ボリス・ジョンソン英首相は5日、11日~13日に議長国の英国で開かれる主要7カ国首脳会議(G7)で、新型コロナウイルスのワクチン接種を全世界で2022年末までに完了させることへの協力を提案し、合意を目指すことを明らかにした。
インド
『NDTV』と仏
『BFTMV』によると、英国は、約2年ぶりの開催となるG7首脳会議の議長国を務め、世界全体でのワクチン接種完了に向けた合意を求める方針を発表した。
ジョンソン首相は声明で、「来年末までに世界全体でワクチン接種を完了させることは、医学史上最大の偉業となる。私は、この恐ろしいパンデミックを終わらせるために、他のG7のリーダーたちに協力を呼びかけ、新型コロナウイルスがもたらした惨状を二度と起こさないことを誓う」とし、「私たちがコロナを打ち負かし、共通の価値観に基づいて世界の復興を導くという、戦後最大の課題に立ち向かうことを、世界は期待している」と述べた。
英『スカイニュース』によると、英国では、7種類のワクチンを確保できたおかげで、今後2年間で4億回以上の接種が可能になった。すでに約6,700万回の接種が行われ、2,700万人以上が2回の接種を終了し、多くの地域では20代の人への接種が始まっている。また、規制当局がファイザー社のワクチンを12歳から15歳を対象とした予防接種を承認したことで、子供へのワクチン接種の見通しも立ってきた。英国は2月に、ワクチンを共同購入し途上国に分配する国際的な取り組み「コバックス」を通じて余剰なワクチンの大半を共有すると発表していた。しかし、マット・ハンコック保健相は4日、英国にはまだそのような余剰分がないことを明らかにした。
一方で、多くの貧しい国では、資金不足、インフラの不備、そして何よりも供給不足のために、最もリスクが高いとされる医療従事者へのワクチン接種すらできていない。ドイツ、フランス、イタリアは、年末までに少なくとも1億本のワクチンを寄付することを明らかにしている。英政府も、コバックスへの5億4800万ポンド(約848億円)の寄付を表明している。
ジョンソン首相は今回のサミットで、新種が広がる前に検出できるような世界的な監視システムを推進したいとも考えている。
サミットには、英国、ドイツ、フランス、米国、イタリア、日本、カナダの各国首脳が参加する。また、英国の主任科学顧問であるパトリック・ヴァランス卿、慈善家のメリンダ・フレンチ・ゲイツ氏、環境保護活動家のデビッド・アッテンボロー卿などの専門家も参加する。12日には、オーストラリア、南アフリカ、韓国、インドの首脳が、直接参加またはオンラインで参加し、健康と気候変動に関する話し合いが行われる。なお、アメリカのバイデン米大統領にとっては、1月の就任以来、初の海外出張となる。
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英国は今年1月末、かねての取り決めに従って欧州連合(EU)より離脱した(Brexit)。目下、6月末期限までにEUとの自由貿易協定(FTA)等を纏める必要がある。そして、英国にとってはEUの他、米国及び中国との通商交渉等重用な交渉が控えている。そうした中、当初導入を決めていた中国通信機器大手ファーウェイ社の第5世代移動通信システム(5G)採用を棚上げしただけでなく、中国が推し進めようとしている香港治安強化に真っ向から反対する立場を鮮明にした。19~20世紀と違い、中・英国間の国力には格段の差がついてしまっている現在、喧嘩を売られたと思っている中国の報復が恐ろしい。
6月4日付米
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「英国、このままいくと中国と真っ向衝突に」
英国は目下、香港統治とファーウェイ社問題で中国と真っ向対決していることから、中英関係は大きく毀損されようとしている。
すなわち、先ごろボリス・ジョンソン首相(55歳)が、かつて英国統治下にあった香港に新たな治安法(香港国家安全法)を導入しようとしている中国政府を批判したばかりか、当初採用予定であった中国通信機器大手ファーウェイ社の5Gシステムを他社に乗り換えると言い出したからである。
英国は目下、EUとのFTA締結交渉の真っただ中であり、EU離脱後の世界貿易を考えた場合、中国は最重要貿易相手国のひとつであることから、中国との対決姿勢は、英国の将来に暗い影を落としかねない。
