ユーロ圏のインフレ率が過去最高に(2021/12/07)
ここ数ヶ月、インフレ率はユーロ圏で4.9%と記録を更新している。これは20年来の最高水準となる。バルト三国、ベルギー、スペイン、オランダ、そして欧州最大の経済大国であるドイツでは6%と、高いインフレが続いている。
仏放送局
『RFI』 は、新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきたと同時に、消費の回復と景気の回復により、需要が爆発的に増加したと伝えている。供給が需要に追い付かず、サプライチェーンに支障が出ている。コンサルティング会社Tenzing社のエリック・デラノイ社長は、「投資が再開されても、非常に強い需要に生産能力が適応するには時間がかかる。これは1年半にわたって麻痺していた物流回路にも言えることで、例えばルノーでは半導体が不足しているために自動車の製造ができないでいる。...
全部読む
仏放送局
『RFI』 は、新型コロナウイルスの流行が落ち着いてきたと同時に、消費の回復と景気の回復により、需要が爆発的に増加したと伝えている。供給が需要に追い付かず、サプライチェーンに支障が出ている。コンサルティング会社Tenzing社のエリック・デラノイ社長は、「投資が再開されても、非常に強い需要に生産能力が適応するには時間がかかる。これは1年半にわたって麻痺していた物流回路にも言えることで、例えばルノーでは半導体が不足しているために自動車の製造ができないでいる。サプライチェーンを再構築して販売できるように、物流回路、グローバルな回路を再構築する必要があるが、半年から1年かかる。」と指摘している。
需給調整を妨げているもう一つの問題は、米国のバイデン政権や欧州の景気刺激策などの大規模な景気刺激策により、市場に大量の流動資産が注入されていることだという。
インフレが長期的に継続する可能性については、米国では、巨大な景気刺激策と、家計を支援するために非常にコストのかかる財政措置がとられたため、インフレ圧力が持続する可能性がある。一方、ユーロ圏については、ジュネーブにある国際開発研究所(IHEID)の名誉教授であるチャールズ・ウィプローズ氏は、「この1年間、一時的なインフレであるという主張と、人々は失った購買力を取り戻したがるためにインフレが続くという主張の間で議論が交わされてきた。個人的には、インフレ率は2%から3%程度に戻ると思っている。2022年までは続くが、徐々に落ち着いてくるはずである。しかし、中央銀行や政府が何をするかは分からない。」と語っている。
仏誌『ル・ポワン』 によると、単一通貨を採用している19ヶ国の消費者物価は前年比4.9%上昇し、25年前の統計開始以来、最も高い上昇率となった。
フランスでは、11月の1ヵ月間で、サービス価格の上昇が加速する一方、食料品の価格は急上昇し、製造業製品の価格上昇は同じペースで続き、エネルギー価格の上昇は鈍化したという。フランスでは、夏以降、物価上昇が加速し、7月のインフレ率は前年同期比1.2%にとどまったが、8月には1.9%、9月には2.2%となった。
金融ニュースサイト『ブルソラマ』 は、コロナの感染再拡大とオミクロン株の出現に直面する中、フランスの政治家たちは、経済活動再開のために不可欠な消費者の自信を崩さないために、インフレに対して安心感を与える発言が目立つと伝えている。なお、フランス銀行は、オミクロン株の発生によって予測が大きく変わることはないと断言し、新型コロナウイルスの波が周期的にやってくるものの、時間の経過とともに経済的な影響が少なくなってきていると指摘している。
閉じる
カナダ教育委員会、ノーベル平和賞受賞者を反イスラム感情を起こす可能性があるとして検閲対象に(2021/11/22)
カナダ最大であるトロント教育委員会は、2018年のノーベル平和賞受賞者であり、イラクでISに拉致され性奴隷の被害者となったナディア・ムラードさんを、「イスラム教への反感を助長する」可能性がある存在だと判断し、ムラードさんが招待された読書&意見交換会に13歳から18歳までの10代の女の子が参加できない措置を取った。
カナダ
『グローブアンドメイル』 紙によると、トロント教育委員会は、4年ほど前からトロント在住の母親であり起業家でもあるターニャ・リー氏と提携して、10代の女の子を対象とした読書&意見交換会のイベントを運営している。トロントのダウンタウンにある図書館の地下で15人の10代の少女たちが集まって始まった会は、現在60人以上の10代の少女たちが毎月オンラインで集まる規模まで成長した。
トロント教育委員会はこれまで積極的にリーさんの活動を支援してきた。...
