中国のネット通販最大手のアリババ・グループ(創業1999年)は、昨年9月にニューヨーク市場に上場し、時価総額約25兆円と、一挙にトヨタやIT大手のフェイスブックを上回る資金を得た。ただ、新たな成長の柱と見込む海外市場では、圧倒的なシェアを誇る中国市場ほどの存在感を発揮できていない。そこでこの程、米国での経験が豊富なマイケル・エバンス氏(米金融大手ゴールドマン・サックス元副会長、57歳)を、アリババの総裁(社長)に起用すると発表したと米メディアが伝えた。
8月5日付
『マルチチャネル・マーチャント』経済誌は、「中国の通販最大手のアリババ・グループは8月5日、新たな成長戦略のターゲットとする国外市場での存在感を発揮していくため、米金融大手ゴールドマン・サックス元副会長のマイケル・エバンス氏を、同社の総裁(社長)に起用することにしたと発表した。エバンス氏は、アリババが昨年9月にニューヨーク市場に上場して以来、同社の社外取締役に就任していた。同社の張勇(チャン・ヨン、ダニエル・チャン)最高経営責任者(CEO)によると、エバンス氏はIT業界のみならず、中国ビジネスにも精通しているので、アリババが今後数十年、最も注力しようとしている国際ビジネス、すなわち、世界1千万社の顧客企業及び20億人の消費者に貢献していくとする目的達成のために、中心的役割を担ってくれると期待するという。」と報じた。
同日付
『CNBCニュース』は、「マイケル・エバンス氏は、ゴールドマン・サックス在籍中、20年もの間、中国を含めたアジア地域を統括しており、中国ベースのアリババの業務を、欧州、米国及びアジア全域に拡大していく上で、適任者だと評価されている。なお、中国の顧客の世界からのネット通販での購買額は、2010年の20億ドル(約2,500億円)から2014年の200億ドル(約2兆5,000億円)まで急増したが、アリババはこの増額分をしっかり取り込めていないという。」と伝えた。
また、同日付
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』記事引用)は、「マイケル・エバンス氏は、ゴールドマン・サックスでの副会長時代、ロイド・ブランクファイン現会長兼CEOの後継候補の一人とみられていたが、2013年に突然退社し、2014年9月のアリババのニューヨーク市場上場に関わった縁で、同社に移籍していた。エバンス氏を知る国際金融の幹部は、IT業界を良く知る銀行家の彼が、アリババの今後の発展に必ずや寄与しようと評価している。」と報じた。
更に、8月6日付
『ジ・エポック・タイムズ(ニューヨーク本拠の多言語メディア)』は、「アリババの創業者である馬雲(マー・ユン、ジャック・マー)会長は、売上高の半分を国外ビジネスから得ることを目標に掲げており、エバンス氏は、中国の消費者3億5千万人と世界の売り手を結びつける、国際的な通販プラットフォームを築き上げることに貢献してくれると期待すると表明した。」と伝えた。
なお、巨大な中国市場を背景に急成長を果たしてきた中国のIT企業は、国外への進出、拡大が共通の課題となっているため、こぞって欧米企業出身者を幹部に登用する動きに出ている。スマホ大手の小米科技(シャオミン)は2013年に、米グーグル幹部のヒューゴ・バラ氏を副総裁に迎え入れ、通信機器・端末大手の華為技術(ファーウェイ)も同年、フィンランドの携帯大手のノキアのコリン・ジャイル氏を起用している(同氏は後に、パソコン大手の聯想集団(レノボ)に移籍)。また、検索大手の百度(バイドゥ)も、グーグルや米マイクロソフトの幹部を積極的に登用している。
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