北朝鮮、国連制裁決議対象外の“中国製”衣料品下請けで外貨稼ぎ【米・英・アジアメディア】(2017/08/14)
北朝鮮の核・ミサイルの脅威が増す中、国連安全保障理事会は追加制裁を決議して、石炭や鉄鉱石、海産物などの輸出を禁止するほか、海外で働く北朝鮮労働者を現在の水準から増やすことや北朝鮮との新たな合弁事業などを禁じた。しかし、制裁対象外となっている衣料品縫製では、中国の衣料品貿易会社の下請けとして、“中国製”衣料品の輸出で外貨稼ぎを行っている。
8月14日付米
『CNBCニュース』:「北朝鮮の衣料縫製工場、中国の下請けで“中国製”衣料品縫製で収益確保」
丹東(タントン、中国北東部遼寧省東端の北朝鮮国境付近の都市)在の貿易商によれば、北朝鮮の縫製工場で作られ、“中国製”のラベルを付けて海外に輸出される衣料品取引が増大しているという。国連安保理が新たに採択した北朝鮮追加制裁には、衣料品の輸出は含まれておらないため、中国衣料品貿易会社にとって、中国より安価な労賃(中国のほぼ半分)での取引で多くの収益が上げられるとする。...
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8月14日付米
『CNBCニュース』:「北朝鮮の衣料縫製工場、中国の下請けで“中国製”衣料品縫製で収益確保」
丹東(タントン、中国北東部遼寧省東端の北朝鮮国境付近の都市)在の貿易商によれば、北朝鮮の縫製工場で作られ、“中国製”のラベルを付けて海外に輸出される衣料品取引が増大しているという。国連安保理が新たに採択した北朝鮮追加制裁には、衣料品の輸出は含まれておらないため、中国衣料品貿易会社にとって、中国より安価な労賃(中国のほぼ半分)での取引で多くの収益が上げられるとする。
韓国貿易投資振興公社(KOTRA)によると、衣料品輸出は石炭や他の鉱物資源に次いで2番目の輸出額を誇り、2016年では7億5,200万ドル(約827億円)に上るという。なお、2016年の北朝鮮全体の輸出額は28億2,000万ドル(約3,100億円)と、前年比+4.6%増となっている。
また、中国の税関によると、今年上半期の中国から北朝鮮向けの布やその他衣料品原料の輸出額は、前年比+30%増の16億7,000万ドル(約1,840億円)に上っているという。
8月13日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「実際は北朝鮮で縫製の“中国製”衣料品が海外向けに輸出」
国連安保理は8月5日、北朝鮮による度重なる核・ミサイル開発の推進を罰するため、追加の制裁決議を採択した。これによって、北朝鮮の30億ドル(23億英ポンド、約3,300億円)に上る輸出額は3分の1減少させられるとする。
しかし、衣料品の輸出取引は制裁対象外であるため、中国の衣料品貿易会社の下請けとして、“中国製”製品の縫製事業が更に活発化している。丹東の衣料品貿易商から日本、米国、カナダ、欧州、韓国、ロシア向けに輸出された“中国製”製品は、全てが北朝鮮縫製品であるという。
丹東の貿易商の話では、安価な北朝鮮労賃のお蔭で、縫製費用が75%に抑えられるという。これは当たり前の話になっているというが、西側諸国の有名衣料品ブランドの全てが承知しているということではない模様である。
現在は閉鎖されている開城(ケソン)工業団地において、当時の北朝鮮労働者の賃金が月平均160ドル(124英ポンド、約1万8,000円)だったのに対して、中国人の労賃は月450~750ドル(348~580英ポンド、約4万9,500~8万2,500円)であった。そして、現在北朝鮮で中国衣料品会社の下請けをしている北朝鮮人の労賃は、開城での労賃より遥かに低いという。
8月14日付アジア
『アジアン・コレスポンデント』オンラインニュース:「北朝鮮縫製品が“中国製”として取引」
丹東貿易商の話では、北朝鮮人の労賃は月平均75~160ドル(約8,300~1万8,000円)であるのに対して、中国では450~750ドル掛かるという。そこで、北朝鮮で縫製した衣料品が、日本、米国、韓国、欧州向けに“中国製”として販売されているという。
また、米朝間緊張が高まる中、それにはお構いなしに中国人旅行者の北朝鮮入国が増えている。
『ロイター通信』が中国人旅行者にインタビューしたところでは、北朝鮮の暮しがどうなっているか覗いてみたいという人が多く、一方、北朝鮮の最近のミサイル発射実験についてはほとんどが意に介していないという。
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米国抜きのTPPの行方は?(2)<米・英・NZ・シンガポール・アジアメディア>(2017/05/21)
5月5日付
Globali「米国抜きのTPPの行方は?」の中で、“米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)の参加11ヵ国による首席交渉官会合が、5月初めにトロント(カナダ)で開催された。日本と豪州が中心になって、米国抜きでもまずTPPを発効させ、米国が将来復帰できる道を残しておく戦略で会合をリードしようとしたが、メンバー国間に温度差があり、結局具体的進展はみられなかった”と報じた。そしてこの程、アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚会合開催の機会に、TPPメンバー国による閣僚会議を開いたが、今年11月開催のAPEC首脳会議までに、TPPを早期に発効させる選択肢につき各国で検討した上で再度協議するとの共同声明を出しただけで終わっている。
5月21日付米
『CNBCニュース』:「TPPメンバー国、米国抜きでの協定締結に向けて努力することを確認」
ハノイ(ベトナム)で開催されたAPEC閣僚会議の機会を捉えて、TPPメンバー11ヵ国の担当閣僚が別途会合を開き、TPPを“迅速に”発効させる方策について検討していくことで合意した旨、5月21日に共同声明として発表した。今年11月中旬にベトナムで開催されるAPEC首脳会議までに、当該検討結果を持ち寄ることとなった。...
