北朝鮮は、3月初めの国連安全保障理事会追加制裁決議採択以降、6千発余り在庫を保有するという短距離ミサイルを何発も発射し、抵抗を示している。そして、米韓による最大規模の軍事演習に対しては、核弾頭の軽量化に成功したとしていつでも核兵器を使用できると、無謀な威嚇発言を繰り返している。これに対して中国は、追加制裁決議に賛成したものの、北朝鮮体制を崩壊させるような徹底した制裁行動は控えるよう訴えていたが、度重なる北朝鮮の挑発行為に対して、果たして中国はどう対応しようとするのか。
3月21日付米
『AP通信』の報道記事「北朝鮮、5発の短距離ミサイルを発射」:
「・北朝鮮は3月21日午後、短距離ミサイル5発を発射。
・飛行距離は約125マイル(約200キロメーター)で同国東沖に落下(編注;ソウル発AP電のため、韓国に配慮してか“日本海”という名称を不使用)。
・北朝鮮は3月18日、国連決議に反して中距離ミサイルを発射しているが、続けての蛮行は、目下進められている米韓合同軍事演習に反発してのもの。...
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3月21日付米
『AP通信』の報道記事「北朝鮮、5発の短距離ミサイルを発射」:
「・北朝鮮は3月21日午後、短距離ミサイル5発を発射。
・飛行距離は約125マイル(約200キロメーター)で同国東沖に落下(編注;ソウル発AP電のため、韓国に配慮してか“日本海”という名称を不使用)。
・北朝鮮は3月18日、国連決議に反して中距離ミサイルを発射しているが、続けての蛮行は、目下進められている米韓合同軍事演習に反発してのもの。」
3月22日付韓国
『ザ・コリアン・ヘラルド』紙の報道記事「中国、北朝鮮に国連決議に従うよう警告」:
「・中国外交部(省に相当)の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は定例記者会見で、北朝鮮が数日前の2発の中距離ミサイル発射に続き、3月21日に数発の短距離ミサイルを再び発射したことから、“北朝鮮は国連決議に違反するような如何なる行動も慎むべき”と警告。
・一方、同報道官は同時に、全ての関係国に対し冷静に対応するよう要求。」
同日付北朝鮮
『北朝鮮時報』の報道記事「北朝鮮リーダー、大口径複合ロケット発射準備を示唆」:
「・北朝鮮国営
『朝鮮中央通信』は3月22日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第一書記が、新型の大口径複合ロケットの発射準備にかかるよう指示と報道。
・金氏は、朝鮮半島の南からの進軍を撃退する上で、ロケット発射体制を整えることは朝鮮人民軍の戦力増強となり、戦略上とても重要と発言。」
一方、同日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の報道記事「国連の北朝鮮制裁決議対象の船舶リストから4船削除」:
「・国連安保理は3月21日、中国側から出されていた、北朝鮮制裁決議対象の31船舶(北朝鮮オーシャン・マリタイム・マネジメント社保有)のうち、4船をはずすとの提案に合意。
・中国の劉結一(リウ・チェイイ)国連大使は、当該4船は北朝鮮関与の船舶でないことが判明したので、事務手続きの誤りを是正するだけのことと説明。」
なお、目下のところ中国メディアは報じていないが、本邦大手メディアの調査によると、3
月11日付
Globali「北朝鮮、やはり強硬姿勢(2)」の中でも触れたとおり、中国による北
朝鮮船の入港禁止措置が拡大しているという。3月初め、遼寧省営口港が、北朝鮮の主力輸
出品の石炭を積んできた北朝鮮の全船舶の入港を禁止したのに続き、天津市、山東省の日
照港・蓬莱港・濰坊港、及び江蘇省の南通港の計5港においても、同様の措置を講ずるこ
とになったとする。
今月2日に国連安保理の追加制裁決議によって、北朝鮮からの石炭や鉄鉱石などの鉱物資
源の輸出入が原則禁止されたが、核・弾道ミサイル開発に関係しない場合などは対象外と
されていたため、暫くの間は石炭を積んだ北朝鮮船が営口港などに入港できていた。
しかし、同決議採択後も挑発的な言動を繰り返す北朝鮮に自制を促すため、中国としても
毅然とした対応を取らざるを得なくなったものと推測される。
