1959年の発売以来、主にアメリカの女の子たちのアイドルだったバービー人形が、バリエーションを増やして発売されることが明らかとなった。バービーを販売するマテル社は近年売上げが伸び悩んでおり、今回のお色直しによる巻き返しを狙っている。各メディアは以下のように報じている。
1月28日付
『CBS・ニューヨーク』(米)は、今回新たに発売されるのは、3種類で、曲線的なボディラインのもの(いわゆるぽっちゃり型)、背が高いもの、それに小柄なタイプだと報じている。白人の美女で「ありえないほど完璧なプロポーション」のバービーの容姿が、子どもたちに美に対する誤解を与えると、親からの批判があったことを受けて、今回の修正が行われたという。マテル社からはこれまで23種類の肌や髪色が異なる人形が発売されている。
バービーの売上げは8期連続で落ち込んでおり、前期は14%ダウンしているという。マテル社は今回のシリーズの発表により、売上げの回復を図りたいとする。
1月29日付
『NYSE・ポスト』(米)はこれら新しい人形が7タイプの肌色、22の瞳の色のバリエーション、24のヘアスタイルの組み合わせでインターネットで先行予約販売し、春には米国内の店頭でも販売予定だとする。マテル社の社長によれば、バービーも「時代と共に変化しなければならず」、今回から足が靴の着脱が可能な仕組みに変わり、「ヒール靴を脱ぎ捨てて、フラットな靴を履ける」仕様になっているという。
1月28日付
『USA・トゥデイ』(米)はジョージワシントン大学教授のコメントを掲載している。「今回発売される人形は、少年、少女に体の現実的な変化をイメージさせることができる。現在出回っている人形は不自然な体型のイメージを助長しており、これが若者の自己評価を下げることにもつながっている」。
2014年にはピッツバーグでアーティストのニコライ・ラム氏が9万5000ドル(約1200万円)を拠出してラミリー人形なるものを制作、販売している。この人形は米国防疫センターのデータを活用し、平均的な19歳の女性の体型を再現している。ニキビの跡や、シミなども入ったものもあり、「普通のバービー」とも呼ばれているという。
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日本人にはお馴染みのハローキティが、昨年生誕40周年を迎えた。そんな彼女は現在、日本の会社が生産したグッズのみならず、海外の会社が制作したグッズを通して世界的にも有名なキャラクターとなっている。ハローキティの世界での位置付けと戦略、今後の展望について、アメリカのメデイアが分析している。
8月22日付
『CNN』によれば、ハローキティはバリエーション豊かな商品で、あらゆる世代をとりこにしているという。商品のラインナップにはライセンス契約によるものや、料理用小物などのニッチ市場(特定のニーズを満たすごく小規模の市場)のものもある。40年前に可愛らしいビニール製のコインパースから始まり、今や現代ビジネスの一角を担うまでに成長したのだ。ハローキティについての本を執筆し、現在ハワイ大学で人類学の教授を務めるクリスティーン・矢野氏は「5歳の子どもだけではなく、15歳はたまた50代にも魅力的なキャラクターだ」と語る。
ハローキティは、1960年に辻信太郎氏が創業したサンリオ株式会社のキャラクターである。同社は5万種類の商品と1万5000の店舗を有し、昨年度は65億ドル(日本円で約7865億円)のライセンスによる売上げをあげているという。これはアナ雪やミッキーマウスで有名なデイズニーや、バービーで有名なマテル社などに続く世界6位だということである。サンリオの株価は今年33%の上昇を記録しており、日経の平均上昇を13%上回るものだという。
クレディスイスのアナリストによれば、サンリオは数年前まで自社小売り店での商品販売に重点を置いていたという。しかし、利幅が極めて小さく、財政状況は次第に悪化していった。そのような状況は鳩山玲人(れひと)氏を取締役に迎えてから好転したのだという。ハローキティのキャラクターをライセンス化する戦略を強く推し進めたのだった。戦略による利点はいたって単純明快だ。サンリオはライセンス化により、とりわけ新規参入ビジネスにおいてリスクを回避できる。他方でデザインやその使用方法、商品の内容にいたるまで介入が可能となるのだ。
サンリオのアジアエリア担当の最高執行責任者であるキャロライン・ツアン氏は、次のように語っている。「我々はハローキティをセレブ、いわゆる有名人ととらえています。芸能会社で彼女のマネージャーをしているというコンセプトで、彼女を最も輝かせるために何が一番良いのかを考えるのです。むろん、彼女に何か行動をしてもらうわけにはいきませんが」。そこで重要になってくるのが品質管理だ。先日香港でハローキティの点心レストランがオープンした。店舗のインテリアや食器類にいたるまで、全てにおいてサンリオの許可が必要なのだ。サンリオのスタッフによる料理のチェックもあるという。ハローキティの顔を模したお団子にいたっては、目や鼻などの比率も正確に再現されなければならない。「ゆくゆくは、ハローキティを通してより様々なビジネスの側面からライセンスにかかわっていきたい。デザインのノウハウを提供したりプロジェクトの広報活動といったワンストップサービス(一度の手続きで必要とする関連作業が完了するサービス)を手掛けたいのです」とツアン氏は語っている。
これからの戦略には若者を取り込むことも欠かせない。というのも成長し、親になった現在の若者がハローキティの魅力を子供に伝えるからだ。その点から、若い母親たちにはハローキティファンの中核となってもらいたいのだ。思い出の持つ力だ。さらに、ここ数年サンリオはより高い年齢層のファン獲得に向けて様々な商品を開発している。例えばスワロフスキーやミキモトといったジュエリーブランド、フランスの化粧品ブランドであるセフォラから商品を発売したり、ロサンゼルスの野球チーム・ドジャースのマスコット、シンガポールの5キロマラソンのグッズなども手がけている。
ハローキティには世界的なセレブもぞっこんだ。イギリスの歌手のレデイ・ガガは無数のハローキティのぬいぐるみをちりばめたドレスを着た写真を発表し、アメリカのケイテイ・ペリーはハローキティのいれずみを入れているという。
そんな人気を博しているハローキティも競争の世界にさらされているのはたしかだ。目下のライバルはアナ雪グッズだ。昨年は売り場面積で負けている。
もっとも、専門家はハローキティには他のキャラクターにはない不滅の輝きがあるのだという。ライセンシングビジネス協会のマーテイン・ブロステイン氏曰く「他のどのキャラクターもハローキティのようなグローバル規模の人気を真似ることなどできない。ハローキティは誰もが心の中に持つ何かを思い出させるのだ」。
日本の名物は今や富士山ではなくハローキティなのかもしれない。
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