新型コロナウィルス(COVID-19)感染者及び死者が世界最多となっている米国では、先行して認可・接種が始まっている2種類のワクチンに続いて、他に3種類のワクチンが認可申請前の最終臨床試験段階に入っている。ただ、一年で最も繫忙なクリスマスシーズンを迎えている米市民にとっては、ワクチン接種が行き渡るまで外出自粛等の行動制限には我慢できない模様で、陸・空併せて9,500万人(全人口の約3割)が旅行・帰省等の国内移動を行っている。これに対して、感染症専門家も諦めの声を上げている。
12月29日付米
『AP通信』:「12月27日だけで130万人近くが航空便で国内移動」
米国では直近2ヵ月間で、COVID-19感染者が急増し、死者も33万人超となっている。
(編注;米ジョンズ・ホプキンズ大の12月29日午後8時半現在のデータによると、感染者1,948万4,710人、死者33万8,290人、致死率1.7%)
しかし、クリスマスシーズンを迎えて、米市民の旅行や帰省等の国内移動を制限するのは困難な模様で、米運輸保安庁(TSA、注1後記)によると、12月27日だけで128万4,599人が空港を利用して国内移動をしたという。...
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12月29日付米
『AP通信』:「12月27日だけで130万人近くが航空便で国内移動」
米国では直近2ヵ月間で、COVID-19感染者が急増し、死者も33万人超となっている。
(編注;米ジョンズ・ホプキンズ大の12月29日午後8時半現在のデータによると、感染者1,948万4,710人、死者33万8,290人、致死率1.7%)
しかし、クリスマスシーズンを迎えて、米市民の旅行や帰省等の国内移動を制限するのは困難な模様で、米運輸保安庁(TSA、注1後記)によると、12月27日だけで128万4,599人が空港を利用して国内移動をしたという。
これは、COVID-19感染拡大後の3月15日以降最多であり、12月18日以降累計1千万人余りが航空便を利用して国内移動をしたことになるという。
一方、陸上でも、全米自動車協会(AAA、注2後記)の推定によると、約8,500万人が車で国内移動をしているという。
米国の感染症研究第一人者のアンソニー・ファウチ米国立アレルギー・感染症研究所長(80歳)は『CNN』のインタビューに答えて、今回の大移動によって感染者が更に増えることを懸念すると表明した。
特に、かかる大人数が空港に集結したことで、ソーシャルディスタンシングが十分保たれることが不可能であるし、また、多くの家族、親戚、友人等が集まることも予想され、感染防止が困難になると考えられるからだとしている。
更に同所長は、“国内移動は可能な限り控えるように、と何度も訴えたが、現実はこれだ”と嘆いている。
一方、ワクチン開発であるが、製薬会社ノババックス(1987年設立、本社はメリーランド州)が研究を進めているワクチンが臨床試験の最終段階になっていることが12月28日に判明した。
米国では既に、米ファイザー(1849年設立、本社ニューヨーク)・独バイオNテック(2008年設立、本社マインツ)が共同開発したワクチン、及びモデルナ(2010年設立、本社はマサチューセッツ州)のワクチンが既に緊急承認され、接種が開始されている。
そして、ジョンソン&ジョンソン(1887年設立、本社はニュージャージー州)及び英国アストラゼネカ(1999年設立、本社ケンブリッジ)が開発中のワクチンも最終臨床試験段階にあるため、ノババックス社分含めて5種類のワクチンが間もなく接種可能になるとみられる。
ファウチ所長は『AP通信』のインタビューに答えて、“これらの開発中のワクチンで、全人口の85%余りの人に接種が可能になる”とコメントしている。
12月28日付英国『ザ・ガーディアン』紙:「米国、クリスマス休暇の旅行で感染急拡大の恐れと警告」
米保健省専門家は、クリスマス休暇による国内旅行増で、COVID-19感染がこれまで以上に拡大する恐れがあると警鐘を鳴らした。
『ロイター通信』によると、TSAは、12月27日だけで128万人が空港から国内各地に移動しており、今年3月半ば以降で最多記録となっていると発表したという。
この数値は2019年同日比では半分であるが、12月18日以降、6日間連続で一日100万人超の人が航空便を利用したことになるとする。
