ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説(2022/03/24)
ロシアの侵攻を受けたウクライナのゼレンスキー大統領が、リモート形式で、12分間に及ぶ国会演説を行い、日本の原発や化学兵器事件に触れ、ロシアへの制裁継続を訴えかけた。
3月23日付米
『ニューヨークタイムズ』:「ゼレンスキー氏、福島やサリン事件を織り交ぜ国会演説」:
今月23日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、12分に及ぶ日本の国会での演説で、原子力発電所の事故や化学兵器事件を回想することで議員へ支援強化を求めた。
演説では、ロシアが占領するチェルノブイリ原発への被害について、数千人の避難者を出し、ドイツ等が原発を再検討することに繋がった2011年の福島第一原発のメルトダウンの記憶を思い出させると言及。...
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3月23日付米
『ニューヨークタイムズ』:「ゼレンスキー氏、福島やサリン事件を織り交ぜ国会演説」:
今月23日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、12分に及ぶ日本の国会での演説で、原子力発電所の事故や化学兵器事件を回想することで議員へ支援強化を求めた。
演説では、ロシアが占領するチェルノブイリ原発への被害について、数千人の避難者を出し、ドイツ等が原発を再検討することに繋がった2011年の福島第一原発のメルトダウンの記憶を思い出させると言及。「侵攻により、チェルノブイリは戦闘地域に変わった。戦争終結後に、環境ダメージの範囲を調査に何年も要するだろう。ウクライナ国内4か所15の原子力高炉が危険な状態になるだろう」と述べた。
また、ロシアがサリンガスなど神経系の化学兵器を使用する懸念についても、1995年カルト集団が地下鉄で化学兵器使用したサリン事件を例に挙げた。一方で、アジアで最初に支援の手を差し伸べた日本に感謝し、ロシアへの制裁継続を求めた。
日本政府は、ウクライナ支援に前向きだが、平和憲法により対応が制約されるため、今後の追加政策はまだ不透明。ウクライナ軍へは、ヘルメットなどの防衛装備品を提供している。日本の迅速な対応は、以前ロシアがクリミア、ジョージア、ウクライナに侵攻し、その弱腰対応で批判された時とは対照的である。
日露間には長年の領土問題があり、安倍元首相は、領土主権問題解決に向け、プーチン大統領との関係構築に尽力してきたが、今月21日、ロシアは平和条約締結の中断を宣言している。
同日付中国『The Straits Times』:「ゼレンスキー大統領、ウクライナの原発危機に触れロシアへの圧力を求める」:
ゼレンスキー大統領は、ロシアが化学兵器の準備をしているとし、日本にロシアへの圧力強化を求めた。
西欧や米国の国会に向け、数々の情熱的な演説を行ってきたがアジアでの演説は初。日本に「侵攻の津波を止めるため」ロシアとの貿易を停止し、国連安保理(UNSC)等の機能していない国際機関の改革を日本がリードするよう求めた。
緑のオーバーオールと髭姿の同氏は、ウクライナへのサリン攻撃への注意を促し、原発が危険な状態にあると警告した。「責任のある国家が平和を守るため団結しなければならない。これからも戦争をしたいという侵略者に対して、非常に強い注意が必要」だとし、歴史的な時に重要な役割を果たす日本に感謝を述べた後、スタンディングオベーションが起きた。またロシアについて、「最大国が戦争を始めた訳だが、その能力は決して大きくない、モラル面では最小国だ」と述べた。
様々な感情に訴える演説をした同氏だが、今回も過去の出来事を思い出すよう訴えかける手法となった。米国では真珠湾攻撃を、英国では、戦時下のチャーチル首相を、ドイツでは冷静とベルリンの壁崩壊に言及してきた。日本では、このようなはっきりとした言及はなかったが、チェルノブイリを包囲したロシアが原発事故への可能性や、西欧最大の原子力発電所であるザポロジエ原発に言及。広島や長崎は世界唯一の被爆地であり、福島は世界最悪の原発事故としてチェルノブイリと並ぶ。
また、演説ではロシアによる侵攻が、世界で前例のない食糧危機、供給問題につながっているとも述べた。同日フランスでも演説が行われる。
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フランス:パリの美化計画(2022/01/19)
かつては「花の都」と呼ばれたパリだが、近年はごみや景観の悪さが目立ち、昨年には市民がネット上で「汚いパリ」を強調するキャンペーンが起きた。この批判を受け、市はキャンペーンが一定の効果があったと認め、街の美化へ乗り出している。
1月18日付英国
『Guardian』:「かつての面影を求めるパリの美化マニフェスト」:
パリ市当局は、光の都パリの街の景観を向上させるための「美化マニフェスト」を発表。ネット上で繰り広げられてきたパリの街の汚さを強調する運動を受け、同市のアンヌ・イダルゴ市長は対策を迫られていた。
エマニュエル・グレゴワール副市長によると、緑の党が主導する活動は停止されるという。パリでは2015年に市民による街路樹の下の植樹を許可制で導入。...
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1月18日付英国
『Guardian』:「かつての面影を求めるパリの美化マニフェスト」:
パリ市当局は、光の都パリの街の景観を向上させるための「美化マニフェスト」を発表。ネット上で繰り広げられてきたパリの街の汚さを強調する運動を受け、同市のアンヌ・イダルゴ市長は対策を迫られていた。
エマニュエル・グレゴワール副市長によると、緑の党が主導する活動は停止されるという。パリでは2015年に市民による街路樹の下の植樹を許可制で導入。これまで広く使われてきた鋳鉄カバーが庭園に代わったことで、犬の糞やゴミが溜まってしまった。これは景観として十分なものでなく逆に「維持費の問題を増大させた」という。
今後は、公共スペースへのごみ捨てを決して容認せず、落書きや違法ポスターの取り締まりも強化するという。見苦しい黄色い線が引かれた新しい自転車レーンも廃止され、コンクリートのバリアは「よりスマートな」ものに置き換えられるという。
昨年SNS上では「#汚いパリ」が盛り上がりを見せ、パリ市民が次々と市内のゴミの山や朽ちたベンチ、捨てられたスクーターや荒れ放題の街路樹の写真を投稿。市民は、19世紀ナポレオン3世時代から伝わる個性的なアートモチーフなど街に残る歴史的遺産をも撤去する市に怒りを向けた。市はこのムーブメントを「汚名キャンペーン」だと一蹴しつつも対応を迫られていた。
市は昨年7月、景観向上を目的とした8つの施策を発表したが、今回の「美化マニフェスト」では、この市民キャンペーンが、問題点を明確化し対策を促した点で有用なものだったと評価された。
同日付シンガポール『The Strait Times』:「批判を受け、失われた美しい街を取り戻そうとするパリ」:
パリ市当局は今月18日、光の都を美しくする計画を盛り込んだ「美化マニフェスト」を発表。パリでは汚れた街を強調するオンライン上でのキャンペーンが起き、市長は対策を迫られていた。
これまで公共スペースでの市民による花壇整備などが行われていたが、このアマチュア庭園により、フンやごみが溜まる等より景観が悪化。市は美化計画でゴミ捨てに対し、断固とした施策を示している。同市の市長は社会党から今年4月の大統領候補に出馬するが、有権者へのアピールに苦戦しており支持率は約3%に留まっている。
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