北朝鮮の今更ながらの禁煙法制定は、新型コロナウィルス感染症の恐ろしさを金委員長も自覚したため?【米・韓国メディア】(2020/11/07)
北朝鮮はこの程、禁煙法を制定した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長がヘビースモーカーであることは有名な話であるが、その委員長をして今更ながらの同法制定は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症によって特に呼吸器系に既往症のある患者が重篤に陥りやすいとの欧米諸国の症例に恐れをなしたものとみられる。ただ、同法制定によって同委員長も禁煙するかまでは不詳である。
11月5日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「依然COVID-19感染者ゼロと嘯く北朝鮮が禁煙法制定」
北朝鮮国営メディアの『労働新聞』(1945年創刊の日刊紙)は11月5日、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)が11月4日、全会一致で禁煙法を制定したと報じた。
同紙によると、政治・思想教育の施設、劇場、映画館、学校等の公共施設内、及び公共交通機関での喫煙が禁止され、違反した場合の罰則も定められたという。...
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11月5日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「依然COVID-19感染者ゼロと嘯く北朝鮮が禁煙法制定」
北朝鮮国営メディアの『労働新聞』(1945年創刊の日刊紙)は11月5日、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)が11月4日、全会一致で禁煙法を制定したと報じた。
同紙によると、政治・思想教育の施設、劇場、映画館、学校等の公共施設内、及び公共交通機関での喫煙が禁止され、違反した場合の罰則も定められたという。
名ばかりの最高人民会議が今回の禁煙法を制定したことに関し、ヘビースモーカーの独裁者、金正恩委員長の状況に関心が寄せられる。
すなわち、同委員長は国営メディア報道で、視察等の合間にしばしば喫煙を繰り返す姿が映し出されている。
一方、北朝鮮と国境を接する中国では今年初め、呼吸器系疾患であるCOVID-19発症が確認され、瞬く間に感染が拡大したことから、同委員長は国連制裁下の頼みの綱である中国と交易を遮断してでも感染流入を抑えるべく努めた。
ただ、同じく国境を接するロシアにおいても、感染が急拡大したこともあって、北朝鮮への感染が果たして防げたのか疑問が残る。
そうした中での突然の禁煙法制定のニュースであるが、韓国の『聯合(ヨナップ)ニュース』(1980年設立)は、自由主義圏と違い、北朝鮮の法制定は原案策定、議論、議員による投票という方法は取らず、突然提案されて全会一致で決められると解説した。
更に同メディアは、金委員長がヘビースモーカーということだけでなく、全成人男性の実に44%が喫煙者だとし、また、北朝鮮の慣習から女性の喫煙は不適切とされていると報じている。
そして、法制定当日の11月4日、北朝鮮政府機関のウェブサイト上に喫煙による疾患を訴え、かつ喫煙習慣を止める方法まで掲載されたという。
COVID-19患者に喫煙がどう影響を及ぼすか、世界における研究の結論はまだ出ていないが、長い間の研究により、喫煙によって重い肺疾患となったり、呼吸器系に悪影響を及ぼすことが確認されている。
そこで今年3月、金委員長は突然、同国最大の医療施設となる平壌総合病院を、同国建国75周年(2020年10月10日)までに建設すると発表した。
その際同委員長は、“首都平壌においても、残念ながら北朝鮮の健康医療施設は不十分かつ近代的でもない”と自覚し、“人民の健康促進のために、建国75周年記念事業として同病院を立ち上げることとした”と述べている。
また先月も、同委員長は、基準を満たさない防護用マスクの違法生産を取り締まるキャンペーンを打ち出し、更に、行政府からも、中国からの雲や砂塵とともにCOVID-19ウィルスが飛翔してくる恐れがあるので注意するように、との奇妙な警告が発信されている。
在韓米軍のロバート・アブラム司令官(59歳)は9月の記者会見で、北朝鮮がCOVID-19対応に非常に苦慮していることが窺える、とコメントした。
同司令官は、“COVID-19蔓延もあって、北朝鮮に対する国連制裁は威力を増していると考えられる”とし、“金委員長は今年1月末、国連制裁下の拠り所としている中国との国境を閉鎖したことから、北朝鮮の経済情勢は益々深刻化しているはずだ”と言及している。
更に同司令官は、“北朝鮮軍は兵士に対して射殺命令を出していて、これは正にCOVID-19感染流入を防ぐための形振り構わぬ方策だ”とも付け加えた。
ただ、北朝鮮から世界保健機関(WHO)に今週出された直近の報告でも、10月29日現在、同国にCOVID-19感染者は発生していないとされている。
しかし、韓国の『朝鮮日報』紙(1920年創刊)は11月4日、“北朝鮮では5,368人にも上るCOVID-19陽性者がおり、そのうち8人は外国人だと言われる”とし、“詳細な数字を含むことから、WHO関係者から寄せられた情報だ”と報じている。
一方、北朝鮮国営の『朝鮮中央通信』(1946年設立)は、“中央感染症防護委員会は感染防止のために、陸上、上空及び海上において徹底的な封鎖措置を講じ、感染症流入を防いでいる”とし、“同委員会の対策は更に強化され、国民一人一人に徹底されている”と自賛する報道を流している。
11月6日付韓国『ハンギョレ』紙(1988年創刊の左派系紙、韓国語で一つの民族の意):「北朝鮮で新たに制定の禁煙法はヘビースモーカーの金正恩にどう影響?」
11月5日付の北朝鮮『労働新聞』はその一面で、“11月4日に最高人民会議で制定された禁煙法によって、公共交通機関や公共施設内での喫煙が禁止される”とし、“違反者には罰則が適用される”と報じた。
ただ、多くの人が今後注視するとみられるのは、『労働新聞』や『朝鮮中央テレビ』(1953年設立)などでヘビースモーカー振りがしばしば報じられている金委員長に対して、同新法はどのように適用されるのか、という点である。
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反中国運動;かつて中国と蜜月関係にあったチェコも米国との連携に大きく舵切り【米メディア】(2020/08/20)
トランプ政権の対中国強硬政策が威力を増している。それに呼応するかのように、ほんの数年前まで中国と蜜月関係にあった東欧のチェコ(1993年にチェコスロバキアから分離して成立)が、やはり民主主義の方が重要だとして米国との連携に大きく舵を切っている。
8月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「プラハでのポンペオ国務長官歓迎がチェコの中国離れを象徴」
マイク・ポンペオ国務長官(56歳)は先週、訪問先のプラハ(チェコ)で熱烈歓迎を受けた。
これは、チェコが、かつて蜜月関係にあった中国と袂を分かち、米国資本及び民主主義の価値の方を選択したことを意味する。
ほんの数年前までは、チェコ・中国間は双方の首脳が頻繁に行き来する等、大変な友好関係にあって、習近平(シー・チンピン)国家主席(67歳)が2016年3月に同国を訪問した際には、21発の礼砲(注1後記)で異例の歓迎を受けている。...
