日本の製品を含めた最新の研究調査によると、乳児用の調整ミルクの栄養機能については、「ほぼ根拠がない」か「全く根拠がない」という。専門家は、世界的なルール強化を求めている。
2月15日付英
『Guardian』:「調整ミルクの栄養機能の殆どは根拠がない」:
調整ミルクに記載されている栄養機能について、その殆どは、「ほぼ根拠がない」か「全く根拠がない」という。専門家は、世界的な販売上のルール強化を求めている。
調整ミルクは数十億ドル市場で、数百万人が利用している。「BMJ」に掲載された研究によると、広く製品に記載されている調整ミルクの栄養機能は、科学根拠がないものがしばしばあるという。多くの成分がいくつかの機能に関係しており、またある機能が複数の成分に関連しているということもあるという。専門家は、業界がマーケティング目的で曖昧な機能性を記載することなく、「消費者へ信頼できる情報を提供することが肝心だ」と指摘する。
15カ国(オーストラリア、カナダ、ドイツ、インド、イタリア、日本、ナイジェリア、ノルウェー、パキスタン、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、スペイン、英国、米国)の184種類の幼児用ミルク製品を対象とした。1製品につき平均2つの栄養機能が宣伝されていたという。
最も多い機能性としては、「脳、目、神経系の発達」、「免疫系機能促進」、「成長や発達」などがあった。このような記載において、参照がある場合、56%が臨床結果を載せていたが、その他は評価レビューや動物実験を含めた調査等のみだった。
研究では、市場を管轄する官庁は、「製品の機能表示を適切に制限できておらず、透明性に問題があるミルク市場は変革の必要がある」と指摘している。
2月16日付仏『フランス24』(AFP通信):「乳幼児ミルクの栄養機能に科学的根拠なし」:
16日「BMJ journal」に発表された研究によると、乳児用ミルクの宣伝似利用される健康機能の大半は、科学的根拠がないため、科学者らは簡素な表記にすべきだと主張している。
母乳が、乳児への健康的効用が非常に高いことは世界的に知られている。世界保健機関(WHO)や米国米国疾病予防管理センター(CDC)は、特に生後6ヶ月までは母乳育児を推奨している。しかし、WHOによると、これを実践しているのは、世界的に半数だという。
研究では、米国、インド、英国などを含む15カ国の608の製品を調査。最も多い健康上の記載は、脳の発達、免疫系統への効果、成長促進などの機能だった。半数の商品は、特定成分の機能へは関連づけず、4分の3は科学的根拠が示されていなかったという。科学的根拠があった場合でも、半数以上がレビューや意見、動物実験によるものだったという。認証済の臨床実験が示されていたのはわずか14%のみで、その9割はデータがない等、バイアスがかったものだった。
最も引用された成分は、母乳にも含まれ、脳の発達に有効と考えられている「不飽和脂肪酸」だった。しかし、ミルクに添加されたときの効果のエビデンスはない。
研究の著者で、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのマンブリット博士は、根拠が示されない誤った情報を提供する調整ミルク市場を批判し、健康上の効能は、上級製品の宣伝文句に使われているだけで、「騙される消費者にとっては厄介なもの。簡素なパッケージにすべき」だと指摘する。また政府や行政機関が、製品をじっくり評価する必要性があるとしている。
先週、医学雑誌「ランセット」には、各国の政府に対し、親の不安を利用し母乳の代わりにミルクを手に取るよう、市場を搾取する業界の取締を求める論文が複数掲載された。
閉じる
中国政府は、“ゼロコロナ政策”の看板は下ろしたものの失政であることは決して認めず、統計上は死者も感染者も低く抑えられているとして、いよいよ海外旅行制限を緩和することになった。これに対して、日本や欧米諸国の多くは、感染爆発が発生していると疑われることから、3年前の轍は踏まないよう、中国人旅行者の入国前検査を徹底し水際対策を強化している。しかし、観光産業復活を切望する東南アジア諸国や航空業界等は、入国制限を設けずに春節に続く大旅行シーズン中の中国人旅行客受け入れに躍起になっている。
1月6日付
『ロイター通信』は、「感染急増の中国による海外旅行解禁に備えて多くの国で水際対策強化」としながらも、観光業や中国ビジネス再興を切望する東南アジア諸国等は、入国制限を設けずに中国人旅行者を熱烈歓迎しようとしていると報じた。
