南シナ海領有権問題に関し、フィリピンが提訴した国際仲裁裁判所(PCA)の裁定が下されるタイミングが秒読みとなってきた。そこで、改めて中国の海洋進出に対して支持する国々はどこで、日米と同様支持しないところはどの国々か、そして、日米を除く多くの国々が参画している中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の存在は、この問題にどういう影響を及ぼすのか、更には、直近のフィリピンの対応はどうなっているかについて、関連メディア報道をみてみたい。
6月13日付米
『ABCニュース』(
『AP通信』記事引用):「南シナ海問題に関する世界の賛否」
「・フィリピンが提訴した、南シナ海領有権問題に関わるPCA裁定が近々下される予定で、米国は、国連海洋法条約(UNCLOS、注後記)の締約国ではないが、同条約の締約国である中国に対して、PCA裁定に従うよう圧力。
・東南アジア連合(ASEAN);長きにわたり中国側と外交交渉での決着を模索してきたが進展なく、フィリピンが2012年末にPCAに提訴。ベトナムの対応もフィリピンに近く、領有権問題に直接関与しないインドネシアとシンガポールも中国に批判的。一方、カンボジアとラオスは中国支持。
・アフリカ及び中近東;中国国営メディア
『新華社通信』は先月、40ヵ国以上が中国支持と報道。また、直近の中国政府声明では、21ヵ国が加盟するアラブ連盟が中国支持を表明したと発表。
・欧州連合(EU)及び主要7ヵ国(G7);EUはUNCLOSに準ずる問題解決を支持。G7は更に突っ込んで、中国はPCA裁定に従うよう要求。
・豪州;国際法に基づく解決が望ましいとしているが、PCA裁定遵守については、自国が東ティモールと領有権問題を抱えているためか、煮え切らず。
・インド;中国の一帯一路戦略に基づく南進(インド洋進出)を快く思っておらず、米国意見に同調。なお、インドは、2014年にPCAが下したバングラデシュ言い分を支持する裁定を潔く受け入れ。
・日本;米国同様、いち早くフィリピンを支持。
・韓国;中国への経済的依存が強すぎるためか、PCA裁定を注視するとの意見表明のみ。
・台湾;中国の“九段線”と同様の領有権を主張し、中国とも領有権問題を抱えるが、PCA関与には反対。」
一方、6月12日付米
『ユーラシア・レビュー通信』:「中国主導のAIIB、南シナ海開発に関わる融資金では採決が分断?」
「・中国主導のAIIBは、出資金比率に基づいて投票権取得。
・重要事項は76%の賛成票が必要だが、中国のみ25%の投票権を保持し、拒否権発動が可能。
・しかし、中国が自国の主権内と主張する“九段線”内において、共同開発地域(JDA)に関わる開発資金拠出について審議するとなると、以下のように賛否が分かれると思われ、中国以外のAIIB参加国の影響力も強いと分析。
・中国派(計47%);中国(26%)、中東(10%)、ロシア(6%)、中央アジア(6%)
・反中国(計47%);欧州(26%)、ASEAN(10%)、インド(8%)、韓国(4%)
・浮動票(計 6%);トルコ(3%)、ブラジル(3%)、南アフリカ(1%)
*四捨五入の関係で、各国別投票率合計は100%にならない。」
また、同日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙(
『ロイター通信』記事引用):「ヤサイ氏、PCA裁定が下されるまで中国と対話の意思なしと発言」
「・ロドリゴ・ドゥテルテ新大統領(71歳)から外相に任命すると言われているペルフェクト・ヤサイ氏(69歳)は6月10日、PCA裁定が下されるまで中国側と領有権問題について協議する意向はないと発言。
・これは、フィリピン前外相や米国安全保障専門家からドゥテルテ氏に、無条件で中国側と二国間協議をするのは得策ではないとの進言に続く話。
・なお中国側は6月8日、フィリピン側が二国間協議の提案を無視していると非難する声明を発表。」
(注)UNCLOS:正式名称は「海洋法に関する国際連合条約(United Nations Convention on the Law of the Sea)」。海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月に第3次国連海洋法会議にて採択され、同年12月に署名開放、1994年11月に発効した条約。2016年3月現在、167ヵ国・地域とEUが批准(日本は1996年6月批准)しているが、米国、トルコ、ペルー、ベネズエラは未締結。
閉じる
4月30日付米
『AP通信』の報道記事「ロシア大統領府、安倍首相がプーチン大統領を訪問と発表」:
「・ロシア大統領府は4月30日、安倍首相が5月6日に訪ロの上、プーチン大統領と会談すると発表。
・2014年冬季オリンピックが開かれた黒海沿岸のソチで首脳会談が持たれる予定で、主題は第二次大戦後に両国間で依然揉めている北方領土問題。」
5月2日付米
『ユーラシア・レビュー通信』の報道記事「安倍首相、プーチン大統領と首脳
会談」:
「・ロシア大統領府の発表では、首脳会談の主要議題は両国間の通商、経済、人道支援などだが、特に、両国間で未だ締結されていない平和条約を進展させる前提となる、北方領土問題も討議される由。...
全部読む
4月30日付米
『AP通信』の報道記事「ロシア大統領府、安倍首相がプーチン大統領を訪問と発表」:
「・ロシア大統領府は4月30日、安倍首相が5月6日に訪ロの上、プーチン大統領と会談すると発表。
・2014年冬季オリンピックが開かれた黒海沿岸のソチで首脳会談が持たれる予定で、主題は第二次大戦後に両国間で依然揉めている北方領土問題。」
5月2日付米
『ユーラシア・レビュー通信』の報道記事「安倍首相、プーチン大統領と首脳
会談」:
「・ロシア大統領府の発表では、首脳会談の主要議題は両国間の通商、経済、人道支援などだが、特に、両国間で未だ締結されていない平和条約を進展させる前提となる、北方領土問題も討議される由。」
4月30日付ロシア
『イタルタス通信』の報道記事「プーチン、安倍両首脳が二国間協力関
係につき協議」:
「・今回の安倍首相の訪ロは、プーチン大統領の正式な招待に応えるもの。
・ロシア大統領府は、首脳会談で両国間の関係改善につき突っ込んだ協議が行われると期待。」
5月1日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「安倍首相、ロシア
との領土問題交渉で強気の姿勢」:
「・安倍首相は4月30日、プーチン大統領との首脳会談に当り、北方領土問題について強気の姿勢で臨むと発言。
・同首相は、長年懸案の北方4島の帰属問題と、未締結の平和条約について、ロシア側と粘り強く交渉していくとコメント。」
閉じる