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8月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「プラハでのポンペオ国務長官歓迎がチェコの中国離れを象徴」
マイク・ポンペオ国務長官(56歳)は先週、訪問先のプラハ(チェコ)で熱烈歓迎を受けた。
これは、チェコが、かつて蜜月関係にあった中国と袂を分かち、米国資本及び民主主義の価値の方を選択したことを意味する。
ほんの数年前までは、チェコ・中国間は双方の首脳が頻繁に行き来する等、大変な友好関係にあって、習近平(シー・チンピン)国家主席(67歳)が2016年3月に同国を訪問した際には、21発の礼砲(注1後記)で異例の歓迎を受けている。
そして、これを契機に、中国投資会社トップの葉簡明氏(イェ・チャンミン、43歳、民間企業大手の中国エネルギー・ファイナンス創始者、同社は2020年3月倒産)がプラハの大統領府ビル内に事務所を構える等、両国間は蜜月関係にあった。
しかし、葉氏が国際的スキャンダルを引き起こし、プラハから撤退するようになってから、両国間関係は悪化の一途を辿っている。
先週、アンドレイ・バビシュ首相(65歳)はポンペオ長官との共同記者会見に臨んだ際、中国は“自身が期待した程には全くチェコに投資しなかった”と非難した上で、“それに引き換え、米国からは2,500社余りが実際に投資し、当国に5万5千人以上の新規雇用を生み出してくれている”と称賛した。
一連の動きに関し、駐米チェコ大使館のハイネック・クモニチェック大使(57歳)は『VOA』のインタビューに答えて、“チェコは中国による投資が不十分で不満に思っている”とし、“目下は米国との連携強化方針で進んでいる”と明言した。
同大使によれば、チェコも米国も、“民主主義と人権は大原則、かつ外交政策において重要な柱のひとつ”と捉えているとした上で、“チェコのビロード革命(注2後記)を主導し、後に投票によって選出された最初の大統領に就任した故バーツラフ・ハベル氏(1936~2011年、人権擁護を求めた憲章77(反体制運動を象徴する文書)を起草)の遺産が脈々と伝え継がれている”と強調した。
これを象徴するかのように、バビシュ首相は会見で、ベラルーシで起こった不正選挙でアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65歳、1994年から長期政権)が再選された件に触れて、“チェコ近隣国でかかる事態が発生していることは遺憾である”とした上で、“ベラルーシ市民がチェコ市民と同様の自由の権利を堅持できるよう、欧州連合(EU)に具体的対応措置を求める”とも断言した。
これとは対照的に、中国は、欧州最後の独裁者と言われるルカシェンコ大統領を擁護しているとみられ、国営メディア『中国中央テレビ』が今週、反体制派のデモ行動の映像を流し、同大統領支持の姿勢を見せている。
また、同じく国営メディアの『環球時報』は、欧州の国々がこれまでの中国の貢献を蔑ろにして中国をのけ者扱いにしている、と嘆く記事を掲載した上で、同メディア主筆は、欧州各国は米国による“外交上の盾や戦略上の隷属者”になることを拒むべきだと要求している。
この主張に対して、クモニチェック大使は、“このような話はチェコ共産党々首からしか聞いたことがない”と一蹴した。
なお、同国共産主義者は、30年前の旧ソ連崩壊とともに発生したビロード革命を契機に一掃されており、チェコ共産党は上院議会では一席も獲得しておらず、また、下院においても近年は議席を大きく減らしている。
(注1)礼砲:国際儀礼上行われている、大砲を使用した軍隊における礼式の一種。空包を発射し、敬意を表明する。かつての大砲(前装砲)は連射ができず、再装填するには砲身の清掃や砲薬の充填などの作業が必要であったため、空砲の発射によって予め実弾が装填されていないことを証明し、敵意のないことを示すために行われたのが起源といわれている。礼砲の数は、受礼者の等級によって異なり、一般的には、元首・皇族;21発、副大統領・首相・国賓;19発、閣僚・特命全権大使・大将;17発等々、受礼者の等級によって異なる。
(注2)ビロード革命:1989年11月17日にチェコスロバキア社会主義共和国で勃発した、当時の共産党支配を倒した民主化革命。この革命は、1ヵ月後のルーマニア革命のように、大きな流血に至る事態は起こらなかったことから、軽く柔らかなビロード(ベルベット)の生地にたとえて名付けられた。
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