パラリンピック東京大会が昨日終了し、閉会式では3年後のパリ大会にバトンが渡された。フランスは、パラリンピック選手を身近に感じてもらうパリ大会を目指しているが、3年後の大会を準備する上でどのような課題を抱えているのだろうか。
仏
『ブルソラマ』によると、パリ2024組織委員会事務総長のエチエンヌ・トボワ氏は、パリ大会は「一般の人々に、パラリンピック選手を身近に感じてもらう大会、障害者のスポーツ競技に対する認知度を高める大会」になることを目標としていると述べた。そして、2024年に向けて、フランスが主要なスポーツ、文化イベントへのアクセスのしやすさの新たな世界基準を開発していることを誇りに思っていると語った。なお、東京大会に関しては、「素晴らしい大会であった」と高く評価したものの、「1つだけ欠けていたのは観客だった。パリ大会では、満員の観客席の前でアスリートたちが戦えることが出来ればと願っている。」と述べた。
仏『フランスアンフォ』は、2024年にパラリンピックを迎えるフランスの首都パリにとって、一般市民の「人気を集める祭典として成功させること」が最も重要な目標だと報じている。もう一つの課題は、インフラだという。選手村とアクアティクスセンターが建設中だが、「アクセスのしやすさが模範的であることが求められている中、地下鉄の整備が遅れている」点をあげている。
一方スポーツの面では、スポーツクラブがパラスポーツにより開放されることと、より多くのトレーナーを育成する必要性があるという。さらには、競技人口を増やすために、本格的な競技生活を目指す障害者を発掘していく必要性が指摘されている。
仏ラジオ局『RFI』によると、2016年より障害者スポーツ連盟の技術・スポーツアドバイザーとして卓球を担当しているステファン・ルロン氏は、2016年のリオ大会のメディア報道によって、障害を持つ若者たちがパラリンピック競技に興味を示すようになり、スポーツを始めたと述べている。こうした若者たちが、2028年のロサンゼルス、2032年のブリスベンで活躍することになると指摘している。ルロン氏によると、パラ卓球でも、選手になるまで約10年かかるという。
一方、パリ大会まであと3年となった今、一部の種目では新しい選手がほとんどいないことが懸念されているという。例えば、パラバドミントンは、フランスの選手は200人しかいない。東京大会は大きな反響を呼ぶことができたため、将来のメダリストとなるような若者がパラスポーツを始めることがさらに期待されている。
仏『LCI』によると、2024年パリ大会の組織委員会のエスタンゲ会長は、これからの3年間で、公共交通機関や施設、市民、様々な連盟やアスリートを味方につけて、意識を変えていくことが今後の課題であると述べている。そのためにも、目標が必要だという。東京パラリンピックで金メダル11個を含む54個のメダルを獲得したフランスは、この17年間で最も良い結果を出しており、2024年は60個のメダルを目指す。
閉じる
ドイツでは、任期満了に伴う連邦議会選挙が4週間後に行われる。最新の世論調査によると、何ヶ月も前から負けを予測されていた社会民主党が支持率トップに躍り出てきている。一方、16年間ドイツを率いてきたアンゲラ・メルケル首相が所属するキリスト教民主党は支持率獲得に苦戦している。
仏
『RFI』によると、緑の党が当初リードしていたものの、後退し、与党であるキリスト教民主党も、メルケルに代わり新しい党首となるアルミン・ラシェットが説得力に欠け、最下位となっている。代わりに社会民主党がトップに躍り出てきた。社会民主党党首で現財務大臣であるオーラフ・ショルツ氏は、住宅、年金、最低賃金の引き上げなどの社会的側面を強調した選挙キャンペーンを繰り広げている。「就任1年目に1千万人の賃上げと、最低賃金を時給12ユーロ(約1500円)に引き上げることを誓う」と主張している。
米『CNBC』は、ドイツの次期選挙は、今まで以上に予測不可能になっていると伝えている。最新の世論調査によると、社会民主党(SPD)の支持率は23%に上昇した。一方、与党で保守連合のキリスト教民主・社会同盟の支持率は30%台から22%に低下した。社会民主党がキリスト教民主・社会同盟を上回ったのは15年ぶりのこととなる。
