米メディア;菅新首相にとって、安倍前首相の政治遺産”インド太平洋戦略”具現化のためインドネシアとの連携強化が大事と論評
9月半ばに就任した菅義偉新首相(71歳)は、基本的に安倍晋三前首相(66歳)の政策を踏襲するとしている。そこで、ある米メディアは、安倍氏が政治遺産とした“自由で開かれたインド太平洋戦略構想(FOIP)”を米国も追随しようとしている以上、場合によって中国と対峙していく上でも肝要となる、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係、その中でも特にインドネシアとの連携強化が大事となると論評している。
9月22日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「安倍首相後任、インドネシアとの連携強化の絶好の機会」
安倍晋三前首相を引き継いで、菅義偉前官房長官が9月17日、後任首相に就任した。
新首相は就任会見で、基本的に安倍氏の政策を継承すると表明している。
すなわち、外交について言えば、アジア諸国との連携強化、日米関係の継承・強化、そして必要に応じて中国と対峙する姿勢である。...
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9月22日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「安倍首相後任、インドネシアとの連携強化の絶好の機会」
安倍晋三前首相を引き継いで、菅義偉前官房長官が9月17日、後任首相に就任した。
新首相は就任会見で、基本的に安倍氏の政策を継承すると表明している。
すなわち、外交について言えば、アジア諸国との連携強化、日米関係の継承・強化、そして必要に応じて中国と対峙する姿勢である。
そして、具体的施策としては、安倍前首相の政治的遺産と呼ぶべきFOIPの推進である。
これを具現化する上で、インドやベトナム等アジア主要国との戦略すり合わせが必要となるが、その中で最も重要なのはインドネシアとの連携強化である。
日本とインドネシアの、これまで及び今後の関係が如何に重要であるかについて、以下に述べる。
(1) 経済
・インドネシアはかねてより、日本からの投資受け入れに積極的であり、結果、2019年上半期の実績では、直接投資総額(FDI、注後記)がシンガポールに次いで2位となり、中国を上回っている。
・最近になって、インドネシア政府から日本側に対して、5年前に中国企業に発注してしまったジャカルタ・バンドン高速度鉄道建設事業について、再度の参画の検討要請があった。これは、当初の建設工事期間・総工費通りに進められない中国企業との契約を破棄しようとする意思表示に他ならない。
(2) 国防
・2016年に日本・インドネシア海事フォーラム立ち上げに合意し、両国間の海事全般の協力関係を確認している。
・ここ数年、南シナ海における中国の一方的な海洋進出に日本としても公然と異議を申し立てているが、インドネシアも、同海域南端のナトゥナ諸島周辺への中国漁船・海警艇の侵入に業を煮やしており、日本の支援に期待している。
(3) COVID-19
・日本は今年7月、COVID-19対策支援(景気対策含め)の一環で、インドネシアに対し、20億円の供与に加えて500億円を融資することを決定している。
・一方、ジョコ・ウィドド大統領(59歳)も直近で、COVID-19から派生した問題で、中国生産拠点を見直そうとしている日本企業を積極的にインドネシアに誘致するよう指示を出している。
(4) インドネシア通の閣僚留任
・麻生太郎副総理兼財務相(80歳)は2019年12月、二国間貿易・直接投資のための現地通貨決済を促進するための協力枠組みを設立することを目論んだ基本覚書を締結した。この枠組みは2020年8月に設立されており、両国間経済関係が益々活発化することになると期待される。
・茂木敏充外相(64歳)は、COVID-19感染流行深刻化前にインドネシアを訪問し、インフラ、人的資源開発、海事協力、FOIP推進等のための両国間パートナーシップにつき合意した。更に、今年8月下旬、COVID-19問題で中断を余儀なくされていたFOIP推進に関わる協議のため、インドネシアを含めたASEAN主要国を歴訪している。
・梶山弘志経済産業相(64歳)は今年7月、ルフット・パンジャイタン海事・投資担当調整相(72歳)とのテレビ会議を通じて、インドネシアが輸出用自動車生産集約拠点にしようとしているバタン工業団地(ジャワ島中部)への日本企業の参加について積極的に協議した。
以上みてきたとおり、菅新首相がアジア外交を推進していく上で、場合によって中国と対峙することを考えると、ASEANとの連携が重要で、その中でも特にインドネシアとの関係強化が必須であり、かつそれを進めるのに絶好の機会が訪れていると言えよう。
(注)FDI:インドネシア投資協調委員会データによると、1位シンガポール34億ドル(5,348事業)、2位日本24億ドル(3,708事業)、3位中国23億ドル(1,518事業)、4位香港13億ドル(1,068事業)、5位マレーシア10億ドル(1,432事業)・・・、総額282億ドルと前年同期比+9.4%となっている。
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米メディア;与党・自民党が習国家主席の国賓招待中止を決議、と断定報道
自民党は7月7日、政調審議会・外交部会において採択された、中国による香港国家安全維持法の制定・施行を非難する一環で、習近平(シー・チンピン)国家主席の国賓来日について、“中止を要請せざるを得ない”と明記した決議案を了承した。これは、中国との友好関係を重視する二階俊博幹事長らの注文に配慮し、“中止を要請する”との原案から表現を弱めたものである。しかし、米メディアは、そのような内部事情は頓着せず、“与党・自民党が習国家主席来日中止を決定”と断定的表現で報道している。
7月8日付
『AP通信』:「日本の首相、習主席来日をキャンセルするよう要求される」
与党・自民党は7月7日、中国による香港国家安全維持法の施行を受けて、習国家主席の来日をキャンセルするよう安倍晋三政権に求めるとの決議を採択した。
中山泰秀自民党外交部会長は、“同法の制定・施行によって、香港の自由・人権・民主主義が脅かされると国際社会から強い懸念が表されていることから、習国家主席の国賓来日をキャンセルする以外考えられない”と決議につき説明した。...
