米国陪審員、黒人射殺の警官にまたも無罪評決<米・英・フランス・台湾メディア>(2017/06/18)
米中西部ミネソタ州の裁判所の陪審員(注後記)が、昨年7月の黒人男性の射殺事件で、過失致死罪などに問われた警官に無罪の評決を下した。射殺された男性が、路上で職務質問された際、免許証を取り出そうとポケットに手を入れた途端、警官に射殺されたもので、無罪評決に怒った人たち2,000人余りが、同裁判所前及び市街で抗議行動を起こしただけでなく、米国の裁判のあり方に疑問を抱く報道が、米国以外のメディアでも大きく報じられている。
6月17日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏を射殺した警官の無罪評決に抗議したニューヨーク市民200人余りがデモ」
ミネソタ州の裁判所で、黒人のフィランド・キャスティール氏を射殺した警官に対して無罪評決が下されたことに抗議して、ニューヨーク市民200人以上が6月17日、目抜き通りをデモ行進した。
デモ隊は、“不公正な評決は公正であるべき裁判制度の脅威”等のプラカードを持って、無抵抗な黒人を射殺した警官の無罪評決を非難した。...
全部読む
6月17日付米
『ニューヨーク・デイリィ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏を射殺した警官の無罪評決に抗議したニューヨーク市民200人余りがデモ」
ミネソタ州の裁判所で、黒人のフィランド・キャスティール氏を射殺した警官に対して無罪評決が下されたことに抗議して、ニューヨーク市民200人以上が6月17日、目抜き通りをデモ行進した。
デモ隊は、“不公正な評決は公正であるべき裁判制度の脅威”等のプラカードを持って、無抵抗な黒人を射殺した警官の無罪評決を非難した。
犠牲となったキャスティール氏(32歳)は同州セントポール市街で昨年7月、乗っていた車のライトが破損していたことから警官の職務質問を受けたが、同氏が銃保有許可証を持っていることを告げてポケットに手を入れたところ、立ち会った警官ジェロニモ・ヤネズ被告にいきなり射殺されたもの。
同乗していたキャスティール氏のガールフレンドが、その時の模様を映した動画をフェイスブックに投稿したことから、全米で非難抗議が起こっていた。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『AP通信』配信):「キャスティール氏射殺事件の無罪評決を受けて、黒人の銃許可証保有者が困惑」
無抵抗のキャスティール氏が、自発的に銃許可証保有について警官に申告したところ、過剰反応した警官に射殺されてしまった事件について、ミネソタ州の裁判所が、同警官に無罪評決を下したことから、黒人の銃許可証保有者の多くが困惑している。
すなわち、法的に有効な銃保有について、それを申告しただけで銃殺されてしまう恐れがあり、なおかつ、パトロールカーのビデオに、キャスティール氏が申告した後、“銃は取り出さない”とはっきり申し立てている声が記録されているのに、いきなり発砲し、射殺した警官が罪に問われないという現実に直面したからである。
なお、米国で発生した警官による殺人事件のほとんどが不起訴処分となっている。
・2014年7月ニューヨーク:黒人のエリック・ガーナー氏が、大麻販売容疑で逮捕された際、取り締った警官らの暴行を受けて死亡。警官らは不起訴。
・2014年8月ファーガソン(ミズーリ州):黒人青年マイケル・ブラウン君(18歳)が、職務質問した白人警官ダレン・ウィルソン容疑者に射殺されたが、同容疑者は不起訴。
・2014年11月クリーブランド(オハイオ州):黒人のタミール・ライス君(12歳)がモデルガンを持っていたところ、通報で駆け付けた白人警官ティモシー・ロウマン容疑者らに射殺されたが、同容疑者らは不起訴。なお、同市は遺族からの損害賠償請求訴訟に対して、600万ドル(約6億6,000万円)の補償で和解している。
・2015年8月チャールストン(サウスカロライナ州):車の停止を命じられた黒人のウォルター・スコット氏が、信号を無視して逃走しようとしたとして、白人警官マイケル・スレージャー容疑者によって射殺された事件で、同容疑者が虚偽の申告をしていたことが、事件を撮影していた目撃者の携帯動画から判明したことから、同容疑者は起訴され、目下量刑宣告待ち。軽ければ執行猶予付き判決、最も重い場合終身刑が下される。
同日付フランス
『ユーロ・ニュース』:「フィランド・キャスティール氏の母、“この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫び」
無抵抗の息子を殺された、故フィランド・キャスティール氏の母親のバレリー・キャスティールさんは6月16日、警官ジェロニモ・ヤネズ容疑者に対して不起訴処分の評決を下した裁判所の前で、“今は地獄に落ちたような気持ち。この国の黒人に対する裁判制度は瓦解している”と悲痛の叫びを上げた。
陪審団は男性7人、女性5人で構成され、うち白人が10人、黒人が2人であった。ヤネズ容疑者の弁護人は評決を評価したが、セントポールのクリス・コールマン市長は、6月16、17、19日に市内で市民との対話集会を開くと発表した。また、ミネソタ州のマーク・デイトン知事は、故人及び遺族に哀悼の意を捧げるとコメントした。
6月18日付台湾
『台北タイムズ』紙(
『ロイター通信』配信):「キャスティール氏射殺の警官が不起訴」
