日本は、男女平等ランキング(GGI、注後記)2023年版で世界146ヵ国中125位と先進国中どん尻である。そうした悪名高い日本において、1250年余りも続く伝統行事の神事・裸祭りに女性が初めて参加(但し、法被着用)したことから、男女不平等是正につながる新たな事例となるかと米メディが報じている。
5月11日付
『CNNニュース』は、伝統行事の“神事・裸祭り”も少子高齢化に勝てず女性初参加となるも、果たして男子優位の風習への変革となるかどうかと詳報している。
今年2月22日、愛知県西部稲沢市の国府宮神社(こうのみやじんじゃ、正式名称尾張大國魂神社(おわりおおくにたまじんじゃ、奈良時代後期建造)で1250年余りも続く伝統行事の神事・裸祭りに、41人の女性グループが初めて参加(法被着用)した。
この儀式は、日本の伝統と文化遺産に対する揺るぎない敬意を示している一方で、女性を排除すること(日本の伝統文化では、男性だけが純粋であると考えられている)は、日本の最大の問題の一つである男女不平等の典型例であった。
しかし、少子高齢化が急速に進む日本において、当該伝統行事も、男性参加者が激減する状況から、女性にも門戸を開放せざるを得ない状況に追い込まれている。
神事を司る実行委員の一人(57歳)は、“2023年の祭り参加者は僅か1,700人と、コロナ禍前の5分の1となっていた”とした上で、“元々女性参加を禁じていた訳ではないが、これ程多くの女性が参加したのは初めてのことだ”と語った。
同神事のメインイベント(もみ合い)の前行事(儺追笹奉納)を仕切ることになった「縁友会」の一人(56歳)は『CNNニュース』のインタビューに答えて、“日本では長らく男性を表に立て、女性は後ろで控える他なかったが、これからは少しでも女性の役割を表に出していきたい”とコメントした。
なお、今回を契機に、今後の日本における男女不平等の事態はどう展開していくか、以下の人たちが真摯に語っている。
●法政大学(1920年設立の私立大)衛藤幹子法学部名誉教授(ジェンダー政治学専門)
・今回の裸祭りで女性参加が歓迎されたのは、中心となるべき男性参加者の激減が背景にあるが、好機ととらえるべき。
・社会全体をみても、少子高齢化が日本経済に与える影響は甚大である以上、今こそ女性がどんどん労働市場に参画していくべき。
・すなわち、少子高齢化自体を契機に、男女不平等を是正していく絶好の機会。
・ただ、政治の世界では全く改善がみられず、欧州諸国で盛んに導入されている「クオーター制(議員候補者や議席の一定数を女性に対して割り当てる制度)」等の革新的政策の欠如が大きな原因。
・更に、人口減少危機は小さな街や伝統的行事に留まらず、いろいろな場面で様々な問題となっているのに、何故政府や企業は、女性は家庭に留まっているべきとの固定観念から脱しえないのか。
●法政大学・堅田香緒里社会学部准教授(社会政策・福祉社会学専攻)
・女性にはより多くの機会が与えられるようになっているとは言え、女性の社会進出について依然偏見や固定観念は根強く残っている。
・女性は、幼稚園の保育や介護などの下級職や介護職に限られており、一般的に男性よりも賃金が低い。
・家事、育児という足枷から、責任ある仕事に就きづらく、パートタイム等で甘受せざるを得ない。
●アマチュア相撲の今日和選手(こんひより、26歳、2018年Netflix製作ドキュメント映画主人公)
・女人禁制の相撲界(プロ)において、自分なりに相撲道を突き進んでいる。
・ただ、日本では男女平等に行きつくまで道のりは長く、しばしば困難に遭遇。
・例えば、男性相撲選手から、“相撲を続けると結婚ができなくなるから、早いうちに辞めた方が良い”と言われた。
なお、上記の人たちのコメントを裏付ける日本の事情は以下である。
① 2023年GGI評価で、日本は過去最低の125位。日本より後位は、インド(ヒンズー教)、サウジアラビア(イスラム教)等宗教上の男女差別が決定的な国やアフリカ等の途上国のみ。
② 厚生労働省公表のデータによると、2023年の出生数は75万8,631人と史上最低だった2022年から更に▼5.1%減で、かつ8年連続減少。
③ 合計特殊出生率も、2021年1.30、2022年1.26、2023年1.20と更に減少傾向にあって、人口維持するために必要とされる2.1を大幅に下回る。
