18日からエジプトの総選挙が幕を開けた。2011年にはエジプトでも「アラブの春」の
影響を受けてエジプト革命が起こったが、その後の同国はどこへ向かおうとしている
のか。各メディアは以下のように伝えている。
10月18日付
『ニューヨークタイムズ』はこの度行われた総選挙は2012年に解散された
国会を再構築するものであり、シシ大統領の正当性を担保するために行われるもので
あるとしながらも、低い投票率に悩まされていると報じている。
今回の選挙は11月の選挙と合わせて568の議員を選出するものであり、2011年のエジ
プト革命から数えて8度目のものだという。投票者の列は短いか、ほぼゼロであると
ころがほとんどであり、政府はやむなく公務員に月曜日の半休を与えて投票を促す始末だったという。...
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10月18日付
『ニューヨークタイムズ』はこの度行われた総選挙は2012年に解散された
国会を再構築するものであり、シシ大統領の正当性を担保するために行われるもので
あるとしながらも、低い投票率に悩まされていると報じている。
今回の選挙は11月の選挙と合わせて568の議員を選出するものであり、2011年のエジ
プト革命から数えて8度目のものだという。投票者の列は短いか、ほぼゼロであると
ころがほとんどであり、政府はやむなく公務員に月曜日の半休を与えて投票を促す始末だったという。
このような対策にもかかわらず、特に若者の政治に対する無関心には歯止めがかから
ないという。エジプト革命でムバラク大統領の施政に抗議するデモが巻き起こった時
とは雲泥の差だという。また、投票率の低さには以前なされていたような公報活動が
されていない点にも一因があるとの見方もある。
政府によれば今回の選挙は「民主主義への転換を完遂するものとして重要な意義を有
する」としているが、今回の選挙により誕生する議会の潜在的な能力は未知数だとい
う。例えば、大統領弾劾制度についても不明瞭であるし、シシ大統領側は議会の権限
を縮小しつつ大統領のそれを拡大するべく憲法を改正することを検討中だという。
エジプト革命後初の選挙により選出されたムルシ元大統領に対する反政府デモを制圧
する形で、シシ大統領が現職に就いた。ムルシ元大統領の出身母体である「ムスリム
同胞団」は以前、国内でも最大級の政党であったが、現在は活動を禁止されており選
挙に候補者を立てていない。また周りを見渡しても、シシ大統領の反対勢力となりう
るような団体は存在しないのだという。
10月18日付
『ダウ・ジョーンズ・ビジネスニュース』によると、やはり今回の選挙の
候補者は経済界や報道関連のエリート層、警察や軍事関連者で、シシ大統領支持派が
大部分を占めていると報じている。今回の選挙でシシ大統領は経済活動の復旧、政府
への反体制派の取り締まり、テロ対策の強化を打ち出している。しかし、同記事によ
れば、議会が選出された暁に議員らがまず取り組むべき仕事は、シシ大統領から提出
される200もの法案の採択だろうとしている。
選挙は国際監視団体によって、大衆操作や脅迫などのない自由投票であるとのお墨付
きを得ている。しかしながら、選挙結果はエジプト国民を失望させるものになるだろ
うとしている。
オクラホマ大学のエジプト政治専門家であるサメール・シェハタ氏は「今回の選挙に
も当然言えることだが、選挙で大金が動くようになると、現職の大統領に対抗しうる
勢力は登場しにくくなるものだ」とコメントしている。エジプト国民運動党のヤイ
ア・カドリー氏も「エジプトの近頃の風潮は議論よりはむしろ統一を求めている」と
語ったという。
10月18日付
『CNBC』によれば、選挙の投票率は2012年に比べて大変低く、10%前後で
あろうと報じている。同記事では、シシ大統領支持者のうち、年配者が比較的投票に
出向いており、若年層は「結果はシシ大統領が政権を握る見え見えの結果になる」と
の理由から、大多数がボイコットするものとみられている。「エジプトの人口9000万
人のうち、半数が25歳以下であることからすれば今回の事態は当然の結果」とみる専