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5月21日付米
『CNBCニュース』:「TPPメンバー国、米国抜きでの協定締結に向けて努力することを確認」
ハノイ(ベトナム)で開催されたAPEC閣僚会議の機会を捉えて、TPPメンバー11ヵ国の担当閣僚が別途会合を開き、TPPを“迅速に”発効させる方策について検討していくことで合意した旨、5月21日に共同声明として発表した。今年11月中旬にベトナムで開催されるAPEC首脳会議までに、当該検討結果を持ち寄ることとなった。
ニュージーランドのトッド・マクレー貿易担当相は、米国の離脱でTPPが無効になったとは考えておらず、引き続きTPP発効に向けて努力していく意向だと語った。また、豪州のスティーブン・シオボ貿易・観光・投資担当相も、米市場に期待してのTPP発足であったが、TPP協定そのものの意義は依然高いものであるから、まだ先に進む余地があるとした上で、将来米国が復帰することに期待したいと表明した。
しかし、TPPメンバー11ヵ国の共同声明を受けて、米国のロバート・ライトハイザー通商代表は、米国のTPP離脱の決定には何ら変更がなく、トランプ政権は関係国と二国間交渉を行う方針であるとコメントしている。
同日付英
『ロイター通信英国版』:「TPPメンバー国、米国拒絶にも拘らずTPP発効に向けて前進することで合意」
TPPメンバー11ヵ国は、引き続きTPP発効に向けて協議を継続していくことで合意したものの、メンバー国間では、米国抜きのTPPについて評価がかなり分かれている。例えば、ベトナムやマレーシアは、米国の大市場へのアクセスを求めてTPPに署名したことから、米国が離脱した以上、TPP内条件の再協議を要求している。
なお、TPP11ヵ国は7月に日本で首席交渉官会合を持ち、11月のメンバー国首脳会議での提案に繋げられるよう協議を続ける予定である。
同日付ニュージーランド
『ニュージーランド・ヘラルド』紙:「TPPメンバー国、ハノイでの会合で次の首脳会議での決定に向けて検討課題と日程案につき合意」
ハノイでのTPPメンバー11ヵ国閣僚会議を終えて、マクレー貿易相は5月21日、メンバー国間にバラツキはあるものの、TPP発効に向けてまとまっていこうとしていると語った。また、同貿易相は、米国抜きの場合のTPPの有益性について評価するよう事務方に指示したという。
なお、ニュージーランドとしては、同国の農家・輸出業者のためにTPPのような自由貿易協定に加わっていくことが重要であり、もしそうでないと、既に優遇取引協定を有している豪州他に競争力で負けることになるとしている。
同日付シンガポール
『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「シンガポール、TPP発効に向けて努力することを全面支持」
TPPメンバー11ヵ国の共同声明とは別に、シンガポールのリン・フン・キァン通商産業相は、TPPは加盟国に有益となるだけでなく、発効後のTPPに非メンバー国を誘致することもできるので、何としてでもTPPを前進させるために検討を続ける旨表明した。
なお、同相は省庁高官に対して、TPPを速やかに発効させるために必要な選択肢を導き出すべく、今後数ヵ月かけて検討するよう指示を出した。
同日付アジア
『アジアン・コレスポンデント』オンラインニュース:「TPPメンバー国、米国抜きでのTPP発効に向けて努力していくことで合意」
当初12ヵ国が署名したTPP協定であるが、米国の離脱宣言もあって、これまでに批准したのは日本とニュージーランドのみである。両国は、基本合意までに費やした過去7年間の交渉を無駄にしないためにも、TPP発効に向けて前進すべきと主張している。
一方、ベトナムとマレーシアは、米国の大市場へのアクセスに期待してTPPに署名したため、米国抜きの場合には、TPP内条件の見直しが必要だと表明している。
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