ロシアの軍事侵攻に喘ぐウクライナ政府は2月26日、同政府及び国軍支援の一環で、暗号資産による寄付を求める投稿をツイッター上で行った。ブロックチェーン(注1後記)の分析をてがける英国エリプティック(2013年設立)によると、同政府等を支援するNGO団体からの暗号資産による寄付が約3,400万ドル(約39億円)まで積み上がっているという。
3月1日付
『AP通信』は、「ウクライナ、3,400万ドル相当の暗号資産による寄付を受領」と題して、同政府の呼びかけに応えた巨額の寄付について報じている。
すなわち、暗号通貨取引の追跡を行うエリプティックによると、ウクライナ政府を支援する一環での暗号通貨による寄付が3,380万ドル(約38億8,700万円)に上っているという。
これは、1週間前にロシアからの軍事侵攻を受けたウクライナ政府が、暗号資産による寄付を募ったことに応えたもので、上記金額の3分の1近くが3月1日の一日だけで積み上がったものである。...
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3月1日付
『AP通信』は、「ウクライナ、3,400万ドル相当の暗号資産による寄付を受領」と題して、同政府の呼びかけに応えた巨額の寄付について報じている。
すなわち、暗号通貨取引の追跡を行うエリプティックによると、ウクライナ政府を支援する一環での暗号通貨による寄付が3,380万ドル(約38億8,700万円)に上っているという。
これは、1週間前にロシアからの軍事侵攻を受けたウクライナ政府が、暗号資産による寄付を募ったことに応えたもので、上記金額の3分の1近くが3月1日の一日だけで積み上がったものである。
同社共同創業者のトム・ロビンソン最高執行責任者は、ほとんどの寄付がビットコイン(注2後記)とイーサ(注3後記)で占められているが、一部非代替性トークン(NFT、注4後記)も含まれると語った。
本日までの1週間で、3万件の寄付行為がなされており、英国人プログラマーで仮想通貨イーサのプラットフォーム共同創設者であるギャビン・ウッド氏(41歳)は580万ドル(約6,670億円)を寄付している。
100万ドル(約1億1,500万円)以上を寄付した人が他に数人いる。
なお、エリプティックは、ウクライナ政府宛の寄付を装った詐欺行為も横行しているので注意を要すると呼びかけている。
同日付『ニューヨーク・タイムズ』紙も、「ウクライナ政府、1,500万ドル以上の暗号資産による寄付を受領」と題して詳報している。
ウクライナ政府は先週末、ツイッターのアカウント上で、暗号通貨のビットコイン、イーサ、テザー(注5後記)による寄付を呼びかけた。
エリプティックが2月28日晩に公表したデータによると、ウクライナ政府及び同国NGOカムバックアライブ(CBA、2014年設立の軍事支援用クラウドファンディングを行う団体)宛に合計2,200万ドル(約25億3千万円)以上の暗号資産による寄付行為が行われたという。
ただ、CBAの寄付集めの行為が、クラウドファンディング・プラットフォーム「パトレオン(注6後記)」が定めた、軍事支援用のファンディング禁止ルールに反するとされたため、
先週新たにウクライナDAOを立ち上げた。
ウクライナDAO広報担当によると、ロシアの反政府バンドのプッシー・ライオット(2011年設立)の協力で設営でき、2月28日晩現在で既に700万ドル(約8億500万円)余りのファンドが集まっているという。
なお、プッシー・ライオットのメンバーであるナジェージダ・トロンニコワ氏(32歳)は、“旧式のファンド集めでは時間もかかり煩雑だ”として、暗号資産による寄付方式を絶賛している。
(注1)ブロックチェーン:暗号技術を使ってリンクされたブロックと呼ばれるレコードの増大するリストで、設計上、データの改変に強い。そこで、2つの当事者間の取引を効率的かつ検証可能で恒久的な方法で記録することができるオープンな分散型台帳の役割を成す。ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトという名前を使った人物(またはグループ)が、暗号通貨ビットコインの公開取引台帳としての役割を果たすために発明したものだが、その正体は現在まで不明のまま。
(注2)ビットコイン:中央銀行や単一の管理者を持たない分散型のデジタル通貨であり、仲介者を必要とせず、ビットコインネットワーク上でユーザーからユーザーへとビットコインを送信することで取引ができる。その取引はネットワークノード によって検証され、ビットコインのすべての取引履歴がブロックチェーンと呼ばれる台帳に分散的に記録される。2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物またはグループによって発明され、2009年1月初めから使用が開始されている。