④ 経済協力開発機構(OECD、1961年設立)が今年1月リリースした報告書によると、2023年の日本の労働人口(外国人労働者含む)は6,600万人だが、上記の出生率が続くとすると、今世紀末には3,200万人まで半減すると予測。
⑤ 日本航空(1953年設立)で今年4月、同社初の女性社長(鳥取三津子氏、59歳)が登用されたが、日本企業における女性管理職比率は依然12.7%と低迷。
⑥ 上川陽子衆議院議員(71歳、2000年初当選)が昨年9月、二十数年振りに女性外務相に選任されたものの、岸田文雄内閣の女性閣僚は全20名中僅か5名。
(注)GGI:経済・教育・政治参加などの分野での世界各国の男女間の不均衡(ジェンダー・ギャップ)を示す指標。2006年から、非営利財団の世界経済フォーラムが公表。指標は経済・教育・政治・保健の4分野の14の変数を総合してつけられている。2023年指標では、1~5位が北欧及びNZで占められ、6位ドイツ、15位英国、17位(アジアトップ)フィリピン、40位フランス、43位米国、104位韓国、107位中国、そして125位が日本で先進国最下位。日本より下位は中東のイスラム諸国、アフリカの途上国のみ。
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東北大の研究チームが4月1日、夫婦同姓義務の日本において、このまま進むと500年後に皆“佐藤姓”になるとの驚愕の試算結果を公表した。そこで欧米メディアも、夫婦別姓を認めない唯一の国にとっての皮肉な将来像だとの感触を以て報じている。
4月3日付英国
『ザ・テレグラフ』紙、4日付米
『CNNニュース』は、夫婦同姓義務が改定されない限り、500年先の日本では皆“佐藤姓”になってしまうとの皮肉な試算結果について大々的に報じている。
日本は、1898年に制定された民法に定められた夫婦同姓義務を依然堅持しており、2014年以降では国連加盟国の中で唯一の存在となっている。
その結果、全ての婚姻カップルが夫・妻どちらかの姓を選択せざるを得ず、データによると約95%が夫の姓を選択している。
かかる状況下、このまま夫婦別姓が認められないまま推移した場合、日本人の姓は将来どうなるのか試算した結果が公表された。
東北大(1907年創設の国立大学)高齢経済社会研究センターの吉田浩教授(50代半ば)率いるチームが、4月1日に以下の研究成果を発表している。
●選択的夫婦別姓を推進するThink Name Project(注1後記)の依頼で、夫婦別姓が採用されないまま推移するとした場合、日本人の名字はどうなるかを試算。
●『名字由来ネット(注2後記)』によると、日本の姓は30万余りあるが、全国トップは“佐藤姓” で約180万人おり、全人口の約1.5%。次に“鈴木姓”、続いて“高橋姓”。
●夫婦同姓義務化の下で、全国トップの“佐藤姓”は年々増加してきており、2023年では前年比+0.8%増えたとのデータ。
●そこで、日本で最も多い“佐藤姓”でシミュレーションをした結果、2446年までに日本人の半分が“佐藤姓”になり、更に2531年までに全員が“佐藤姓”になるとの試算結果。
●一方、少子高齢化に加えて、日本の婚姻率が年々低下していて、2023年の成婚数は前年比▼6%減の50万組弱と直近90年間で最低。
●その結果、出生率も減少の一途を辿っており、今後1千年間で大きく人口減少になると予想され、最悪の場合、日本民族が絶滅してしまう可能性。
なお、東アジアの多くの地域では、西欧に比べて姓の種類が少ない。
例えば、中国政府公表の2020年統計によると、全人口の約30%が王(ワン)、李(リー)、張(チャン)、劉(リウ)、陳(チェン)であり、また、人口の大多数(約86%)は、僅か100の姓となっているという。
(注1)Think Name Project:選択的夫婦別姓について考えるきっかけをつくり、男女の平等な婚姻、平等なキャリアを応援するプロジェクト。主催者は一般社団法人あすには(前身は、2018年設立の「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」)。
(注2)名字由来ネット:日本の名字の99%以上を網羅すると謳うウェブサイト。2011年設立。日本で唯一、名字を専門的に調査している機関。
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