門家もいるという。また、今回の選挙制度では富裕層やコネのある候補者が優遇さ
れ、ムバラク前大統領時代に逆戻りしているとの見方もあるという。「議員になるこ
とは、政府に近い存在になるという意味しか持たず、いわば政府のクラブ活動に参加
するようなもの」とする意見すらあるという。
若者は2011年に国が変わるとの希望を抱いていたものの、イスラム系の反政府軍や、
貧困問題、失業、エネルギー問題など何ら改善の兆しが見られず、政治的無関心を生
み出しつつあるのかもしれない。エジプトの将来を担う若者が関心を向けるような国
造りをしていかない限り、この国の未来は開けていかないであろう。
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9月9日付「G-20財務相・中央銀行総裁会議での協調は?」の中で、“G-20会議の共同声明では、世界の経済成長は当初の期待値を下回っているが、景気回復は早晩期待できるとした。また、中国の経済成長の鈍化や、突然の人民元切り下げによる輸出振興政策への懸念表明がなされ、各国とも通貨安競争の自制について確認した”と報じた。そして、10月9日付「国際通貨基金(IMF)が世界経済成長率を再び下方修正」で触れたとおり、IMFが、2015年通年の世界経済成長率を、2008年の世界金融危機以来最低の3.1%に▼0.2%下方修正したと発表したが、その直後に開催された、G-20財務相・中央銀行総裁会議の結果について、北米メディアが伝えた。
10月9日付
『ダウ・ジョーンズ・ビジネス・ニュース』(米国)は、「ドラギ総裁、欧州と米国の金融政策は基本的に異なる道筋」との見出しで、「欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁は10月9日、リマ(ペルー)で開催された、G-20財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、特に新興国における経済成長減速下にあって、欧州と米国が取るべき金融政策は基本的に異なると述べた。米経済の回復は目覚ましく、世界金融危機以来ほぼ7年続いているゼロ金利政策をいつ見直すかという状態にあるのに対して、欧州経済の回復状況は非常に緩やかで、依然マイナス成長に陥るリスクがあるからである。そして、2%のインフレーション達成のため、目下2016年9月までとしている、“月額600億ユーロ(約8兆円)の金融資産購入プログラム”の景気刺激策を更に期限延長することを検討している。」と報じた。
一方、10月8日付
『ロイター通信』(カナダ)は、「G-20の中央銀行、新常態にある世界金融政策に過ちは許されず」との見出しで、「新興国が資源安に喘ぎ、中国の経済成長も減速する中にあって、G-20の中央銀行にとっては、今後取るべき金融政策について少しの間違いも許されないと、IMFを交えたG-20会議で表明された。IMFのクリスティーヌ・ラガルド専務理事は、2008年の世界金融危機後、国際金融政策で合計7兆ドル(約840兆円)の量的緩和策が実施されたが、世界の経済状況は“新常態”と呼ばれる低成長に入っていると述べ、特に米国、日本、欧州の中央銀行に対して、金融引き締め政策に移行する前に、景気回復の兆候がもっと強く表れるまで待つよう求めた。」と伝えた。
ラガルド専務理事の求めに応えるまでもなく、日本の景気対策としては、10月6~7日開催の日本銀行の金融政策決定会合では、現下の金融緩和策の継続を決定せざるを得ない状況であった。
一方、同専務理事から、経済成長が減速しているも、対応可能だと評価されている中国は、G-20会議後にリマで開かれた国際通貨金融委員会(IMFC、IMFの諮問機関)において、金融危機時に対応するIMFの準備資産(特別引出し権、SDR)の基準通貨として、人民元を採用するよう求めたが、欧州勢からこれを容認する表明を受けている。なお、最終的には、SDR見直しに関連した人民元の評価作業を実施した後、IMFの11月の理事会で判断される。
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