陪審団は5日間、のべ25時間以上の評議を重ねた上で、ヤネズ容疑者を不起訴とする評決を下した。同容疑者のアール・グレイ弁護人は同評決を評価するとのコメントを発表したが、同容疑者が所属する警察署を管轄するセントアンソニー市は、同容疑者には警官に戻らず、“自発的に辞職する”よう説得するとしている。
なお、不起訴処分に抗議する市民が2,000人以上、同裁判所及び市街でデモ行進を行ったが、警察署の規制もあって、暴動に発展することなく静かに行われた。
(注)陪審員:米英などで採用されている、裁判手続きにおける陪審制度の下、一定の基準と手続きにより一般市民の中から選ばれ、その審判に立ち会う人。陪審員の人数は6~12名である場合が多く、その合議体を「陪審」という。陪審は、刑事事件では原則として被告人の有罪・無罪について、民事事件では被告の責任の有無や損害賠償額等について判断する。
閉じる
台湾総統が米国高官と会談、中国は抗議(2017/01/10)
台湾の蔡英文総統は、中米訪問の経由地米国テキサス州ヒューストンで、予備選挙で敗退した後トランプ次期大統領を承認した同州のテッド・クルーズ上院議員やグレッグ・アボット州知事と面会した。これに対し事前に、また会談後に「一つの中国」を主張する中国は米中関係を損なう行為だとして抗議している。中国は蔡氏が昨年12月にトランプ氏と電話会談した際も米国に抗議していた。
クルーズ氏とは武器売却や経済関係の強化について会談、アボット知事とは農業やガス貿易を話しあったという。クルーズ氏は「米国では訪問者との面会は自分たちで決定する。この会談に中国は関係ない」とし、中国側の動きを牽制。蔡氏の帰路サンフランシスコでも次期政権の幹部と面会する可能性もあるという。
1月10日付
『ヤフーニューズ』は「テッドクルーズとテキサス州知事が台湾総統と会談、タブーのギフトを贈る」との見出しで以下のように報道している。
日曜に台湾葵総統が渡米しクルーズ上院議員とグレッグ・アボット知事と会談したことを月曜、中国は「断固反対」と表明した。葵氏はクルーズ氏との会談では武器販売、外交、経済関係を、アボット氏とは、より具体的な農業やガスの貿易について話し合ったという。
アボット知事はテキサスの州紋が入った置時計を贈ったが、これは文化的にタブーなギフトだった。...
全部読む
1月10日付
『ヤフーニューズ』は「テッドクルーズとテキサス州知事が台湾総統と会談、タブーのギフトを贈る」との見出しで以下のように報道している。
日曜に台湾葵総統が渡米しクルーズ上院議員とグレッグ・アボット知事と会談したことを月曜、中国は「断固反対」と表明した。葵氏はクルーズ氏との会談では武器販売、外交、経済関係を、アボット氏とは、より具体的な農業やガスの貿易について話し合ったという。
アボット知事はテキサスの州紋が入った置時計を贈ったが、これは文化的にタブーなギフトだった。中国(北京)語では「時計を贈る」は「葬式に出る」に似ているため、時計を贈ることはタブーとなっている。一昨年英国大使は台湾の市長にポケットサイズの時計を贈り、市長は迷信は信じない主義だと言いいながらもリサイクルに出すだろうと冗談を言ったという。英国では腕時計は「時は金なり」という理由で貴重なものとされる。しかし今回、迷信は信じないのか米国との良好関係を保とうとしたのか、葵氏は失言はしなかった、
中国のけん制に対し、クルーズ氏は葵氏との会談は台湾を公式に擁護するためでない、とし、会談相手に関して中国が口をはさむ権利はないとした。なぜテキサスでトランプ氏に強烈に批判されていたクルーズ氏との会談だったのか、台湾との関係に変化があるとすれば、国レベルなのかテキサス州としてなのかという点に疑問が残る。
同日付中国
『新浪(sina)』は「米高官の葵氏との会談は挑発の表れ、分析結果」との見出しで次のように報道している。
中国は米高官と葵氏の会談に断固反対であると表明。葵氏は中南米への経由地、ヒューストンでクルーズ氏と会談、テキサス州のアボット知事とも会談した。
外交部ルカン報道官は定例会見で、もっともらしい口実での会談と米中関係を損なう行為に断固反対する、と述べ、また、米国に対し中国一国主義に従い台湾との関係問題については「慎重な配慮をもって対処する」よう要請した。
米高官は米国政治の有力者ではないが、トランプ次期大統領就任直前のこの時期の会談は強いメッセージとなる。テキサスよりもカリフォルニアがより重要であり、葵氏がサンフランシスコで誰か高官に会うのではないかとの観測もある。
アモイ大学台湾研究所研究員は、軍事的解決は得策でなく、中国本土は台湾に経済的苦痛を与える必要があるという意見もある。
同日付台湾
『台北タイムズ』は「葵がホンジュラスで歓迎」との見出しで次のように報道している。
葵総統は、中南米への初渡航とし75年の外交関係のあるホンジュラスの空港に到着、副大統領から大歓迎を受けた。今後ニカラグア、グアテマラ、エルサルバドルも訪問予定。葵氏は米国テキサスでテッドクルーズ上院議員とグレッグアボット知事とも面会した。
台湾はテキサス州にとってアジアで第5位の貿易相手。フォルモサプラスチック、ホンハイ精密工業、インベンテッック、長栄などの企業グループが米国へ100億ドルの投資をしている。テキサス州は、エネルギー、バイオテクノロジー、軍事分野が発展しており、葵氏は台湾との協力を呼びかけた。アボット知事は「台湾企業による投資は、テキサスのビジネス環境の改善や規制の緩和を受けて拡大してきた。今後も台湾との関係を深めたい」と述べた。
予備選での敗退後トランプ次期大統領を承認したクルーズ共和党議員は、トランプ氏と葵氏の電話会談を公的に支持表明しており、「米国では訪問者との面会は自分たちで決定する。この会談に中国は関係ない、合法な台湾と米国の関係」だと述べた。
閉じる
その他の最新記事