米中が両国の懸案事項を話し合う米中戦略経済対話で6月6日中国の鉄鋼過剰設備の問題が討議された。中国の過剰設備問題は中国経済を従来の設備投資、輸出主導の経済から消費主導の経済に構造改革するうえで最大の課題として中国政府も位置づけ、年初よりこれに取り組むことを明言して来た。しかしこの改革は当然のことながら人員整理を伴うため、性急に進めると社会的な混乱を招きひいては中国共産党の支配体制にも響きかねない大きな問題であり、中国政府も慎重に進めているというのが実情であろう。一方米国、日本、欧州などは過剰設備により中国国内需要を遥かに超えて生産され低価格で輸出される中国の鉄鋼製品のため自国の製鉄業界が大きな被害を受けている。今回の対話では双方の言い分が真っ向から衝突し合意の難しさを示したようである。
6月6日付
『ワシントンポスト』は、「米国、年次会合で過剰鉄鋼、外国企業の扱いに関し中国を叱責」という見出しで、米国のルー財務長官が月曜日中国の過剰な鉄鋼やアルミニウムが世界市場に溢れていることについて中国側を叱責し、また中国の企業が世界で受けているオープンな対応を中国の外国企業にも与えるよう要請したと報じた。米中戦略経済対話は毎年開催されているが、今年は過剰鉄鋼など経済問題や、南シナ海を巡るせめぎ合いで例年以上に緊張したものとなっている。中国側は今回鉄鋼の設備が大きく増えたのは、リーマンショック後の世界金融危機の際世界景気を支えるために中国政府が多額の財政出動をしたためのものであり、当時はこの政策を全世界が称賛したのに今になって批判するのはおかしいと主張したと報じている。
6月6日付
『ウォールストリートジャーナル』は、「何故米国鉄鋼業界は中国の貿易慣行に熱く怒りを覚えているか」という見出しで、米国大手製鉄会社ニューコープの首脳の言葉を引用して、中国が鉄鋼の過剰問題を解決することに疑問を呈していると伝えている。今回の経済対話で中国側は今後5年間で年産1億から1.5億トンの鉄鋼生産の減産を約束すると繰り返すが、ニューコープ首脳によると2ヶ月前に中国の鉄鋼生産は史上最高を記録しているので、約束だけではなく減産の具体的なスケジュールと確認手段を明示して欲しいと言う。中国が世界貿易機関に加盟した際、15年後に中国を市場経済国と認めることとしたが、その期限が12月に到来する。市場経済国と認められた場合、中国製品に課される関税が引き下げられることになるが、過剰鉄鋼問題に対する中国の対応が変わらない場合、11月の大統領選挙とも絡めて市場経済国への変更に反対する動きが強まる惧れがあると報じている。
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米国大統領選で民主、共和党以外の第三党から新たな候補者が浮上。リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏(元ニューメキシコ州知事)が党の大統領候補に指名された。リバタリアン党(自由主義者党)はこれまで上下院の議席獲得もなく、ジョンソン氏は前回2012年に出馬するも得票率1%のみ。元共和党員のジョンソン氏は知事経験が長く、拒否権行使の多用、マリファナ解禁支持で知られた。同党から、副大統領候補にはウィリアム・ウェルド氏(元マサチューセッツ州知事)が指名された。元共和党員のウェルド氏は人工中絶、同性婚支持で中道右派だが政策によってはリバタリアンと一線を課す。リバタリアン党は、トランプ氏を受け入れ難い有権者に新たな選択肢を与えることになるのだろうか。
5月30日付
『ウォールストリートジャーナル』(ロイター通信引用)は「リバタリアン党、ゲーリー・ジョンソンとウィリアム・ウェルドを党候補に指名」との見出しで以下のように報道している。
・リバタリアン党は党大会で、元共和党で元ニュー・メキシコ知事ゲーリー・ジョンソン氏を大統領候補に、元マサチューセッツ州知事ウィリアム・ウェルド氏を副大統領に指名。元共和党員の両氏を指名することで、リバタリアン党は共和党指名候補ドナルド・トランプ氏と民主党最有力候補ヒラリー・クリントン氏への有力な対抗馬とするねらい。
・100年の歴史をもつリバタリアン党だが、大統領選挙で1%以上の得票率を得たことはなく、連邦議会で議席を得たことが無い。
・ジョンソン氏は2期共和党から知事、拒否権の多用、ドラッグ使用合法化支持で知られ、2012年共和党から大統領選に立候補し本選で約130万票獲得。同氏は、「米国人の半分は現在無党派で、リバタリアン党の出番だ。米国の市民はその自覚がないが、殆どはリバタリアン(自由主義者)だ」とする。
