北朝鮮の厳しい統制下にある国営放送は今月25日、映像から明らかに体重が減少したとみられる金正恩・朝鮮労働党総書記の姿に「北朝鮮の国民全員が心を痛めている」と述べる北朝鮮住民の様子を報じている。
6月28日付
『ロイター通信』は「金正恩の痩せた姿を心配する北朝鮮国民、国営放送」との見出しで以下のように報道している。
北朝鮮の厳しい統制下にある国営放送が、明らかに体重が減少した金正恩の姿に「北朝鮮の全員が心を痛めている」北朝鮮住民の様子を報じた。朝鮮中央テレビは25日、「敬愛する総書記の痩せた姿に国民はとても心を痛めている。皆が涙している。」と語る男性へのインタビューを放送。金氏と党の高官が朝鮮労働党の会合後に参加したコンサートの映像を北朝鮮住民が街の大型スクリーンで見ている様子が報じられた。同国で金氏の健康状態に関する報道は珍しく、放送では体重減少の理由について詳細には触れられていない。
6月初旬には北朝鮮を監視する韓国のウェブサイト「NKニュース」が、手首回りが細り、以前より痩せて見えると分析していた。北での金氏の権力掌握や後継者の不透明さから、国際メディア、諜報機関、専門家は彼の健康状態を監視している。
昨年4月には建国の父で祖父の故金日成の生誕記念日の式典を欠席し、5月まで姿を見せなかったことから健康への憶測が広まった。2014年に国営メディアは、金氏が公の場に長い間姿を見せず、不調説を流していた。
同日付米国『ブルームバーグ』は「痩せた金氏に“心を痛める”北朝鮮国民、国営TVが報じる」との見出しで以下のように報道している。
北朝鮮は、劇的に痩せた金正恩氏に国民が涙を流している、と統制下の国営テレビで伝えた。北朝鮮は国民への報道に注意を払っており、党首の健康状態が話題にされることが珍しい。8分の映像の一部で、朝鮮労働党を称える新たなプロパガンダ曲のコンサートについての感想を述べる市民が各所からインタビューされた。
金氏は今月4日に公の場に姿を見せ、痩せたとみられていたが、見た目で病気とは確認できない。心臓病歴のある家系のため、外国機関は同氏の体重動向を北の体制監視のため追跡している。
精力的な金氏は10日前に開催した朝鮮労働党の会合で、同国の食糧不足に警鐘を鳴らし、米国とは「対話にも対決も準備しなければならない」と述べていた。太っていて喫煙者である37歳の金氏は、何年も健康状態が噂されてきた。公の場に姿を見せなかった最長期間は2014年の6週間で、再び姿を見せた際は杖を突いていたため、痛風を患っていたとみられている。
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北朝鮮はこの程、禁煙法を制定した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長がヘビースモーカーであることは有名な話であるが、その委員長をして今更ながらの同法制定は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染症によって特に呼吸器系に既往症のある患者が重篤に陥りやすいとの欧米諸国の症例に恐れをなしたものとみられる。ただ、同法制定によって同委員長も禁煙するかまでは不詳である。
11月5日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「依然COVID-19感染者ゼロと嘯く北朝鮮が禁煙法制定」
北朝鮮国営メディアの『労働新聞』(1945年創刊の日刊紙)は11月5日、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)が11月4日、全会一致で禁煙法を制定したと報じた。
同紙によると、政治・思想教育の施設、劇場、映画館、学校等の公共施設内、及び公共交通機関での喫煙が禁止され、違反した場合の罰則も定められたという。
名ばかりの最高人民会議が今回の禁煙法を制定したことに関し、ヘビースモーカーの独裁者、金正恩委員長の状況に関心が寄せられる。
すなわち、同委員長は国営メディア報道で、視察等の合間にしばしば喫煙を繰り返す姿が映し出されている。
