米・英・ロシア・中国メディア;南シナ海における米中のつばぜり合い(4)
これまで何度か報じたとおり、南シナ海における軍事拠点化を着々と進める中国に対して、米国があの手この手を用いて牽制してきた。そして、5月26~27日に開催される主要7ヵ国首脳会議(G7伊勢志摩サミット)において、日米主導によって南シナ海問題で中国が槍玉に上がることを懸念してか、中国が硬軟入り混ぜた対応をみせている。
5月24日付米
『AP通信』の報道記事「中国、米・ベトナム関係修復は評価するも、中国を標的とするのは誤りと主張」:
「・中国外交部は5月23日、米国が50年前のベトナム向け武器禁輸法を撤廃したことに関し、(共産党政権の)ベトナムが米国含めて他国と良好な関係が構築できたことを評価する旨公式表明。
・但し、5月24日付国営メディア
『チャイナ・デイリィ』の社説で、米国・ベトナム間連携は中国主権を脅かすことがあってはならないし、米国がベトナムを利用して南シナ海において中国と対峙しようとすれば、反って同海域の緊張を高めることになり絶対反対と主張。...
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5月24日付米
『AP通信』の報道記事「中国、米・ベトナム関係修復は評価するも、中国を標的とするのは誤りと主張」:
「・中国外交部は5月23日、米国が50年前のベトナム向け武器禁輸法を撤廃したことに関し、(共産党政権の)ベトナムが米国含めて他国と良好な関係が構築できたことを評価する旨公式表明。
・但し、5月24日付国営メディア
『チャイナ・デイリィ』の社説で、米国・ベトナム間連携は中国主権を脅かすことがあってはならないし、米国がベトナムを利用して南シナ海において中国と対峙しようとすれば、反って同海域の緊張を高めることになり絶対反対と主張。」
同日付英
『メール・オンライン』(
『AFP通信』記事引用)の報道記事「中国国営メディア、米国の対ベトナム武器禁輸法撤廃の背景を非難」:
「・中国国営メディア
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英文版)』は5月24日、米国が数十年続いたベトナム向け武器禁輸法を撤廃したのは、ベトナムを利用して中国に圧力をかけようとしたものと非難。
・同紙は、オバマ大統領が中国を標的にしたものでなく、あくまでかつての敵国との関係改善だとコメントしているが、これは全くの虚偽だと酷評。」
同日付ロシア
『ロシアTV』の報道「中国は公式には評価も、米国・ベトナム武器輸出解禁
合意は“火薬箱に火花”と苛立ち」:
「・中国国営メディアの
『チャイナ・デイリィ』も
『グローバル・タイムズ』も5月24日報道で、米国の対ベトナム武器輸出解禁合意について、実態は中国に圧力をかけようと意図するもので、南シナ海の緊張を反って高めることになり、米国の欺瞞だと酷評。
・一方、中国の外交部は公式には、5月23日の記者会見に臨んだ華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官が発言したとおり、冷戦の名残ともいうべき、米国の対ベトナム武器禁輸法が撤廃され、(共産党政権の)ベトナムが米国含めた他国と関係改善されることを評価。
・なお、南シナ海において領有権問題を抱える中国とベトナムは、1979年に中越戦争を起こし(編注;1984年にも中越国境紛争)、また、1988年には西沙(パラセル)諸島をめぐって艦船の軍事衝突発生と、これまで何度も衝突。」
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』社説「かつての敵国同士の仲直りによって地域の緊張
を高めてはならない」:
「・かつてベトナムと米国は、40年以上も前に終結したベトナム戦争(編注;1960年12月~1975年4月)の敵国同士で、数百万人のベトナム人犠牲者、また、米兵も5万8千人が戦死。
・しかし、3人目の米大統領としてベトナムを訪問したオバマ大統領は、長い間施行されていた対ベトナム武器禁輸法を撤廃。
・同大統領は、中国を標的としたものでなく、あくまでベトナムとの関係改善の結果とコメントしているが、南シナ海で中国と領有権問題を抱えるベトナムに肩入れし、中国に対する圧力を高めようとする意思であることは歴然。
・従って中国側としては、南シナ海で悪戯に緊張を高め、中国の主権を脅かすようないかなる対応にも断固反対。
・また、米国が何と言おうとも、中国とベトナムは既に、南シナ海における領有権問題について、両国間の直接対話で解決していくことで合意済み。」
一方、同日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースの報道記事「中国、南シナ海での
フィリピン漁船取り締りを軟化」:
「・フィリピン当局高官は5月24日、南シナ海海域で4月15日を最後にここ1ヵ月程、フィリピンの漁船が中国沿岸警備隊から水鉄砲による嫌がらせを受ける事態が発生していないとコメント。
・中国が2012年に南シナ海のスカボロー環礁をフィリピンから力で奪って以降、同海域で漁をするフィリピン漁船と中国警備隊との間でイタチゴッコが頻発。
・ただ、中国との対峙を鮮明にしていたベニグノ・アキノ大統領に代わって、少し柔軟な対応を取ると期待されるロドリゴ・ドゥテルテ新大統領が6月30日に就任することから、中国側が暫く静観しているものと推測。
・実際、ドゥテルテ氏が5月16日に趙(チョウ)駐フィリピン中国大使と面談した際、フィリピン漁民も生活のため漁が必要なので、大目に見るよう依頼。」
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米・英・ロシアメディア;英国、EU残留か離脱か(2)
5月2日付
Globali「英国、欧州連合(EU)残留か離脱か」で触れたとおり、EU残留派が、英国がEU離脱した場合の経済損失等を訴えれば、EU離脱派は、英国の著名金融事業家の署名を集め、シティ(ロンドン金融街)を再び世界最大の金融センターに返りつかせるべきだとして、両派のキャンペーン活動が白熱している。そして、その国民投票まで1ヵ月余りとなって、EU内のドイツやフランスの他、英国連邦加盟国のカナダもEU残留を主張し、更に、英国の著名な芸能関係者までも、EUから離脱した場合の問題点をアピールするに至っている。
5月20日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースの報道記事「フランス、EU離脱で英国が優位となるとは幻想にすぎないと忠告」:
「・仙台で開催中の、主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席しているフランスのミッシェル・サピン財務相は5月20日、英国がEUから離脱した場合、EUメンバーのときより優位となることは有り得ないと忠告。
・G7会合では、世界経済の持続的成長について討議されたが、万一6月23日の国民投票でEU離脱が決定された場合、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)までもが、世界経済への悪影響を懸念する声を上げることになろうと指摘。...