(注3)イーサ:インターネット上の仮想通貨。分散アプリケーションのためのプラットフォーム「イーサリアム」で取引などを実行する際に、「燃料」としての役割を果たす。
(注4)NFT:ブロックチェーン上に記録される一意で代替不可能なデータ単位。画像・動画・音声、及びその他の種類のデジタルファイルなど、容易に複製可能なアイテムを一意なアイテムとして関連づけられる。代替可能性がないという点で、ビットコインなどの暗号通貨とは異なる。
(注5)テザー:テザー社(2015年設立)が2015年2月から発行している、米ドルと連動した暗号通貨。規模は小さいがユーロと連動したユーロ・テザーも発行されている。
(注6)パトレオン:主にYouTubeコンテンツ製作者(ユーチューバー)、ミュージシャン、ウェブコミック作者向けのクラウドファンディング・プラットフォーム。2013年に設立。本社はサンフランシスコ。
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欧州連合(EU)の首脳陣はここ数日、外交、経済・金融制裁、ウクライナへの武器供与などの取り組みを重ね、ロシアにウクライナへのこれ以上の侵略を断念さようとしている。ウクライナへの侵略の衝撃は、欧州の安全保障に対する姿勢を一新した。
仏誌
『レゼコー』は、ロシアの戦車が初めてウクライナに進入した24日以来、ヨーロッパが動き出している、と伝えている。米ロ首脳会談が実現しないことが判明し、当初は慎重だった欧州の指導者たちは、ロシアに対する圧力のレベルを上げ、ウクライナへの支援内容を数時間のうちに強化していった。大規模な抑止力だけが、ロシアに諦めさせることができると悟ったからだという。
EU27カ国は、4日間で複数の対ロシア制裁に合意した。追加の制裁措置も準備している。EU首脳陣は26日、すでに制裁下にあるロシアを、国際的な銀行間決済システムである国際銀行間通信協会(SWIFT)から遮断するという致命的な措置に踏み切った。ロシア中央銀行の資産を差し押さえ、ルーブルを守る能力を麻痺させることでも合意した。欧州連合(EU)の欧州連合外務・安全保障上級代表ジョセップ・ボレルは、「ロシア中銀の準備金の半分以上がG7諸国の施設に保管されているため、麻痺することになる」と述べている。フランス政府は、「ロシアにとってウクライナ戦争の代償を増やし、プーチンに計画の見直しを迫る」と説明している。
さらに、ボレル代表は、EUはウクライナ軍に4億5千万ユーロ(約580億円)の武器を提供することも明らかにした。「ウクライナ外務相は、ウクライナ人が操縦できる飛行機が必要だと言っている。加盟国の中にはこの種の航空機を保有しているところもあり、戦争に必要な他の兵器とともに提供するつもりだ」という。武器はすべて、「欧州平和ファシリティ」と政府間基金によって賄われる。
プーチン大統領と親しいとされているハンガリーのオルバン大統領も、この一連の制裁措置に賛同している。さらに、ロシアの脅威という現実を前にして、ドイツもタブーを破り、27日に、第二次世界大戦後、紛争地域への輸出を拒否してきた攻撃用武器を含む武器を、ウクライナに提供すると発表した。先週、ウクライナ軍に簡易ヘルメットを送ったことで嘲笑されたドイツ政府は、1000個の対戦車兵器、地対空ミサイル、大砲の納入を許可した。
ウクライナショックは、これまで欧州の真の防衛体制を構築することに消極的であった欧州諸国の姿勢を一新させた。ポーランドのモラヴィエツキ首相は、ポーランドもロシアの攻撃を恐れていると述べ、強力なヨーロッパの軍隊を構築するために「ヨーロッパの防衛費を2倍にする」ことを呼びかけている。
仏ラジオ放送局『ヨーロッパ1』は、ドイツが27日、国防の近代化のために1000億ユーロ(約13兆円)の例外的な予算を放出することを発表したと伝えている。オラフ・ショルツ首相は連邦会議での演説の際、ロシアのウクライナ侵攻に直面し、国の防衛費をドイツのGDPの年間2%以上に増やしたいと説明した。『ヨーロッパ1』は、この発表は、NATO諸国が設定した国内総生産(GDP)の2%を達成という目標を超えるものであり、近年、防衛強化をめぐり、NATOの足を引っ張り、定期的に米国の怒りを買ってきたドイツにとって大きな転機だと報じている。
ドイツは冷戦終結後、1990年の統一時に約50万人いた軍隊の規模を大幅に縮小し、現在はわずか20万人となっている。さらに、軍関係者は戦闘機や軍艦、戦車などの故障を定期的に訴えている。ウクライナへの侵攻は、ナチスの惨禍以来、平和主義を貫いてきたこの国にとって衝撃的な出来事となっている。モスクワのウクライナ戦争開始を受けて、陸軍トップ自らが、ドイツ軍は「裸」同然であると認めている。
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