中国外交部(省に相当)の駐香港特別行政区特派員事務所は6月3日、英国に宛てた声明文の中で、香港問題に干渉しないよう明確に要求した。
同事務所の声明文によると、英国はもはや香港に対する“管理、監督”等一切の権限を有していないと言及している。
また、駐英の劉曉明(リウ・シャオミン、64歳)中国大使はツイッターで、“中国への内政干渉を直ちに停止すべき”だと英国政治家に向けてつぶやいている。
●ファーウェイ社問題
ジョンソン首相が強気に出ている背景には、トランプ政権が先ごろ、国家安全保障の問題からファーウェイ社システム導入を止めるよう米同盟国に働きかけていることから、今後の米英関係をより重要視したものとみられる。
当初、同首相自身、ファーウェイ社製品の調達について1月には前向きな回答をしていたが、この行為をトランプ政権が激怒したこと、更に、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に関わり、中国側対応に疑念を抱くに至って、態度を豹変させたとも考えられる。
なお、英政府関係者によると、ファーウェイ代替候補としては、先月に既に協議を始めている日本のNECが挙げられていて、更に、韓国のサムソンも検討対象となりうるという。
一方、英国の今回の対応は、既にファーウェイ社以外の製品導入を決めている他主要国にも追い風になろう。
カナダの大手電気通信事業者ベル・カナダ社及びテラス社は今週、5G用にスウェーデンのエリクソン社とフィンランドのノキア社製品を導入すると決定した。
また、ドイツの総合通信大手のテレフォニカ・ドイツ社は、エリクソンを採用するとしている。
●香港問題
EU外相は、中国が香港治安強化の一環で「香港国家安全法」を制定すると決定したことに対して、制裁までは言及しなかったが、“大変な憂慮”をしているとの公式見解を表明した。
しかし、今やEU加盟国ではない英国は、更に厳しい姿勢を打ち出した。
すなわち、ジョンソン首相は6月3日、英国『タイムズ』紙及び香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙に投稿して、“同法が施行された際、もし香港居住者が望むなら、英国は300万人に対して市民権を付与する用意がある”とぶち上げている。
本来、EU内調和を乱そうとしている中国を快く思わず、EU結束を標榜しているドイツとフランスが、今回の中国対応に対して強硬に出る必要があるが、英国がそのお株を奪った感がある。
ただ、今や人口比較(14億人対6,500万人)のみならず、経済規模で甚大な格差がついてしまっている以上(13兆4千億ドル対2兆8千億ドル)、英国にとって、Brexit後、またCOVID-19収束後のことを考えると、中国との関係は非常に大きい意味を持つ。
一方、中国にとって英国は、今や西側諸国のひとつでしかなく、かつて香港返還時に結んだ英中間覚書(例えば、1997年の返還後50年間は香港の自治を約束する一国二制度の堅持)を破ることなど何の躊躇もないことと考えているとみられる。
現に、駐イタリアの李軍華(リー・ジュンホア)中国大使は6月1日、“中国の対香港政策を過小評価してはならない”と公に発信している。
同日付英国『ロイター通信』:「英国、5G採用に関し日本及び韓国メーカーと協議」
英国における最新通信移動システム採用に関し、ある事情通は『ロイター通信』のインタビューに答えて、英国政府は目下、中国ファーウェイ社から日本のNEC及び韓国のサムソンに乗り換える話を進めているとコメントした。
英国は今年1月、ファーウェイ社を“リスクの高い供給業者”と位置付け、契約締結するものの最大35%までを上限とし、かつ大容量データを取り扱う中心ネットワークからははずす方針を示していた。
しかし、ジョンソン首相が、米国並びに英国保守党議員らから直近で、ファーウェイ社製品を使って中国政府が諜報活動を行う恐れがあると、新たな圧力を受けたことから、これまでの方針を転換することを決めた。
そこで英国政府は、これまで英国市場に参入してきているファーウェイ社製品を、2023年までに完全に駆逐させる意向とみられる。
なお、米議会のトム・コットン上院議員(43歳、南部アーカンソー州選出共和党員)が6月2日、英国議員に対して、中国はファーウェイ社を使って、米・英国間関係を“ハイテク技術で分断”させようとしていると警告している。
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