先月のGLOBALiで報じたとおり、ドナルド・トランプ大統領(74歳)は、大統領補佐官だったジョン・ボルトン氏発刊の回顧録の中で、“無能”かつ“大統領に必要とされる適性もない”と扱き下ろされた。そして今度は、来週発刊される同大統領姪のメアリー・トランプ氏の回顧録の中でも、“ポップスの女王マドンナからデートを断られた腹いせに、彼女を散々侮辱する発言をした”身勝手な男だと暴露されている。
7月10日付英国
『ジ・インデイペンデント』紙:「トランプ大統領の姪の回顧録、かつてマドンナからデートを“断られて”いたと暴露」
ドナルド・トランプ大統領の姪であるメアリー・トランプ氏(55歳)が執筆した回顧録、「尽きることなき貪欲さ(Too Much and Never Enough);如何にして我が一族は世界一危険な男を生み出したか」が来週発刊される。
米メディア『USAトゥデイ』紙の引用によれば、同氏は1990年代、実業家だった当時のトランプ氏のアシスタント経由、半生記「復活を果たした男(The Art of the Comeback、注1後記)」のゴーストライターを依頼されたという。
結局断ったが、アシスタントから送られてきた元になる10ページの原稿の中に、トランプ氏がかつてデートに誘ったものの思いを遂げられなかった相手の女性に対して、“自身が会った中で最悪で最も醜く、しかも超肥満の愚か者、だと酷評する件があった”ことに辟易したという。
同氏のデートの誘いを断って、後に酷評された女性の中には、ポップスの女王マドンナ(61歳、注2後記)も含まれているという。
なお、同氏の回顧録は、同氏とトランプ一族との間で法廷闘争に持ち込まれているが、発刊は差し止められていない。
また、ホワイトハウスのケイリー・マケナニー報道官(32歳)は、同回顧録は“嘘の塊”でかつ“真実を一切含まない、愚かでばかばかしい記述”だと非難している。
一方、マドンナは、今回『ジ・インデイペンデント』紙はコメントを得られていないが、かつて、トランプ氏が当選後の2017年に行われたウィメンズマーチ(注3後記)に集まった50万人の女性の前で、“ホワイトハウスを爆破させてしまいたい気持ち”だと発言して、同大統領を嘲っている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「回顧録;マドンナに袖にされたトランプ大統領がその腹いせに“最も醜く超肥満の愚か者”と罵ったと暴露」
メアリー・トランプ氏の回顧録によれば、トランプ氏は女性から袖にされても、静かに引き下がることはせず、逆に手のひらを返して振った女性を罵倒したという。
例えば、マドンナには“最も醜く超肥満の愚か者”と腐したかと思えば、冬季オリンピックで2つ連続の金メダル、世界選手権でも4回の優勝を誇るカトリナ・ビット元フィギュアスケート選手(東ドイツ出身、現54歳)に対しては、太いふくらはぎの持ち主だと誹謗したという。
これに対してマドンナは、2017年のウィメンズマーチの際に聴衆の前で同大統領を嘲っただけでなく、先月もインスタグラムの中で、トランプ氏は“ナチス党員(高圧的な人)”でまた“社会病質者(人格障碍者)”だと酷評している。
(注1)The Art of the Comeback:1997年発刊のドナルド・トランプ氏半生記。実業家の同氏とジャーナリストのケイト・ボウナー氏の共著で、1990年に破産した同氏が如何に復活を果たしたかを詳述。
(注2)マドンナ:本名はマドンナ・ルイーズ・ベロニカ・チッコーネ。米国の音楽家で、歌手、女優、作曲家、ダンサー、ギタリスト、映画監督、文筆家、実業家など、活動は多岐にわたる。世界で最も成功を収めた女性音楽家であり、史上最も売れたアーティストの一人。一般的に「クイーン・オブ・ポップ」と称される。
(注3)ウィメンズマーチ:2017年1月21日のトランプ大統領就任日に行われた、同大統領の女性差別等に抗議する大規模デモ。首都ワシントンDCの50万人を初め、全米408ヵ所に総勢300~500万人が参加したと言われ、1日のデモ参加者規模としては米国最多。また、この運動に賛同して、世界81ヵ国、168ヵ所でも同様趣旨の抗議デモが繰り広げられた。
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米国においては、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行の勢いが止まず、経済立て直しか、それとも感染抑制のため再び都市封鎖措置かで揺れている。そうした中、今秋の大統領選勝利しか頭にないドナルド・トランプ大統領は、民主党知事らが学校再開を妨害しているとして政争の道具にしてしまっている。しかし、実際に検討すべきは、安全が確認できてからの学校再開とすべきで、そのためには感染拡大の温床となっているバーやジムは閉鎖しておく必要があろうとの専門家見解を米メディアが報じている。また、英国メディアも、全米教員組合代表の主張を引用し、トランプ大統領は生徒の安全より、選挙のために学校再開を訴えている、と厳しく批判している。
7月9日付米
『AP通信』:「学校かバーかどちらが優先か、学校再開には苦渋の選択が伴う」
ドナルド・トランプ大統領は、今秋の学校再開を主張していて、多くの保護者、教育者、医師、更には経済評論家もそれを望んでいる。
しかし、学校再開に当たっては、COVID-19感染鎮静化という安全が確保されることが先決で、そのためには感染拡大の温床となっているバーやジムを再び閉鎖する必要があるとの意見が強い。
