台風「Gaemi(ケーミー)」(日本では第3号と呼称、編注後記)は、台湾で土砂崩れを引き起こし、犠牲者3人、負傷者数百人を出している。そしてマニラ湾では、工業用燃料油を運搬中のオイルタンカーが沈没したため、漏れ出したオイルのために深刻な環境問題となる恐れがある。
7月25日付英国
『BBCニュース』、
『ジ・インディペンデント』紙、フィリピン
『ザ・マニラ・タイムズ』紙等は、台風襲来の暴風雨の中、マニラ湾でオイルタンカーが沈没し、漏出オイルのために深刻な環境問題が引き起こされる恐れがあると報じている。
フィリピンのハイメ・バウティスタ運輸相(67歳、2022年就任)は7月25日、1,500トンの工業用燃料油積載のタンカー“MTテラノバ”(2002年建造、比船籍)が同日早朝、マニラ沖で沈没し、乗組員17人のうち1人は救出されたが残り1人は行く不明だと発表した。
同地域では台風「ケーミー」が通過したばかりで、暴風・荒波が続いていて捜索は難航しているという。
更に、積載オイルが漏れだしていることが確認されているが、拡散防止作業にかかれない状況であるとする。
また、比沿岸警備隊(1967年設立)報道官のアルマンド・バリロ少将は、“積載オイルの流出及び拡散防止作業は時間との闘いだ”としながらも、“万が一全ての積載オイルが拡散してしまうと、フィリピン始まって以来の最悪の油流出事故となってしまう”と表明した。
タンカーが転覆したマニラ湾は、多くの船舶の航路となっているだけでなく、海岸線は大規模ショッピングモールに加えて、リゾート施設や漁港もあるため、深刻な環境問題に発展しかねない。
なお、フィリピンでは昨年3月にも東ミンドロ州沖(マニラ南方のミンドロ島東部)で、80万リットル(800トン)の工業用燃料油積載のタンカーが沈没していて、その際に流出した油は近くのいくつかの漁村の海岸を黒いヘドロで覆ってしまった。
当時、沿岸の村の住民が、けいれん、嘔吐、めまいに見舞われただけでなく、流出油清掃作業に派遣された作業員たちも体調不良を起こしたと報告されているが、その除去作業には3ヵ月もかかってしまっている。
(編注)台風呼称:アジア14ヵ国が加盟する台風委員会が2000年、北西太平洋または南シナ海で発生する台風に関し、防災に備えて各国が情報共有できるよう共通の呼称をつけることで合意。具体的には各国から提案された140の名称一覧を基に毎年の台風を命名(5~7年で一巡)。今回の「ケーミー」は11番目で韓国が提案した名称(意味は蟻)。因みに、日本提案の名称は、5番目Koinu、19番目Yagi、33番目Usagi、61番目Koto、75番目Kujira、89番目Koguma、103番目Tokei、117番目Tokage、131番目Yamaneko。
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7月23日付
『ジ・インディペンデント』紙は、日本がオーバーツーリズム問題を抱えながらもインバウンド事業高揚に注力していると報じた。
日本政府観光局(JNTO、注後記)は7月19日、6月の外国人訪問客数が314万人となり、今年3月に記録した308万人を更新し最多となったと発表した。
同データによれば、23の国・地域からの6月来訪者のうち18ヵ国で過去最多を更新し、また台湾及び米国人は今年1月から毎月最多記録を上回っている。...
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7月23日付
『ジ・インディペンデント』紙は、日本がオーバーツーリズム問題を抱えながらもインバウンド事業高揚に注力していると報じた。
日本政府観光局(JNTO、注後記)は7月19日、6月の外国人訪問客数が314万人となり、今年3月に記録した308万人を更新し最多となったと発表した。
同データによれば、23の国・地域からの6月来訪者のうち18ヵ国で過去最多を更新し、また台湾及び米国人は今年1月から毎月最多記録を上回っている。
この結果、今年上半期(1~6月)の当該人数は1,778万人となり、年換算では2019年に記録した史上最多となる3,190万人を更に上回るペースとなっている。
これに応えて岸田文雄首相(66歳、2021年就任)は同日、“オーバーツーリズム問題対応に注力する”としながらも、2024年通年でインバウンド事業で8兆円(5千万ドル)の収益達成を期待していると述べた。
すなわち、同事業は2024年において、半導体事業を上回り自動車産業に次ぐ産業界第2位の規模となると見込まれる。
高級旅行会社ラグジュリーク(2014年設立)の眞野ナオミ社長は、“38年振りの円安が後押ししていることは明らか”とした上で、“2019年時は中国人旅行者が30%を占めていて中国頼みであったが、現在は台湾・米国はじめ多くの国からの来訪者が増えていることが顕著である”とコメントしている。
実際、JNTOデータによれば、今年6月の中国人来訪者は2019年同月比▼25%も減少している。
ただ、外国人訪問客急増に伴って、多くの観光地でオーバーツーリズム問題が発生しており、そのための対応策が各地でとられつつある。
例えば、世界遺産の富士山では入山料徴収及び入山者数制限措置がとられ、また、国宝の姫路城を管理する姫路市は、成人一律1千円の入場料を外国人には4~5倍の30ドル(約4,800円)に設定することを検討している。
しかし、岸田首相としては、各観光地の対応策に理解を示しながらも、インバウンド事業への後押しは更に継続する意向で、2030年までには外国人訪問客数6千万人を達成し、総収益を15兆円規模まで引き上げたいと強調している。
(注)JNTO:国土交通省傘下の独立行政法人で、正式名称は国際観光振興機構。1893年前身設立で、2003年現法人設立。
(参考)2023年世界観光ランキング:①フランス1億人、②スペイン8,500万人、③米国6,600万人、④イタリア5,700万人、⑤トルコ5,500万人、⑥メキシコ4,200万人、⑦英国3,700万人、⑧ドイツ3,500万人、⑨ギリシャ3,300万人、⑩オーストリア3,100万人、⑪タイ2,800万人、⑫サウジアラビア2,700万人、⑬日本2,500万人
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