一方、北朝鮮と国境を接する中国では今年初め、呼吸器系疾患であるCOVID-19発症が確認され、瞬く間に感染が拡大したことから、同委員長は国連制裁下の頼みの綱である中国と交易を遮断してでも感染流入を抑えるべく努めた。
ただ、同じく国境を接するロシアにおいても、感染が急拡大したこともあって、北朝鮮への感染が果たして防げたのか疑問が残る。
そうした中での突然の禁煙法制定のニュースであるが、韓国の『聯合(ヨナップ)ニュース』(1980年設立)は、自由主義圏と違い、北朝鮮の法制定は原案策定、議論、議員による投票という方法は取らず、突然提案されて全会一致で決められると解説した。
更に同メディアは、金委員長がヘビースモーカーということだけでなく、全成人男性の実に44%が喫煙者だとし、また、北朝鮮の慣習から女性の喫煙は不適切とされていると報じている。
そして、法制定当日の11月4日、北朝鮮政府機関のウェブサイト上に喫煙による疾患を訴え、かつ喫煙習慣を止める方法まで掲載されたという。
COVID-19患者に喫煙がどう影響を及ぼすか、世界における研究の結論はまだ出ていないが、長い間の研究により、喫煙によって重い肺疾患となったり、呼吸器系に悪影響を及ぼすことが確認されている。
そこで今年3月、金委員長は突然、同国最大の医療施設となる平壌総合病院を、同国建国75周年(2020年10月10日)までに建設すると発表した。
その際同委員長は、“首都平壌においても、残念ながら北朝鮮の健康医療施設は不十分かつ近代的でもない”と自覚し、“人民の健康促進のために、建国75周年記念事業として同病院を立ち上げることとした”と述べている。
また先月も、同委員長は、基準を満たさない防護用マスクの違法生産を取り締まるキャンペーンを打ち出し、更に、行政府からも、中国からの雲や砂塵とともにCOVID-19ウィルスが飛翔してくる恐れがあるので注意するように、との奇妙な警告が発信されている。
在韓米軍のロバート・アブラム司令官(59歳)は9月の記者会見で、北朝鮮がCOVID-19対応に非常に苦慮していることが窺える、とコメントした。
同司令官は、“COVID-19蔓延もあって、北朝鮮に対する国連制裁は威力を増していると考えられる”とし、“金委員長は今年1月末、国連制裁下の拠り所としている中国との国境を閉鎖したことから、北朝鮮の経済情勢は益々深刻化しているはずだ”と言及している。
更に同司令官は、“北朝鮮軍は兵士に対して射殺命令を出していて、これは正にCOVID-19感染流入を防ぐための形振り構わぬ方策だ”とも付け加えた。
ただ、北朝鮮から世界保健機関(WHO)に今週出された直近の報告でも、10月29日現在、同国にCOVID-19感染者は発生していないとされている。
しかし、韓国の『朝鮮日報』紙(1920年創刊)は11月4日、“北朝鮮では5,368人にも上るCOVID-19陽性者がおり、そのうち8人は外国人だと言われる”とし、“詳細な数字を含むことから、WHO関係者から寄せられた情報だ”と報じている。
一方、北朝鮮国営の『朝鮮中央通信』(1946年設立)は、“中央感染症防護委員会は感染防止のために、陸上、上空及び海上において徹底的な封鎖措置を講じ、感染症流入を防いでいる”とし、“同委員会の対策は更に強化され、国民一人一人に徹底されている”と自賛する報道を流している。
11月6日付韓国『ハンギョレ』紙(1988年創刊の左派系紙、韓国語で一つの民族の意):「北朝鮮で新たに制定の禁煙法はヘビースモーカーの金正恩にどう影響?」
11月5日付の北朝鮮『労働新聞』はその一面で、“11月4日に最高人民会議で制定された禁煙法によって、公共交通機関や公共施設内での喫煙が禁止される”とし、“違反者には罰則が適用される”と報じた。
ただ、多くの人が今後注視するとみられるのは、『労働新聞』や『朝鮮中央テレビ』(1953年設立)などでヘビースモーカー振りがしばしば報じられている金委員長に対して、同新法はどのように適用されるのか、という点である。
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