中国の電気自動車普及は日本以上に困難?【中国メディア】(2017/08/17)
昨年の世界の新車販売台数は8,424万台であった。うち、トップの中国が2,553万台と約30%を占め、以下米国1,755万台(約21%)、欧州連合(EU)1,708万台(約20%)、日本490万台(約6%)と続く。また、燃料別内訳はガソリン車約70%、ディーゼル車約20%であり、新エネルギー車(電気、プラグイン・ハイブリッド、燃料電池車)はまだ僅か3%である。そこで、環境対策を強化する一環で、今年になってフランスと英国が、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止措置を決定している。販売台数世界一を誇る中国は、新エネルギー車購買者への補助金政策を2020年まで延長することを決めて後押ししているが、中国人ドライバーにとっては、そう簡単にいかない中国ならではの事情がある模様である。
8月15日付
『中国新聞』オンラインニュース:「中国の電気自動車普及への陰」
スウェーデンのボルボは2019年以降、電気自動車(EV)等の新エネルギー車のみの生産に切り替えるとの計画を発表した。フランスと英国が、2040年以降、ガソリン車及びディーゼル車を販売禁止とする決定をしたことが背景にある。
世界一の自動車販売台数を誇る中国においても、絶対数はまだ少ないが、新エネルギー車の販売増が力強い。...
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8月15日付
『中国新聞』オンラインニュース:「中国の電気自動車普及への陰」
スウェーデンのボルボは2019年以降、電気自動車(EV)等の新エネルギー車のみの生産に切り替えるとの計画を発表した。フランスと英国が、2040年以降、ガソリン車及びディーゼル車を販売禁止とする決定をしたことが背景にある。
世界一の自動車販売台数を誇る中国においても、絶対数はまだ少ないが、新エネルギー車の販売増が力強い。2016年のEV及びプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の販売台数は50万7,000台と、前年比+53%増である(編注;全新車中2%弱)。
ただ、中国における新エネルギー車の普及には、次のような追い風・逆風がある。
<追い風>
・新規購入者への補助金政策が2020年まで延長。EVで最大40%(8万人民元、1万2千ドル、130万円)近い還付が期待できる。
・北京などの大都市で採用されている、ガソリン車購入者にとって不利となる“ナンバープレート給付制限”が適用されない。
・北京市内に進入可能なガソリン車は、日によってナンバープレートの末尾(偶数か奇数)で制限されるが、この適用も受けない。
<逆風>
・未だ一度の充電での走行距離に限りがある。
・補助金をもらってもまだ販売価格は高額。
・大都会でも充電設備がまだ少なく、渋滞によって動けなくなるリスク。
・都会の中の充電設備も、有料駐車場内に設置されているため、駐車場代が余計にかかる。
・駐車場内において、ガソリン車の所有者が、充電用に割り当てているEV専用スペースを占拠していることが日常茶飯事。
・田舎には充電設備が全くないため、遠出は不可能。
・PHEV所有者も北京市内では充電に不便さを抱える。EVメーカーが地元電力会社と共同で、PHEV所有者の住居に充電用ポールを無料で設置するサービスを行っている。しかし、同市内のほとんどの車所有者は専用駐車場を持てずに路上駐車しているため、自宅から非常に長い充電コードを使って、当該充電用ポールに接続させる必要がある。
・99%近くを占めるガソリン車(編注;1億9,000万台余り)の所有者が、“ナンバープレート給付制限”や“ナンバーによる市内進入制限”を受けないEVへの優遇制に猛反発しており、当局側としても、EV購入者への補助金制度とともに、優遇制撤廃あるいは制限に動く可能性がある。
従って、EVの販売台数は急増していくとしても、自動車全体における割合が大きく伸びるかはまだ予断を許さない。
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南シナ海仲裁裁定から1年、中国による裁定無効化が実現?【米・英・ロシア・フィリピン・中国メディア】(2017/07/14)
常設仲裁裁判所(PCA)が、南シナ海における中国主張を全面的に退ける裁定を下してから、7月12日で1年が経過した。中国は当初より、一方的な仲裁裁定は無効であると強く宣言し、また、国際世論の反対を鎮めるため、東南アジア関係各国との対話による問題解決のポーズを前面に押し出していた。実際には、中国自身の理屈付けで人工島建設継続はおろか、軍事拠点化を見据えての種々の恒久施設を同島に建設している。また、周辺関係国との対話を継続するに当り、大規模経済援助をちらつかせ、中国主導の話に黙って続くよう迫ってきている。従って、PCA裁定で勝訴したフィリピンも、政権が代わったこともあって、もはやPCA裁定は絵空事になりつつあるとみられる。
7月12日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「南シナ海:フィリピンは中国主張を退けたPCA裁定を有効に活用している?」
南シナ海領有権問題で、中国主張を全面的に退けたPCA裁定が下ってから1年が経つに当り、フィリピン大統領府のアーネスト・アベーラ報道官は7月11日、(ロドリゴ・ドゥテルテ大統領方針に沿って)現在中国と対話を継続している、と語った。しかし、PCA裁定で勝訴したフィリピンは、この1年間で同裁定結果を有効に活用していないことは明白である。...
