャルメディアへのニュース提供元を2回に1回未満しか意識していない事を老舗メディアは大いに懸念すべき。
・ニューマン氏は、老舗メディアが「若者や女性を取り込むにはソーシャルメディアを無視できる状況でない為、読者離れが起きないようにコンテンツ統制が思うように取れない。」とする。
同日付英
『ガーディアン』は「フェースブックの隆盛は出版界の収益に打撃」との見出しで次のように報道している。
・ロイター研究所のデジタルニュースに関する年次報告書によると、フェースブックなどのソーシャルメディアでニュースを見る人が増加、出版界は読者引き戻しと収益増加が困難に。
・TVニュースの重要性が薄れており、どの国でも45歳未満ではオンラインが放送より重要と回答。携帯機器からのニュースへのアクセスは2年前の37%から53%へ上昇した。タブレット使用での閲覧は英国では減少。
・RISJの当報告書ディレクターのニールセン氏は「動画でニュースを見る人が少ない主な理由は、ニュースを読む方がより速く、便利だし、広告が邪魔だから。」とし、有料動画ニュースは不調続き。
6月14日付英
『Nieman Lab』は次のように報道している。
・今週フェースブックの上層部は今後5年間でニュースが「すべてビデオ」となるとの見通しを示し、ニコラ・メンデルゾーンCEOは「テキストは年々減り、画像と動画の割合が急増している」と述べている。
・オックスフォードのRISJの最新報告書によると、オンライン上のニュース動画は世界的には少数派で、テキストはニュース分野では持続するとする。 26か国(米国、豪州、ブラジル、日本、カナダ、韓国、他欧州国)での調査では、1週間でニュースを動画で見たのは僅か約25%だった。
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