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5月20日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュースの報道記事「フランス、EU離脱で英国が優位となるとは幻想にすぎないと忠告」:
「・仙台で開催中の、主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席しているフランスのミッシェル・サピン財務相は5月20日、英国がEUから離脱した場合、EUメンバーのときより優位となることは有り得ないと忠告。
・G7会合では、世界経済の持続的成長について討議されたが、万一6月23日の国民投票でEU離脱が決定された場合、国際通貨基金(IMF)や経済協力開発機構(OECD)までもが、世界経済への悪影響を懸念する声を上げることになろうと指摘。」
同日付米
『AP通信』の報道記事「300人近くの著名俳優、脚本家などがEU残留を主張」:
「・300人近い著名俳優、脚本家、ミュージシャンなどが5月20日、英国がEUに留まるべきだと書面にてアピール。
・“シャーロック”主演のべネディクト・カンバーバッチ、“Xメン”のパトリック・ステュワート、ジュード・ロウなどの俳優の他、スパイ小説のジョン・カール、ファッションデザイナーのビビエンヌ・ウェストウッド、歌手のパロマ・フェイス等が署名。
・数々の芸術作品は、EU基金はもとより、国境を越えての共同制作などによって生み出されてきており、EU離脱によってこれらが弱まり、良い作品は生まれなくなると主張。
・実際、2015年発売のミュージックアルバムの6分の1以上は英国作品であり、また、ハリウッド映画の多くに英国俳優が主演。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュースの報道記事「カ
ナダのジャスティン・トルドー首相、経済協定のためにはEU残留が望ましいと表明」:
「・英国連邦加盟国であるカナダのトルドー首相(自由党々首)は、新規の経済協定を協議していく上で、英国はEUに留まるべきと言明。
・英国は今後も世界で影響力を発揮できるとするが、それはEUメンバーだからこそとコメント。
・トルドー首相の発言の前には、オバマ大統領が4月に訪英の際、英国がEUから離脱した場合、米国との環大西洋貿易・投資協定(TTIP)の交渉に当っては順番が後になると発言して明確にEU離脱を牽制。
・その他、安倍晋三首相、インドのナレンドラ・モディ首相、中国の習近平主席、そして豪州のジュリー・ビショップ外相もEU残留を主張。
・なお、5月16~17日の間、1,600人以上を対象に行ったネット調査では、44%対40%で依然EU残留派が優位。」
同日付ロシア
『ロシアTV』の報道「250人余りの芸能人、EU離脱で芸能活動が下火にな
ると懸念表明」:
「・ベネディクト・カンバーバッチやカイラ・ナイトリーなど著名な250人余りの俳優、芸術家、ミュージシャンらが、EU離脱によって、これまでのような良い芸術作品制作の道が失われると懸念を表明。
・彼らの署名入り主張文は、
『ザ・ガーディアン』に掲載。」
一方、同日付英
『メール・オンライン(デイリィ・メール電子版)』の報道記事「EU離脱
派、(EU残留で)2030年までにEUから更に500万人の移民が流入と懸念」:
「・英国のマイケル・ゴーブ大法官(司法長官)は5月20日、英国がEUに残留するとなると今後2030年までに、現在のスコットランドの人口に匹敵する500万人もの移民が流入することが予想され、国民保健サービス(NHS)は危機に瀕すると発言。
・2020年までに、トルコ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアがEUに加盟すると考えられるため、年間17万2千人~42万8千人の移民が流入すると予想され、今後15年で最多で合計522万9千人にも上るとコメント。
・従って、疾病・傷害医療サービスを受ける対象者が、これまでの倍の年間1,280万人に増え、毎年46億ポンド(約7,360億円)が余計にかかることになると試算。
・一方、フィリップ・ハモンド外相は、かかる数値は非常に稀な想定から導き出されたもので、ただ混乱を招くだけの根拠の薄いものと批評。」
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