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3月9日付米
『ワシントン・ポスト』紙の報道記事「北朝鮮、直近の抗議として弾道ミサイル発射」:
「・国連の追加制裁決議への抗議措置として北朝鮮は3月10日朝、
日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射。
・発射場所は平壌(ピョンヤン)南部の黄海北道(ファンへ・プクド)で、飛行距離は約300マイル(約500キロメーター)。
・日本政府は同日午前、国連安全保障理事会の決議違反に当るとして、北京の大使館を通じて北朝鮮側に抗議。」
3月10日付米
『CNBCニュース』(
『ロイター通信』記事引用)の報道「韓国、北朝鮮が短
距離ミサイルを発射したと発表」:
「・北朝鮮は、短距離ミサイルの在庫は豊富にあり、現在は、長距離及び大陸間弾道ミサイルを開発中。
・金正恩(キム・ジョンウン)第一書記は3月9日、核弾頭の軽量化を実現したと発表。
・米韓両国は今週、最大規模の合同軍事演習を開始したが、北朝鮮側は、核戦争につながる動きで、全面的に対抗すると表明。」
同日付英
『ザ・テレグラフ』紙の報道記事「北朝鮮、短距離ミサイル発射に加え、(北朝鮮
内の)韓国資産を没収」:
「・北朝鮮は、米韓による最大規模の合同軍事演習に抗議して、短距離ミサイルを発射。
・また、韓国との全ての合意事項を破棄し、北朝鮮内にある韓国資産全てを没収と宣言。
・韓国国防部(省に相当)は、北朝鮮が核弾頭の軽量化を実現したとの発表は懐疑的と表明。」
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュースの報道記事「北
朝鮮、韓国との経済協定を破棄」:
「・北朝鮮が、韓国との全ての経済協定を破棄するとしたことは、北朝鮮内の韓国の全資産、資金が没収されることを意味。」
同日付中国
『シナ(新浪)英字ニュース』(
『新華社通信』記事引用)の報道記事「北朝鮮、
東海に向けて2発の短距離ミサイル発射」:
「・韓国軍は、北朝鮮が
東海(編注;韓国が主張する、日本海の変更名称)に向けて北朝鮮が短距離ミサイルを発射したと発表。」
同日付中国
『人民日報』の報道記事「金第一書記、北朝鮮が核弾頭の軽量化を実現と公表」:
「・金第一書記は3月9日、核装備開発の結果、核弾頭の軽量化に成功したと発表。
・北朝鮮の過激な動きは、米韓両軍の大規模軍事演習開始を受けて活発化。
・中国の王毅(ワン・イー)外交部長は、3月9日に米国ジョン・ケリー国務長官と電話会談した後、如何なる国も挑発を止め、これ以上緊張を高めないよう努めるべきと表明。
・外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は、中国はあくまで朝鮮半島の非核化方針であり、この実現のため関係国の協議によって解決するよう主張。」
一方、同日付韓国
『KBSニュース』の報道記事「香港、北朝鮮関与の制裁対象本船の入港
拒否」:
「・北朝鮮情勢に詳しい中国関係者の3月10日の情報によると、国連安保理決議第2270号が制裁対象とした、北朝鮮関与の本船“ゴールド・スター3号”が3月9日昼に香港に入港しようとしたところ、香港政府がこれを拒否。
・同制裁によると、北朝鮮のオーシャン・マリタイム・マネジメント社が運航に関与している31隻の船舶が資産凍結の対象。
・本船“ゴールド・スター3号”はカンボジア船籍となっているが、当該31隻のうちの1隻。」
また、同日付北朝鮮
『北朝鮮時報』の報道記事「米国、B-2爆撃機をアジア太平洋に配備」:
「・米国戦略軍司令官は3月9日、B-2ステルス爆撃機をアジア太平洋地域に配備したと発表。
・B-2爆撃機は、核攻撃を加えることを目的に開発された戦略爆撃機。」
なお、中朝貿易関係者の話によると、3月2日採択の国連安保理の制裁決議の対象となった
北朝鮮の船舶が、中国の複数の港湾当局から入港を拒否されているという。中国は、北朝
鮮の最大の貿易相手国であるが、漸く重い腰を上げて、制裁決議を厳密に履行しようとし
ていると考えられる。
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