米国トランプ次期米大統領は大統領当選後初となる記者会見をトランプタワーで開いた。記者会見ではロシアが大統領選にサイバー攻撃で介入したとされる問題でロシアの関与を初めて認める発言をした。トランプ氏は「虚偽のニュース」を報道しているとして数社の報道機関に敵意をむき出しにしているが、記者会見では、ロシアと同氏の蜜月関係を暴露した文書の存在を最初に報道した「CNN」の記者の質問を拒否し、側近が喝采を送る場面もあった。
英国の元諜報機関(MI-6)の調査員が原文を書きオンラインサイト「バズフィード」が全文を公表した文書には、トランプ氏に不名誉な情報が記載されており、これを同氏は「米情報機関が流したかもしれない」と批判。文書には、民主党へのサイバー攻撃による昨年の選挙介入疑惑に加え、トランプ氏側近とロシア政府側が選挙期間中に頻繁に情報のやり取りをしたり、ロシア滞在中の不名誉な性的嗜好が暴露されており、ロシア側がトランプ氏への脅しに利用しているとされている。ロシアのある報道では、これは米国で反トランプ勢力が、同氏を弾劾するのに十分で深刻な「嘘」の文書であり、米国の最大危機であると報道している。
米国の報道機関の間でもトランプ寄り、反トランプ寄りなど温度差があり、米国メディア全体で見ても他の西欧諸国よりもトランプ氏に配慮した内容の報道が多く、どれが真実なのか見極めるのは至難の業である。
1月11日付
『ロイター通信』は「トランプが「偽」のロシア調書を巡り諜報機関をナチスの様だと批判」との見出しで以下のように報道している。
就任目前にして、トランプ氏と情報機関との対立が激化している。トランプ氏は記者会見で「情報機関による虚偽の情報が出たことは大変不名誉。ナチス・ドイツのようなやり方だ」と述べ、また初めて「ロシアがやったと思う」と、民主党全国大会にサイバー攻撃したのはロシアの可能性があると認める発言をした。高官が真偽が「検証されていない」とする文書はロシアの選挙介入などに関する2ページの覚書で、トランプ氏とオバマ大統領に先週渡されたもの。
「CNN」はこの文書について火曜に報道、「バズフィード」(オンラインサイト)は英国の元情報当局職員クリストファー・スティールが書いた35ページに及ぶ全文書を公開した。文書にはトランプ氏の名誉を傷つけるような行動やロシア側との取引関係が書かれている。
記者会見でトランプ氏は選挙期間中ロシアと接触したかという質問には答えず、ロシアへの融資や取引は無いと述べ、ロシアとの関係改善が目標で「プーチン氏に好かれたらそれは資産で、負債ではない」と自衛した。
約250人の記者で込み合ったトランプタワーでの記者会見では、(トランプ氏が)CNNのリポーターの質問を拒否し、側近が脇から拍手をしたりと自由な雰囲気で進行、一方、開場の外では警察のバリケード際に抗議に集まった10数人が「トランプを捨てろ」や「ロシアでなく米国に忠誠を」と書かれたプラカードを持って抗議した。
トランプ氏は会見で、製薬会社による薬価規定についても批判、記者による質問は就任後の政権運営に及び、早急にメキシコ国境の壁建設での交渉に当り、連邦裁判所判事を指名、保健福祉省(HHS)長官にトム・プライス氏起用が決まればオバマケア廃止又は改正に着手するとした。他には製造業での雇用を海外工場から取り戻す方法を話した。
同日付ロ
『ロシアインサイダー』は「トランプへの米情報当局からのブラックメールはネオコンのクーデターにつながるのか」との見出しで次のように報道している。
ロシアがハッキングでトランプ氏勝利に一役かっていたとする情報機関の文書が流出し、米国議会がトランプ氏の弾劾に動かないという保証はどこにもない。
先週オバマ氏とトランプ氏に渡された機密文書(2ページの要約)にはロシアがトランプ氏の個人情報や資産情報を握っており、昨年の選挙にも介入したとする補足も添えられていたという。
この報告文書は過去英国の元情報機関調査員が調べた覚書に基づくもので、米国情報機関も過去に事実だと確証した事も含まれている。トランプ氏側近とロシア政府は頻繁に情報のやり取りをしていたとの内容が書かれている。
しかし、文書には宛名も著者も日付もない。このような文書は通常作成元の参照や資料番号があるので、全く嘘の資料であることが分かる。更にロシア語の「コンプロマート(失墜させられる情報)」の意味の定義が説明されているが、ロシア語でも英語でも西洋の情報機関調査員なら初心者でも知っている言葉で、説明があるのもおかしい。「情報元A」や「情報元B」等と記載されているが、「Z」の後はどう書くのだろう。26か所からの情報しか得られない情報機関などない。
