中国、李克強首相が経済の危機的状況を報告(2022/05/27)
中国は現在、2020年初頭以来最悪の新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われており、上海など大都市での厳しい自宅待機命令と渡航制限によって感染を抑え込もうとしている。そうした厳しいゼロコロナ政策によって打撃を受けた経済を立て直すために、25日に、全国規模の緊急テレビ会議が開かれた。李克強首相は会議の中で、厳しい経済状況について報告している。
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『CNBC』によると、中国国営メディアは25日、李克強首相が緊急会議の場で、中国経済がいくつかの分野で、パンデミックに襲われた2020年よりも深刻な状態にあると述べたことを報じた。李克強首相は、中国経済の通年見通しを決定するための「重要な時期」にあると警告し、第2四半期の成長と失業率の低下のために「懸命に働く」よう関係者に呼びかけたという。
中国銀行のZong Liang主席研究員は、このような規模の会合は何年も行われておらず、一度にこれほど多くの階層の関係者が参加した会合は前例がないと述べた。...
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『CNBC』によると、中国国営メディアは25日、李克強首相が緊急会議の場で、中国経済がいくつかの分野で、パンデミックに襲われた2020年よりも深刻な状態にあると述べたことを報じた。李克強首相は、中国経済の通年見通しを決定するための「重要な時期」にあると警告し、第2四半期の成長と失業率の低下のために「懸命に働く」よう関係者に呼びかけたという。
中国銀行のZong Liang主席研究員は、このような規模の会合は何年も行われておらず、一度にこれほど多くの階層の関係者が参加した会合は前例がないと述べた。通常、中国政府の政策は政府のいくつかの層を通して伝達されるため、今回のようなあらゆる層に直接語りかけるような会議は効率が良いと指摘した。ゴールドマンサックスのアナリストたちは、このテレビ会議を「全国の省、市、県レベルの地方政府関係者」を含めた会議であったと説明している。仏『RFI』は、会議には全国から10万人が参加したと報じている。
専門家たちは、李克強首相が会議の場で、第2四半期に成長を達成するよう求めたことについて、「今年3月初めに設定した5.5%前後の成長目標が非常に厳しいということを暗に認めたのかもしれない」と述べている。『ブルームバーグ』の調査では、今年の経済成長率はわずか4.5%と予想されており、モルガン・スタンレーは3.2%まで下方修正している。香港『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、今年に入ってからの中国経済の急激な反転は、3月下旬からの上海での強硬なロックダウンが一因となり、消費財から電気自動車まで、幅広い産業分野に打撃を与えたと伝えている。例えば、上海では4月に新車が1台も売れず、全国の新エネルギー車の販売台数は前月比で38.3%減少した。
李首相は、税収が影響を受けていること、一部の地方が中央政府に借金を要請していることも明らかにした。土地の売却は依然として地方自治体の主要な財源であるものの、ここ数カ月で不動産収入が30%近くも減少しているという。李克強は、さらなる減税と雇用支援を約束した。
なお、英『エコノミスト』は、中国では16歳から24歳の若者の都市部での失業率は昨年平均で14%強であったが、今年4月には18.2%に上昇し、2018年の調査開始以来最高水準となったと伝えている。『サウスチャイナモーニング・ポスト』も、中国の厳格なゼロ金利政策の下、ハイテクから新エネルギー自動車に至るまで、あらゆる業界で新入社員の内定取り消しが急増しており、中国の若者に就職の危機が迫っていると伝えている。
20年以上ぶりに、内定を持たない卒業生の数が、内定を持つ卒業生の数を大幅に上回る可能性があると見られている。上海のトップのロースクールである華東政法大学から流出した文書によると、5月上旬の時点で就職先が決まった卒業生は5人に1人に過ぎなかった。同校は中国の公式メディアに対し、流出したデータは実像を表していないと述べたが、それ以外の数値は明らかにしなかった。
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豪印暫定FTA協定:インドは中国に代わる主要貿易国になれるのか(2022/05/02)
オーストラリアとインドは4月2日、暫定的な自由貿易協定(FTA)について合意したことを発表。「豪印経済協力・貿易協定(ECTA)」と題されたこの協定は、両国間の貿易を飛躍的に増加させるだけでなく、オーストラリアの中国へのサプライチェーン依存を解消することを目的としている。しかし、一部のメディアは、インドは中国の代わりにはなれないと報じている。
香港の
『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、オーストラリアとインドとの協定は、地政学的変化の中で、オーストラリアが切望していた貿易の多様化と安全保障上の同盟国であるインドとの関係を深める手段として有効だと見られていると伝えている。オーストラリアのモリソン首相は、豪印協定は民主主義諸国がサプライチェーンの安全性を確保するために協力するというメッセージであり、パンデミックが中国を中心とした供給網に大混乱を招いて以来、その必要性がより一層高まっていると述べている。...
