ウクライナ戦争、世界最大の小麦輸入国エジプトが小麦不足の危機に(2022/03/16)
世界最大の小麦輸入国であり、その主な供給元はロシアとウクライナであったエジプトは、危機を背景に戦略的備蓄を強化し、穀物を含む食料品の輸出を停止した。
仏ラジオ放送局
『RFI』によると、エジプトは、国内の年間小麦消費量のほぼ半分、2千万トン近くを輸入に頼っている。この小麦は、主にパン、とりわけ補助金付きのパン「エーシュ・バラディ」の原料として使われる。実売価格の20分の1で売られている90グラムの薄焼きパンは、1億人のエジプト人の4分の3近くが食べていると言われている。
今のところ、州の貯蔵庫には4カ月分の備蓄がある。4月中旬に始まるエジプトの収穫のおかげでさらに4カ月は持つと推測されている。...
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仏ラジオ放送局
『RFI』によると、エジプトは、国内の年間小麦消費量のほぼ半分、2千万トン近くを輸入に頼っている。この小麦は、主にパン、とりわけ補助金付きのパン「エーシュ・バラディ」の原料として使われる。実売価格の20分の1で売られている90グラムの薄焼きパンは、1億人のエジプト人の4分の3近くが食べていると言われている。
今のところ、州の貯蔵庫には4カ月分の備蓄がある。4月中旬に始まるエジプトの収穫のおかげでさらに4カ月は持つと推測されている。しかし、小麦は発注から到着まで最低2カ月かかるため、ロシアやウクライナ産小麦の代替品を早く見つけなければならない。
このため、ルーマニア、フランス、アメリカ、オーストラリアなど、他の供給国にも入札を行い、供給不足に対応している。しかし、2度にわたって入札が中止された。1回目は1社だけ、2回目は2社のサプライヤーしか集まらず、ほとんど競争がなかったこともあり、価格が70%近くも上昇した。
もう一つの解決策として考えられているのは、二期作用の小麦の作付面積を増やすことである。これはすでに昨年から行われており、輸入小麦への依存度を下げることができた。しかし、輸入・国産を問わず小麦の価格が上昇することでパンの補助金が増し、赤字が悪化するという問題が常に付きまとう。
なお、ロシアとウクライナの戦争が始まる前に、補助金付き「エーシュ・バラディ」の重量を110グラムから90グラムに減らすことが決まっていた。また、パンの値段を上げるという話も出てきている。しかし、基本的な生活必需品や全般的な物価上昇により、政府はパンの値段を上げることを躊躇している。1977年1月には血まみれのパン暴動、2011年1月には「パン、自由、社会正義」をスローガンとした大規模な反政府デモが起こっている。
仏経済誌『ラ・トリビューヌ』は、人口の90%以上がイスラム教徒であるエジプトは、ラマダン(断食月)を控えていることを伝えている。4月上旬に始まるラマダンは、小麦消費量が多くなる時期であるため、当局はこの時期に麦が不足することは何としても避けるために動いているという。
3月5日にはルーマニア産小麦6万3千トン、8日にはフランス産小麦6万3千トンが到着し、18万9千トンのロシア、ルーマニア、ウクライナの小麦(同量)が「今後数日中に」エジプトの港に到着することが発表された。エジプト当局はその後、小麦の外部供給は一時停止し、国内生産に頼ることになる。当局は「今年末までは」必要量を賄えると見込んでいるという。
エジプト当局は12日、食料安全保障を強化するために小麦の戦略的在庫を強化することに加え、すべての種類の油、穀物(小麦、大麦、オート麦など)、トウモロコシ、豆、レンズ豆、パスタ、粉の輸出を3カ月間停止すると発表した。産業貿易相は、「この決定は、特にラマダンの消費量の多い時期に備えて、地元の商品市場のニーズをカバーするための政府の取り組みの一環として、供給・国内貿易省との調整の後に行われた」と説明している。
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「イカゲーム」のような韓国大統領選、フランスメディアの報道(2022/03/09)
今日、大統領選投票日を迎えた韓国。世論調査では、保守派のユン・ソクヨル氏が、進歩系左派のイ・ジェミョン氏よりわずかに優勢である。しかしフランスメディアは、韓国の有権者たちは、本質的な問題には触れることのなかった、誹謗中傷キャンペーンを中心に繰り広げられた選挙戦に悩まされた、と報じている。
仏誌
『レゼコー』は、韓国の大統領選挙は終了直前まで激しかったと伝えている。7日にソウルで行われた与党民主党による最後の遊説で、70歳の男が党の代表の頭をハンマーで殴った。幸い重傷は負わなかった。犯人は取り押さえられる前に反米のスローガンを叫んでいたという。
今回の大統領選は、候補者同士の罵倒合戦、汚職の告発、それぞれの妻にまつわる一連のスキャンダルなどが相次ぎ、有権者を幻滅させた。与党民主党の大統領候補の妻は夫の会社のクレジットカードを悪用したことが報じられ、野党大統領候補者の妻は、霊能者に相談していた過去が報じられた。...