このような虚偽だらけの文書だが、とるに足らないという訳でなく、トランプ氏を政治的、法的にも弾劾出来る十分すぎる内容は危険を含む。これはトランプ氏をホワイトハウスから追い出そうというクーデター目的のためのものである。トランプ氏とロシア両方を侮辱するものであり、トランプ氏は売春婦らに尿をかけさせるという性的変質者であると「認定」され、ロシアはハッキングと米国政府に密偵がいるとの侮辱をうけた。
米国は史上最悪の危機に突入しようとしている。我々は非常に危険な時にある。トランプ選出により、両国の熱核爆弾による戦争が起きたなら、米国はネオコン対トランプの内戦となり、国会は同氏を、恐らく南部の、特定するなら、フロリダやテキサスで弾劾すると私は考えている。
危険を承知でいうと、彼が個人的にやることとは無関係に米国は存在の危機に直面しており、確かなことは多くの有権者が「腐敗撲滅」(ヘドロを掻き出す)のために彼を当選させたが、ネオコンがクーデターを仕掛けたなら、彼らはそれを守るために暴徒化するだろう。多くの国民は穏やかで平和を好むが、追い詰められると民主主義を守るために国のみならず地方行政も躊躇なく防衛のための武器を手に取る。
そのクーデターで大統領を熱望するヒラリーやマケインが、国家警備隊や米陸軍に鎮圧を要請するような事態は避けたいものである。私の憶測が違っていて、トランプへの攻撃がネオコンが諦める前の最後の「応援歌」であってほしい。
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鳩山元首相が、ロシアがウクライナから一方的に併合し実効支配しているクリミア半島を訪問した。日本政府はロシアの力によるクリミア半島の併合を認めない立場で、鳩山元首相に再三にわたって訪問しないよう要請していたが、これを押し切った形での訪問だ。この中で鳩山元首相は、「クリミアのロシア編入は、住民の意思に基づいた民主的な手続きをもって行われた正当な結果である」、「多くの日本人は、間違った情報を基に洗脳されている」と日本政府とは異なる見解を繰り返した。こうした鳩山元首相の動きに対し、菅官房長官は「首相まで経験した政治家として、あまりにも軽率で極めて遺憾だ」と述べ、米国国務省は「日本政府と同様に、鳩山元首相の行動と発言に深く失望している」と発言した。各国は、鳩山元首相のクリミア半島訪問について以下のように報じた。
3月12日付
『ウォールストリートジャーナル』(米国)は、「鳩山元首相がクリミア半島の幸せそうな生活を賞賛」との見出しで、「鳩山元首相がクリミア半島を訪問し、会見で住民の暮らしぶりについて”幸せそうに見える”と賞賛、またクリミア半島のロシアへの編入の可否を問う住民投票について言及し、”民主的な手続きに則って行われたもので、住民の意思に基づく正当な結果だ”とこれを評価した」と伝えた。また、鳩山元首相の一連の行動について「政府の方針と相容れないため日本政府が非難している」と報じた上で、「日本政府はロシアによるクリミア併合を力で現状を変えるものと認識し、西側のロシア制裁に加わったという経緯があるため、日本政府にとっては鳩山元首相の行動は看過できるものではない」と論評した。
3月12日付
『ロシアインサイダー』(米国)はジャパンタイムズの記事を引用し、鳩山元首相の行動について「首相まで経験した政治家として、あまりにも軽率で極めて遺憾だ」との菅官房長官の発言と、「力による現状変更を認めない日本政府の立場とは相容れないもので、日本が国際社会から誤解されかねない」との自民党の高村副総裁の発言を紹介した。
3月12日付
『タス通信』(ロシア)は鳩山元首相のパスポートを没収すべきとの意見が出る中、「鳩山氏が”(日本政府が)パスポートを没収するのならクリミアに移住する”と述べた」と報じ、「鳩山氏が困難な事態に陥った時はすぐにでも招待する」とのクリミア連邦管区大統領全権代表のベラベンツェフ氏の発言を紹介した。
3月12日付
『AFP通信』(フランス)は、鳩山元首相は「日本政府は、鳩山元首相に訪問を取りやめるよう再三にわたって申し入れていたが、これを振り切りあえて訪問した理由について、鳩山元首相は”実際に自分の目で見て確かめたかった”ためと発言している」と報じた。
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