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『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、オーストラリアとインドとの協定は、地政学的変化の中で、オーストラリアが切望していた貿易の多様化と安全保障上の同盟国であるインドとの関係を深める手段として有効だと見られていると伝えている。オーストラリアのモリソン首相は、豪印協定は民主主義諸国がサプライチェーンの安全性を確保するために協力するというメッセージであり、パンデミックが中国を中心とした供給網に大混乱を招いて以来、その必要性がより一層高まっていると述べている。
シドニー工科大学教授でチーフエコノミストのティム・ハーコート氏は、今回の協定は「経済的というより地政学的」なものであり、総選挙を控えている豪政府は有権者に対して複数の主要貿易相手国を持つことを示す必要があったと述べている。一方で「インドが新しい中国になることはあり得ない」と指摘している。豪シンクタンク「パースUSAsiaセンター」の政策研究員で豪印関係を専門とするソニア・アラクカル氏は、「オーストラリアは、インドであれ中国であれ、一つの貿易相手をやみくもに優遇することはできず、多様化戦略を追求しなければならないことを学んだ」と述べている。
アデレード大学国際貿易研究所のピーター・ドレイパー事務局長は、完全な貿易協定を結んだとしても、オーストラリアにとってインドは中国に取って代わることはできない、と主張している。インドは汚職や「制度的空白」など、国内の制度的な弱点を抱えており、より規制の厳しい環境に慣れている起業家にとっては、インドでのビジネスは困難なものだという。
オーストラリアの政治アナリストで米誌「ディプロマット」のコラムニストであるグラント・ワイス氏は、インドは中国共産党政府が過去20年にわたって行ってきたような開発を指示できる中央集権的メカニズムに欠けていると指摘している。
米『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』によると、ロングアイランド大学のウダヤン・ロイ教授も、「インドの市場の非効率性は、商品市場や資源市場において非常に根深く、近い将来に改善されるとは思えない。例えば、労働市場では、10人以上の企業は解雇ができない。これは、企業が大きくなり、規模の経済を実現するための阻害要因になる」と指摘している。さらに、公共事業、通信、運輸、エネルギー、銀行など経済のいくつかの分野で、政府と大企業の癒着があり、競争を制限し、資源を浪費しているという。例えば、「銀行は経済的な基準ではなく、政治的な基準に従って企業に資源を配分している」という。
シンクタンク「Sibylline」のアジア太平洋地域担当リードアナリストであるGuo Yu博士は、「インドと中国は発展段階が異なるため、一方が他方に取って代わるという考え方をするのは助長的(あるいは有益)ではない。」と述べている。また、「インドは若い人口を大量に抱え、労働集約的な製造業でますます優位に立ち、その民主的な政治制度から多くの欧米諸国から好まれるパートナーとなっている。これとは対照的に、中国はここ数年、中国と米国の戦略的対立の激化に支えられ、敵対的とは言えないまでも厳しい地政学的環境に直面している。欧米の多くの政府は中国に対して強硬な姿勢をとり、中国の貿易や投資に対する監視を強化している。」それでも、「中国は比較的よく整備されたインフラ、高度なスキルを持つ労働力、急速に拡大する中間層を抱える広大な市場により、政治的・地政学的な課題にもかかわらず、国際ビジネスにとって魅力的な経済国であり続けている。」そのため、インドが中国に代わる存在になることは難しいと見ている。
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