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7月8日付
『AP通信』:「日本の首相、習主席来日をキャンセルするよう要求される」
与党・自民党は7月7日、中国による香港国家安全維持法の施行を受けて、習国家主席の来日をキャンセルするよう安倍晋三政権に求めるとの決議を採択した。
中山泰秀自民党外交部会長は、“同法の制定・施行によって、香港の自由・人権・民主主義が脅かされると国際社会から強い懸念が表されていることから、習国家主席の国賓来日をキャンセルする以外考えられない”と決議につき説明した。
これに対して、菅義偉官房長官は、習国家主席の来日等につき検討するのは適当な時期ではない、としただけで、(来日中止等)まだ何も決まっていないとのみコメントしている。
習国家主席の来日については、日中関係を新しいステージに上げるとの安倍首相の思惑もあり、昨年半ばのドナルド・トランプ大統領に続いて、二人目の国賓として招待することを決め、4月初めの来日とされていた。
しかし、折からの新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題深刻化に伴い、延期されていた。
ただ、当初から同党タカ派よりは、同国家主席を国賓招待すること自体に強い反対の声が上がっていた。
一方、中国側は、日本が香港国家安全維持法制定の動きに批判的なコメントを出した6月下旬の時点で、既に日本側対応を非難するコメントを出している。
7月7日付『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「中国公船による尖閣諸島領海内侵入が2012年以来最長となったのは何故?」
日中間で領有権争いのある尖閣諸島では、2012年に日本が同島を国有化宣言して以来、中国側の対応は厳しくなっている。
2013年には、中国が一方的に尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏(ADIZ、注後記)を設定し、益々同海域での日中間の対立が先鋭化してきていた。
しかし、米中貿易紛争等を契機に米中対立が激化する中、中国側による米同盟国の日本との関係修復戦略もあってか、安倍首相が望んでいた日中関係改善政策が進捗し、習国家主席の国賓来日まで漕ぎ着けていた。
ただ、COVID-19問題で同国家主席の来日が延期となり、日中関係は停滞することとなった。
そして、直近では、中国による香港国家安全維持法制定に対して、欧米のみならず、日本も批判的コメントを出したことから、日中関係がまた後退することが懸念された。
かかる経緯を象徴してか、海上保安庁による発表では、先週、中国公船による尖閣諸島領海内侵入が約30時間と、2012年以来最長を記録したという。
そこで、タカ派の評論家からは、先週辺りから、与党・自民党内から習国家主席の訪日中止を求める声が上がっていることから、中国側が日中関係改善の話を見限って、再び東シナ海で強硬な対応に出てきたとみられるとのコメントが出ている。
しかし、これは偶然の話とみるのが自然で、中国としては、米中対立を契機に、米国と連携しようとしている豪州(二国間貿易でしっぺ返し)、インド(ヒマラヤ国境紛争地帯に部隊増派)等に対して強硬な態度で出ているように、中国の覇権主義の一環で、東シナ海でも妥協しない態度を示しておく必要がある、との中国判断とみるべきである。
(注)ADIZ:各国が防空上の必要性から領空とは別に設定した空域のこと。防空識別圏では、常時防空監視が行われ、(通常は)強制力はないが、予め飛行計画を提出せず、ここに進入する航空機には識別と証明を求める。更に、領空侵犯の危険がある航空機に対しては、軍事的予防措置などを行使することもある。
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