コンサルティング会社Teneoのリサーチ部門の副部長であるカールステン・ニッケル氏は、「投資家は、まず、ショルツが中道左派の社会民主党の中では、保守寄りの中道派であることを公言していることを念頭に置く必要があります。社会民主党はキリスト教民主・社会同盟よりも、グリーンエネルギーへの転換やデジタル化、さらには健康や住宅といった分野への投資に積極的です。しかし、健全な財政から逸脱することは、ショルツの選択肢には入っていません。」と述べている。
米『ナショナル・インテレスト』は、ドイツの歴史の中で、保守系与党であるキリスト教民主同盟にとって、世論調査の結果がこれほど悪かったことはないと報じている。2020年4月の時点では、38%の支持率で世論調査をリードしていた。現在は21~24%にまで落ち込んでいる。人気が低下している理由の1つは、非常に弱い首相候補を擁していることだ。現在、ドイツで最も人口の多い州の首相であるアルミン・ラシェットは、これまでのところ、党内と有権者の両方にインパクトを与えることができていない。
一方、社会民主党は近年、ますます極左に傾いているという。党ではザスキア・エスケンとノルベルト・ヴァルター=ボルヤンスを共同党首に、ケビン・キューネルトを副党首に選出した。この3名はいずれも、極端な左翼的な立場をとっている政治家である。社会民主党の党員たちは、党首を選ぶ際に、これらの極左候補を支持し、オーラフ・ショルツを退けた。それにもかかわらず、なぜ「中道派」のショルツを首相候補にしたのか。『ナショナル・インテレスト』は、米国で民主党が中道派のバイデンを大統領候補に選んだのと同じ理由であると主張している。ショルツを使って、穏健派の有権者を動員する狙いがあるという。
現在、有力な世論調査では、社会民主党、緑の党、そして左翼のダイリンケの連立が有力視されているという。ほんの数年前まで、社会民主党は連邦レベルでのダイリンケとの連立を否定していた。それは、ダイリンケが、東ドイツを統治していた旧共産主義政党ドイツ社会主義統一党が名前を変えただけの強硬左派政党だからである。国有化、最高税率75%、NATOからの脱退などの大規模なプログラムを掲げている。数ヶ月前まで、新党首のジャニン・ヴィスラーは、過激なトロツキストグループのメンバーでもあった。
ドイツの首都ベルリンは、すでに社会民主党、緑の党、そしてダイリンケの連立政権となっている。緑の党とダイリンケは、市内に3千戸以上の賃貸アパートを所有する住宅会社の所有権を取り上げる運動を支持している。そして3党はいずれも、1997年にドイツで廃止された富裕税の再導入を目指している。
『ナショナル・インテレスト』は、この3つの政党による連立政権が誕生するならば、ドイツは大きく変わるだろうと伝えている。ドイツの防衛費は他のNATO加盟国に比べてすでに低いにもかかわらず、更なる防衛費を削減することを約束している。メルケル首相がすでに始めているドイツ市場経済の計画経済への転換は、この3党によって大幅に加速されることが予測できる。3党がすでに政権を握っている首都ベルリンでは例えば、家主に既存の賃貸物件の賃料を大幅に引き下げることを強要する法律を可決した。この法律は、一部の不動産所有者の所有権の募集に他ならない。ドイツの最高裁判所はこの法律を違憲としたが、社会民主党とダイリンケは、ドイツ全体に適用される同様の法律の導入を目指している。
さらにベルリンでは、政治的な自由、特にデモをする権利が強い圧力にさらされている。左翼的なデモはほぼ認められているが、例えば政府のコロナウイルス対策を批判するデモは禁止され、警察が力を持って解散させている。3党の連立政権が誕生した場合、ベルリンで起きていることが、ドイツ全体に広がることが予見できる。9月26日の投票結果次第では、今後何年にもわたってドイツの政治的状況を根本的に変える選挙になるかもしれない。
閉じる