全部読む
カナダ
『グローブアンドメイル』 紙によると、トロント教育委員会は、4年ほど前からトロント在住の母親であり起業家でもあるターニャ・リー氏と提携して、10代の女の子を対象とした読書&意見交換会のイベントを運営している。トロントのダウンタウンにある図書館の地下で15人の10代の少女たちが集まって始まった会は、現在60人以上の10代の少女たちが毎月オンラインで集まる規模まで成長した。
トロント教育委員会はこれまで積極的にリーさんの活動を支援してきた。参加する生徒に本を配布したり、クラスで議論したり、クラブのメンバーが学校を休んで参加することを許可したりしてきた。しかし、先月、リーさんはヘレン・フィッシャー教育委員会会長から、リーさんが選んだ2冊の本を支持しないという連絡を受け、支援を打ち切られた。2冊のうち1冊が2018年のノーベル平和賞受賞者のナディア・ムラードさんの本「THE LAST GIRL - イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語」だった。教育委員会は、イスラム教への反感を起こす可能性があると判断して、生徒たちを参加させない旨を伝えたという。
『グローブアンドメイル』 紙は、力ある立場の機関が、無知であり、特に教育の仕事をしていることは問題だ、と批判している。ムラードさんは19歳のとき、イスラム国のテロリストがイラク北部の村に侵入し、彼女を含む何千人もの若いヤジディ教徒の女性たちを奴隷にして大量虐殺を行った。逃亡することに成功しドイツに逃れたムラードさんは、国連安全保障理事会で証言し、人身売買に関する国連大使となり、ノーベル平和賞を受賞した。
『グローブアンドメイル』 紙は、自らのマニフェストで「公平性、人権、反人種主義、反抑圧に対する大胆なコミットメント」を謳っているトロント教育委員会の幹部たちは、アフリカ系行事をお祝いすること、ジェンダーニュートラルトイレ、一人一台端末の推進でマニフェストを達成するものではないことをもう一度考え直すべきだと指摘している。
しかし、こうした検閲行為はカナダ国内で広がっている。仏放送局『RFI』 と『ウエストフランス』 紙によると、ラジオ・カナダ・インターナショナルの記者が今年9月、オンタリオ州南部の約30の学校図書館から2年前に、約5千冊のコミック本、児童・青少年向けの小説、ノンフィクションの本がカナダ先住民に対する不適切な表現が含まれていたとして処分されていたことを発見した。
例えば、「タンタン」や「ラッキールーク」など、欧米で昔から子供達に人気のある漫画本や、文学賞の候補になった現代小説であっても、例えば先住民のように着こなす方法を説明しているとして、その文化の所有権を持つのは不適切であるがゆえに処分の対象となった。他にも、半裸の人物が登場したり、「アメリカンインディアン」という表現が出て来たりした場合、不適切だとして処分された。「人種差別、差別、固定観念の灰を埋めよう」と、数十冊の本が燃やされ、その灰が地面に埋められたこともあったという。
30校ほどの学校が集まって造られた委員会は、こうした処分を行うにあたって「知識の保護者」と称するアドバイザーを採用していた。しかし、いくつかの先住民族コミュニティの出身であるとして採用されたアドバイザーは、先住民族コミュニティでは誰からも知られておらず、系図学者も18世紀以降の先住民の祖先を見つけることができなかった。さらには、そのアドバイザーは、左派与党の「先住民委員会」の共同議長を務めていたことが発覚し、波紋が広がっていた。保守党のリーダーであるエリン・オトゥール氏は、先住民との「和解は、カナダを壊すことではない」とツイートしていた。
閉じる
その他の最新記事