ボストン大(1839年設立のマサチューセッツ州私立大学)の伝染病学者のヘレン・ジェンキンス氏は、“社会にとって優先すべきはK-12(注後記)学校の再開であって、そのために再開が遅れるものがあっても止むを得ないと考えるべき”だと主張する。
米国小児科学会(1930年設立)も、学校は単に教育する場所だけでなく、子供たちの友達との交流、食育その他いろいろな利点があるとし、学校再開を強く支持している。
また、マイクロソフトリサーチ(1991年設立、計算機科学分野に関する様々な研究を行う機関)経済評論家のデビッド・ロスチャイルド氏は、“学校再開によって、大人たちの職場復帰も可能になり、結果として経済活動にも良い影響を与える”と解説している。
しかし、保健衛生専門家は、感染流行が深刻な地域においては、仮に学校でマスク着用やソーシャルディスタンシングが守られたとしても、学校再開は非常にリスクが高いと警鐘を鳴らす。
実は、8州(ミズーリ、テキサス、ルイジアナ、ジョージア、ノースカロライナ、テネシー、ニューヨーク、フロリダ)で卒業イベントや夏季キャンプが開催された際、行事に参加したうち数百人の子供や関係者が感染してしまっている。
ある関係者によると、米疾病管理予防センター(CDC)のガイドラインに従った措置を講じていたにも拘らず、であるという。
ジョンズ・ホプキンズ大(1876年設立、メリーランド州私立大学)内COVID-19研究所疫学者のジェニファー・ナゾー氏は、“子供は大人に比べて重症化リスクが少なく、また、他への感染源となったとの症例は多くない”としながらも、“子供を媒介して教師や基礎疾患保有者が感染するリスクは否定できない”という。
従って、同氏は、“学校を安全に再開させるためには、まず、大人たちが密集し、ソーシャルディスタンシングが十分保てないために感染リスクが非常に高いバー、レストラン、ジム等室内施設をどうするか、かかる場所での感染抑制ができているか、をまず考慮する必要がある”と説いている。
一方、トランプ大統領は今週、ツイッターやホワイトハウスでの会見で、証拠等を一切示さずに、民主党政治家が保健衛生目的ではなく政治的理由から学校再開を拒んでいると述べている。
しかし、かかる発言以前から、共和党はもとより民主党も保健衛生専門家も、学校再開に向けた検討を進めている。
例えば、カンザス州のローラ・ケリー知事(民主党)は先週、学校再開を望むので、そのためにマスク着用義務の行政命令を出している。
また、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事(民主党)も、学校再開のため、感染が広がっている地域のバーでの室内サービスを止めさせている。
更に、ニューメキシコ州のミッシェル・ルーハン・グリシャム知事(民主党)は、“子供や生徒らに学校は必要である”として、“安全に登校させるために、マスク着用義務を果たさない人たちへの罰則強化を考えている”とまで述べている。
一方、共和党も学校再開の必要性を主張していて、マイク・ペンス副大統領は先週アリゾナ州を訪問した際、ダグ・デユーシー州知事(共和党)が、“学校再開のために必要な”感染抑制対策の一環で、バー、ジム、映画館を閉鎖するとした決定を評価すると表明している。
なお、トランプ大統領の意向を酌んでか、『AP通信』が入手した情報によると、ベッツィ・デボス教育長官は7月7日、州知事らとの電話会議で、“全米の学校を絶対再開させよ”と強い口調で要求したという。
しかし、全米教育委員会のダン・ドメネック委員長は、“学校長や教職員は、学校再開の詳細プランはもとより、連邦政府からの具体的支援がなければ、簡単に学校再開とする訳にはいかないと考えている”とし、“第一に校舎内の消毒作業や、ソーシャルディスタンシングが保てるようなスペース作り、更にはマスク着用を推進していく上で必要な財政的援助が全くなされていないから”だと非難している。
一方、7月10日付英国『ジ・インデイペンデント』紙:「米教員組合、トランプ大統領に感染流行の真っ只中に再開された学校の教室に座ってみろ、と“挑戦状”」
米国最大の教員組合の委員長がトランプ大統領に対して、COVID-19感染流行が収まらない中で再開された学校の教室に座ってみたらよい、と“挑戦状を叩き付けた”。
同大統領は、闇雲に学校再開を主張していて、学校再開に当たってのCDCが示しているガイドラインは、“対応費用が掛かり過ぎ”かつ“厳し過ぎる”と批判している。
これに対して、全米教育協会(NEA、1857年設立の全米最大の教員組合、組合員数300万人)のリリイ・エスケルセン・ガルシア委員長は、“学校再開を一番望んでいるのは教師だ”とした上で、“しかし、再開には(感染抑制という)安全性の確認が必須”だと反論した。
更に、同委員長は、“バーなどを性急に再開した結果、多くの州で感染が拡大している事態から、早過ぎた措置だということは明白”だとも強調している。
その上で同委員長は、“トランプ大統領には、私が受け持つ6年生39人のクラスに来て、感染抑制が何もされない教室に一緒に座って、呼吸をしてみろと言いたい”と、厳しい言葉を投げかけた。
NEAはかねてより、学校再開に当たってはCDCガイドラインに沿って、生徒1人1人の防護具準備、校舎内の徹底消毒、教室内6フィート(約1.8メートル)間隔スペースの確保、更に生徒用消毒薬器具の設置等、幾重もの段階を踏む必要があると主張している。
(注)K-12(ケースルートウェルブ:幼稚園(KindergartenのK)から始まり高等学校を卒業するまでの13年間の教育期間のこと。無料で教育が受けられるこの13年間の総称として、米国やカナダの英語圏で用いられたのが始まり。
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