世界でこれまで以上に多くの国が、中国による海外旅行解禁期日を数日後に控えて、中国人旅行者の入国前新型コロナウィルス(COVID-19)検査を徹底するとしている。
多くの中国人は、過去3年間で都市封鎖措置等による行動制限で自宅待機を強いられてきており、旅行解禁を非常に待ち望んでいた。
中国政府としては、先月発生した“ゼロコロナ政策”に対する表立った抗議運動を受けて、同政策の大幅緩和に舵を取ることとなり、1月8日から遂に旅行解禁に踏み切った。
しかし、拙速すぎる急激な政策変更に伴い、“ゼロコロナ政策”の下で総人口14億人のうちほとんどの人が感染したことはなく免疫を持っていないことから感染爆発を引き起こしたと考えられ、多くの病院に受け入れ能力を超える患者が殺到し、また薬局の医薬品在庫が払底する事態となっている。
それでも政府高官や国営メディアは、感染防止対策は万全だとし、感染者急増の事態を軽視するだけでなく、中国人旅行者に対する諸外国の受け入れ条件厳格化を非難するばかりである。
外交部(省に相当)の毛寧報道官(マオ・ニン、50歳、2022年就任)は1月6日、欧州連合(EU)が中国人旅行者の中国出発前の検査を要求するとしたことに対して遺憾の意を表した。
また、『環球時報』は社説で、いくつかの西側諸国のメディアや政治家は、中国が取る政策はそれが何であっても“全く満足しようとしない”と糾弾している。
更に、世界の航空業界も、数年間COVID-19の世界的大流行に打ちのめされていたことから、大のお得意である中国人旅行者に対する事前検査実施という政策を非難している。
一方、中国国内では市民の間から拙速な対応に疑問の声が上がっている。
上海在の70歳の高齢者が『ロイター通信』のインタビューに答えて、“制限緩和前に種々準備をする必要があった”とし、“一例を挙げれば、薬局に十分な医薬品を用意させておくとか、である”と強調した。
実際問題、葬儀場が満杯になっていたり、人工呼吸器を付けた高齢患者が病院の廊下に溢れていたりと、矛盾が露呈している。
『上海モーニング・ポスト』紙報道によると、上海の200人以上のタクシー運転手が、不足している救急車に代わって患者を病院まで搬送しているという。
そこで世界保健機関(WHO、1948年設立)の専門家も、中国政府はCOVID-19死因要件を狭義のものに変更していると疑っていて、WHO定義でいけば今年だけで死亡者は100万人以上になっているはずだとしている。
(編注;中国政府は、COVID-19死因要件を「感染後、主に呼吸が困難になり死亡した場合に限られる」としていて、高齢者や基礎疾患のある感染者が重症化して死亡した場合などを除いている。)
しかし、機関投資家らは中国政府の緩和政策を歓迎していて、直近50年で最低の経済成長率となっている年17兆ドル(約2,278兆円)規模の中国経済が復活すると楽観的にみている。
また、緩和政策に伴い不調だった不動産業界も活気づくとの期待から、1月6日の人民元が値上がりした。
更に、優良株とされるCSI300指数(注後記)及び上海総合指数とも、年初の株式市場開場週にあって2%以上値上がりしている。
これに関し、HSBC(1865年前身設立)アジア太平洋地域株式資本戦略担当部門のヘラルド・バン・デル=リンデ部門長は、“COVID-19感染急増に伴い医療体制への影響が高まる中での制限緩和は色々問題含みではあろうが、当行のエコノミストは、中国がけん引してアジア全域での経済活性化を促すことになると期待している”と表明した。
一方、香港と中国本土との往来が1月8日以降、3年振りに解放されることから、香港拠点のキャセイパシフィック航空(1946年設立)は1月5日、中国本土との航空便を昨年比倍以上に増便するとしている。
ただ、WHOは、1月21日から始まる春節長期休暇期間中の民族大移動によって、ワクチン接種率が低調な地方の小都市まで感染が拡大することを懸念している。
中国当局によると、昨年時の10億5千万人に対して、今年はのべ21億人が車・電車・飛行機・船で旅行することになると予想しているという。
かかる事態に対して、中国近隣の東南アジア諸国は、中国人旅行者が大挙訪れることを望んでいて、入国に当たって特に制限を設けていない。
ITBチャイナ(上海本拠の旅行見本市)によると、中国在旅行会社の実に76%が、旅行解禁となった際に最も人気なのが東南アジアだと認識しているという。
(注)CSI300指数:上海証券取引所及び深セン証券取引所に上場しているA株(人民元取引対象銘柄)のうち時価総額及び流動性の高い300銘柄で構成された株価指数。
閉じる