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仏誌
『レゼコー』は、韓国の大統領選挙は終了直前まで激しかったと伝えている。7日にソウルで行われた与党民主党による最後の遊説で、70歳の男が党の代表の頭をハンマーで殴った。幸い重傷は負わなかった。犯人は取り押さえられる前に反米のスローガンを叫んでいたという。
今回の大統領選は、候補者同士の罵倒合戦、汚職の告発、それぞれの妻にまつわる一連のスキャンダルなどが相次ぎ、有権者を幻滅させた。与党民主党の大統領候補の妻は夫の会社のクレジットカードを悪用したことが報じられ、野党大統領候補者の妻は、霊能者に相談していた過去が報じられた。
『レゼコー』は、脆弱な景気回復、若者の絶望を招いている不動産価格の高騰、北朝鮮との緊張関係など、根本的な問題についての議論はほとんど行われなかったと伝えている。ソーシャルネットワーク上では、一部のネットユーザーが、人々が何としても一攫千金を得るために死闘を繰り広げる韓国のテレビドラマ「イカゲーム」にちなんで、「イカゲーム選挙」と揶揄しているという。
仏ラジオ放送局『RFI』は、「イ・ジェミョン、ユン・ソクヨル両候補の選挙戦は、本人や妻にまつわるスキャンダルに彩られていた。これが、最高権力者の主要な候補者たちの唯一の共通点であろう。」と報じている。
ただし、北朝鮮に対しては、双方が真逆の政策を提案している。左派のイ・ジェミョン氏は、現政権が北朝鮮との対話に意欲的であったその姿勢を継続し、非核化と引き換えに制裁の軽減、また対話の道を追求する方針を明らかにしている。一方、保守のユン・ソクヨル氏は、北朝鮮からの攻撃の危険が差し迫った場合の「予防攻撃」に賛成しており、「断絶」の声を代表している。「力」と「抑止力」によって平和を実現したいと述べている。
北朝鮮だけでなく韓国の主要な経済パートナーである中国に対しても、両陣営は正反対の政策を掲げている。約3万人の兵士を駐留させ、韓国の安全を保証している米国に対して、ユン・ソクヨル氏は、米国との関係改善を望んでいる。一方イ・ジェミョン氏は、中国との友好関係の継続を推奨している。経済関係の発展を継続させるためだけでなく、北朝鮮問題で中国政府から前向きな介入を得ることを願っているためだ。
韓国は、欧米に比べてパンデミックによる死亡者数をうまく抑えることができた反面、国民が規制の影響を受けている。特に、労働者の4分の1を占める自営業者は大きな犠牲を強いられた。レストランやカフェの多くは、感染防止対策で活動が制限され、閉店を余儀なくされた。それに加えて、不動産価格が爆発的に上昇した。ソウルでは、100平方メートルのアパートの価格が5年間でほぼ2倍に跳ね上がった。この問題は、多くの韓国国民にとって繊細な問題であり、候補者たちが衝突している問題でもある。イ・ジェミョン氏は、消費活性化のため、社会住宅建設と最弱者への基本所得の導入を訴えている。しかし、ユン・ソクヨル氏は住宅戸数を増やすことには賛成でありながら、不動産にかかる税金を減らして価格を下げたいと考えている。
今回の選挙戦では、フェミニズム運動に対する姿勢も問われている。韓国の若者のフェミニズム思想への著しい反発(2018年の国民日報の調査によると、20代男性の76%がフェミニズムに反対と回答)に後押しされ、ユン・ソクヨル氏はこの省庁の廃止を望んでいる。ユン氏は、韓国がOECD加盟国で最低の出生率であることの一因としてフェミニズムをあげており、性的暴行の中傷証言に対する罰則を強化することを提案している。これに対して民主党のイ・ジェミョン氏は、性暴力反対集会に参加するなどしてきたものの、フェミニストを支持する姿勢はあまり出してこなかったため、活動家たちの懸念の的となっている。
ここ数日の世論調査では、どちらの候補者を選ぶかという質問に対して、「どちらともいえない」という回答が異常に多いことが指摘されており、両候補者は拮抗している。成均館大学の政治学者、イ・スクジョン氏は「極めて異例な雰囲気の選挙戦だ」と指摘している。政治アナリストのパク・スンミン氏は「希望をもたらすような選挙ではない大統領選は初めてであり、憂鬱な有権者による投票になる」と述べている。
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