既報どおり、北朝鮮は、10月10日の朝鮮労働党創建70周年記念日に、人工衛星打ち上げと称した長距離弾道ミサイルの発射実験をすると示唆していた。しかし、今回の記念日当日には実施せず、代わって2年3ヵ月振りの軍事パレードを行い、米韓などに軍事力を誇示しただけでなく、1ヵ月前に大々的に行われた中国の軍事パレードに対抗していると各国のメディアが伝えた。
10月10日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙(米国)は、「軍事パレードで、北朝鮮首脳が滅多にないライブ演説」と題して、「朝鮮労働党創建70周年に当る10月10日の記念式典での軍事パレードを前に、金正恩(キム・ジョンウン)第一書記は、3年振りにライブ演説を行い、米国主導の経済制裁にもめげず祖国に忠誠を尽くす人民を称賛すると述べた。一方、金氏が2011年末に首脳に就任して以来、中国から初めて送られた最高指導部メンバーの劉雲山(リュウ・ユンシャン)政治局常務委員を慮ってか、金氏の演説の中で、中国から中止を強く求められている核開発には触れなかった。」と報じた。
同日付
『Foxニュース』(米国、
『AP通信』記事引用)は、「金第一書記、米国の脅威に敢然と立ち向かうと演説」と題して、「金氏は演説の中で、米国からのいかなる脅威にも相対する準備ができていると述べた。数千人の軍人の行進に続き、新型の300ミリ・ロケット砲、無人機、KN-08改良型の長距離弾道ミサイル(飛行距離1万キロメーター)が披露され、今後とも核・ミサイル開発を継続するとの方針が示された。ただ、中国における1ヵ月前の軍事パレードと違って、世界の首脳の列席はなく、中国から送られた劉氏も、序列は5番目であり、省のトップにも就いていない指導部メンバーである。」と伝えた。
また、同日付
『ザ・テレグラフ』紙(英国)は、「金第一書記、“米国帝国主義”との抗戦を宣言」と題して、「金氏が演説で、米国からの挑発に敢然と立ち向かい、人民と祖国を守ると述べると、金日成(キム・イルソン)広場に集まった十数万人の民衆から拍手喝采を浴びた。なお、米国の国際安全保障研究所が今週リリースした調査報告によると、北朝鮮は2014年末時点で、既に10~16基の核兵器を保有していると推測されるという。ただ、核弾頭を装着するノドン・ミサイル(巡航距離1,300キロメーター)の信頼性には疑問があるとしている。」と報じた。
一方、同日付
『新華社通信』(中国)は、「中国、北朝鮮の記念式典に高官を派遣」と題して、「10月10日の北朝鮮の記念式典出席のため、中国は劉政治局常務委員を派遣したが、劉氏は、習近平(シュウ・チンピン)主席の親書を携えて、金第一書記との面談の際に手渡した。習主席は親書の中で、両国の重鎮がこれまで築いてきた中朝友好関係は、今後とも重んじられ発展させていくと述べている。」と伝えた。
また、
『KBSニュース』(韓国)は、「北朝鮮、大掛かりな軍事パレードで軍事力を誇示」と題して、「北朝鮮は軍事パレードで、大陸間弾道ミサイルから短・中距離ミサイルまで、最新兵器を登場させた。なお、同パレードを観閲する金第一書記の横には、中国高官の劉氏が立ったが、北朝鮮が関係強化を図っていたロシアからの代表は参加しなかった。」と報じた。
軍事関係筋は、大勢の市民と軍部隊を動員した記念式典について、治安や統治能力に十分な自信があることを示したい金氏の意気込みの表れだとみている。しかし、機械化部隊よりも軍人の数が目立ち、また、戦闘機も登場しなかったことから、中国を含めた世界からの経済制裁に遭っている北朝鮮が、燃料不足に苦しんでいる姿がみてとれるという。
また、北朝鮮関係筋によれば、金正恩体制になってから、“資金調達”の名目で、政府が一般家庭に資材や資金の提供を求める事例が常態化しているという。北朝鮮では、深刻な食糧難に見舞われた1990年代半ばに、国営企業の活動や配給制度がほぼ停止してしまったため、市民は国家経済に頼れなくなり、副業を探して闇市場での経済活動に傾注していったことから、ある程度の現金の持ち合わせのある家庭が増えているとみられる。
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