ファウチ所長は12月27日、『CNN』の番組に出演して、“クリスマスそして新年と続いて、旅行やパーティ等のイベントが増えることから、今後感染が飛躍的に増えることが懸念される”とコメントした。
更に同所長は、“晩秋から初冬にかけての感染者数のグラフが急カーブを描いていることから分かるように、残念ながら感染が感染を呼ぶ悪循環に陥りかねない”とも強調した。
ある専門家の推定によると、米国の感染死亡者は来春までに50万人に達するという。
ジョー・バイデン次期米大統領も、“残念ながら、COVID-19感染状況は悪化することはあっても改善することは難しい”とし、“ただ一つ、事実を詳らかに、かつ迅速に伝えていくことを約束する”と、現政権を間接的に批判するコメントを発表している。
(注1)TSA:米国土安全保障省の外局であり、米国における公共交通機関の安全性を保つことが任務。2001年9月11日に発生した、米国同時多発テロに際して編成された。
(注2)AAA:全米 50州とワシントンD.C.の自動車協会が連合した非営利団体。1902年イリノイ州で発足。会員数は約4,600万名で同種の自動車クラブでは世界最大。
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イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」がナイジェリアで中学校を襲撃し、数百人の生徒を連れ去ったとされている。「ボコ・ハラム」指導者のものだとする音声が、ナイジェリアのウェブサイトに送りつけられ、子供たちが「非イスラム的な習慣」のために罰せられていると犯行声明を発表した。
アフリカの
『メディアコンゴ』や仏
『レクスプレス』によると、6年前にナイジェリアで数百人の女子生徒を誘拐したイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」は、11日夜に起きたナイジェリア北西部カツィナ州での中学生333人の誘拐事件に関与したと主張している。
11日の夜、オートバイに乗った100人以上の武装した男たちが、カンカラの町にある公立中学校の寮を襲撃した。何百人もの生徒が隠れようと茂みに逃げ込んだが、一部は捕まり、いくつかのグループに分けられて連れ去られた。
今回の事件はナイジェリア北西部のカツィナ州カンカラで発生しており、通常はチャド湖周辺のボコ・ハラムの活動領域である北東部から数百キロ離れている。そのため、当初はイデオロギーや宗教的動機のものではなく、身代金目当ての地元の盗賊団によるものと考えられていた。ナイジェリアのこの地域では、身代金目当ての誘拐が日常的に行われており、武装グループが家畜や村を盗み地元の人々を恐怖に陥れている。
ナイジェリアの首都アブジャに拠点を置くシンクタンク、Centre for Democracy and Development (CDD-West Africa)のIdayat Hassan氏は、「我々はここ数ヶ月でボコ・ハラムの指導者アブバカル・シェカウに忠誠を誓ういくつかの盗賊グループを確認してきた」と指摘している。
トニー・ブレア研究所のサハラ以南アフリカ担当アナリストであるBulama Bukarti氏は、「シェカウは、戦闘員を送るくとなく北西部に勢力を伸ばすために、地元の盗賊とつながりを築いてきた」と説明している。
英『ザ・ガーディアン』によると、今回の誘拐事件にボコ・ハラムが直接関与しているかどうかは疑問視されているという。シェカウ氏の犯行声明は詳細を欠いており、カツィナ州の当局者はすでに、目撃者らによって犯人とされる盗賊グループから、身代金の要求を受けているためだ。
この地域でテロ対策に取り組んでいる西側の関係者によると、盗賊が金や武器などの見返りとして、誘拐された少年たちの一部または全部を過激派に譲渡した可能性があるという。武装した犯罪者、人身売買業者、イスラム過激派はサヘル地域全体で、互いに密接な関係を持っていることは周知の事実なっている。そして、ナイジェリア北西部からニジェールに広がる森林に近い町が、最も攻撃を受けやすい地域となっている。アムネスティ・インターナショナルによると、今年1月から6月の間にナイジェリアで1,126人が盗賊に殺されている。
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