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7月12日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「南シナ海:フィリピンは中国主張を退けたPCA裁定を有効に活用している?」
南シナ海領有権問題で、中国主張を全面的に退けたPCA裁定が下ってから1年が経つに当り、フィリピン大統領府のアーネスト・アベーラ報道官は7月11日、(ロドリゴ・ドゥテルテ大統領方針に沿って)現在中国と対話を継続している、と語った。しかし、PCA裁定で勝訴したフィリピンは、この1年間で同裁定結果を有効に活用していないことは明白である。
既報どおり、米シンクタンクの6月報道では、中国は南シナ海での海洋活動を更に進めていて、ファイアリー・クロス礁・ミスチーフ礁・スビ礁上に築いた人工島に、軍事拠点化を可能とする恒久施設を建設している。この結果、フィリピン初め同海域の領有権を主張する周辺国にとって、中国側の軍事的圧力は益々頑強なものとなっている。
しかし、アキノ前政権下で外相としてPCA仲裁裁定を進めたデル・ロサリオ氏が、中国は裁定を無視して、南シナ海での軍事化と違法行為を続けている、と強くアピールしても、同盟国米国と距離を置き、逆に親中路線をひた走っているドゥテルテ大統領の下では、PCA裁定を有効活用する余地は全くないと言える。
更に、同大統領は、訪中した際に中国首脳から、もしフィリピンが同海域で勝手に石油探査活動を始めたら、中国と戦争になると覚悟するよう脅されてしまっている。
ただ、デル・ロサリオ氏ら反対派としては、目下東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が、南シナ海行動規範(COC)の締結に向けて協議していること、更に、フィリピンが今年のASEAN首脳会議の議長国となっていることから、中国の活動を制限するCOCの締結に期待している。
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「フィリピン、中国との貿易拡大のため中国との衝突は望まず」
PCA裁定から一周年に当り、フィリピンのラモン・ロペス通商産業相は7月12日、ドゥテルテ大統領が以前より表明しているとおり、フィリピンとしては中国との関係改善・拡大に注力していく方針であると語った。
同大統領の方針表明もあって、中国は(理由不詳で)輸入を差し止めていたフィリピン産バナナ・マンゴーを解禁したことから、今年1~5月の間で、同貨物の中国・香港向け輸出高は昨年比+34%も伸びている。
7月13日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙:「南シナ海領有権問題でのフィリピン・中国間緊張関係が緩和」
フィリピンと中国両国は現在、南シナ海における安全保障強化の一環で、様々な分野において、現実的な相互協力関係を構築していくことで合意している。
PCA裁定から1年を経た7月12日、中国外交部の耿爽(ガァン・シャン)報道官は定例会見で、両国が以前の関係に戻り、建設的な対話と交渉を継続していることから、両国関係は以前にも増して良好になっていると表明した。更に、同報道官は、ASEAN関係国とも同様の対応を取っていくことによって、結果として南シナ海の平和と安定が構築できるものと信じるとも語った。
同日付中国
『中国新聞電子版』:「フィリピン、南シナ海問題で“建設的な対話”を歓迎」
フィリピンのドゥテルテ政権は、PCA裁定が下ってから一周年の7月12日、フィリピンは中国と“建設的な対話、協力及び開発協議”ができる関係が構築されたことを評価しているとの声明を発表した。
この声明に答えて中国外交部の耿報道官は、フィリピンと以前の友好関係が再構築できているとした上で、中国のPCA裁定に対する方針には全く変更なく、(同裁定に依らず)領有権問題を関係国間の対話によって解決していく意向であると表明した。
一方、7月12日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「フィリピン高官、領有権争いのある海域での石油探査を年内に再開と表明」
フィリピンのエネルギー資源開発庁のイスマイル・オカンポ理事は7月12日、南シナ海のリード礁(注後記)における天然ガス・石油探査の掘削を、年内中に再開する予定であることを明らかにした。
フィリピンは同礁において探査活動を始めていたが、2014年末、当時の政権が進めていたPCAへの仲裁提訴を優先して、一時的に中断していた。そして同理事は今回、同礁の探査活動を請け負う企業の入札を今年12月に実施するとした。同理事によると、フィリピン外務省の指示の下、同海域での天然資源探査活動を再開する意向であるという。
フィリピンは急速な経済発展を遂げていく上で、輸入に大きく頼っているエネルギー資源の国内供給源の確保が重要となっており、更に、現在天然ガスの供給元として依拠しているマランパヤ・ガス田が、今後10年内に枯渇する恐れがあるからである。
(注) リード礁:南沙(スプラトリー)諸島の海域にある堆の一つ。面積8,866km2、最大水深45m。同礁付近には、天然ガスや石油等の天然資源が豊富に埋蔵されていると見られ、中国、台湾、フィリピンが主権を主張している。
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