・一方、ウェルド氏は民主党一色のマサチューセッツ州で、人工中絶、ゲイ市民権では、中道右派寄り共和党員として2期知事を務めた。銃規制、自由貿易、外交政策への観念からリバタリアンとしてやや弱い。
・今年の大統領選の世論調査でかつてないほど第三の候補が求められている現状。これまで、第三の党から大統領になった人はなく、両氏は大注目を浴びる。クリントン、トランプ氏と争った場合、ジョンソンが1割の支持との調査も僅かだがある。
5月29日付英
『デイリーメール』は以下のように報道している。
・ゲーリー・ジョンソン氏は日曜フロリダのオーランドで開かれた党大会で2回とも過半数を獲得。
ジョンソン氏は演説で、「(同氏の)フランクな手法が有権者に受け入れられ、長期間少数派だったリバタリアン党の躍進につながる。」と述べた。
・ジョンソン氏は、ウェルド氏を「お手本」とし、ウェルド氏と協調しなければ大統領選で戦えないと思うとラブコールを述べたが、リバタリアン派からやや隔たりをもったウェルド氏に対する党内の代議員からの反応は冷ややかなものだった。
5月31日付米
『NBCニュース』は「ドナルド・トランプは第三の候補を警戒するべきか?」との見出しで、以下のように報道している。
・世論調査でトランプがヒラリーを猛追する中、先週末、トランプ候補に疎外感を抱く社会保守主義者、タカ派、経済保守派共和党員を取り込みを狙い第三党の新顔が浮上。
・リバタリアン党ゲーリー・ジョンソンとウィリアム・ウェルド両氏の同性婚、中絶支持、麻薬合法賛成の右派思想への見方は厳しく、トランプ氏に反対(婚姻複数回)の立場の社会保守派なら支持しないだろう。
・民主共和候補両氏の人気の勢いなさが第三候補に票を許すかと思われるが、支持層がきれいに分かれており、第三党候補の出番はほぼなく、名が知れていない保守派候補が5ヶ月で全米でキャンペーンを繰り広げ、候補者討論会への参加に必要な(世論調査での)15%の支持を得るのも至難の業。
・しかし有利な点は、32の州で候補者となっており、全50州とコロンビア特別区でも準備が整っている。反トランプ派は39州で候補者名簿の用意ができ、またテキサス州で無党派が立候補する際の厳しい規制等の改正を求める訴訟を起こす可能性もあるとする。
・自信に満ちて勝利を豪語するトランプ氏も警戒しているようで、共和党内では第三候補の登場で、クリントンが勝利を治める事を懸念する声がある。共和党内は急速にトランプ支持に団結しており、主流派からも予測された反対がそれほど起きていない。
・先週の「FOXニュース」の調査では、トランプ氏42%、クリントン氏39%に対しジョンソンは10%の支持につけたが、クリントン票がジョンソン氏に流れた事を意味する。ジョンソン氏が脅威となるほどでなくとも、道義的、小さな政府推進派からの批判が増すだろう。トランプは「ニューヨークタイムズ紙」で、ウェルド氏を「アルコール中毒」だと攻撃。ウェルド氏は穏やかに反撃、「言わせておく」とした。
6月1日付
『ヤフーニュース』は「世論調査、予備選と政治が崩壊していると米国民」との見出しで、以下のように報道している。
・最新の調査によると、今回の予測不能で、不安定で風変りとなった大統領選挙予備選を総括し、多くの米国人は国の政治システムに失望と怒りを抱いている。3人に2人は党派に関わらず、選挙に「不満」を持つ。
・政府機関について1060人を調査した、「AP通信」とNORCセンターによる調査によると、65%が「選挙戦に関心がある」、選挙の方法については、23%は「楽しい(excited)」、13%が「誇りに思う(pround)」。1割のみが政治システムに「満足」。政府部門のうち、過半数が満足と答えたのは「軍」のみ。「国会」は4%のみ満足。有権者は民主、共和党両党の主流派にも不満で、党が新しい思想や有権者の意見を取り入れていると回答したのは2割のみ。」
・不満は今回の大統領選に反映された。国民の半数はサンダース氏の参戦が民主党にとって良かったと回答(トランプの参戦は33%)。予備選挙の方法は閉ざされたシステムで、州による相違、党名のみを記入するのは無党派を受け付けない、予備選挙と党員集会の差異などに批判が多い。7割近くが公平でオープンな予備選を望むとし、8割強が「予備選(プライマリー)」が「党員集会(コーカス)」と比較してより公平であると答えた。両党の選挙システムの改正は今回の選挙後となりそうだが、夏の党大会の議題となりそうである。
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