広島でのオバマ大統領スピーチの背後にあるもの(2016/05/30)
オバマ大統領が広島を訪れ、スピーチを行った。その中でオバマ大統領は明確な謝罪の言葉を避けながら、戦争を始める人間の愚かさ、戦争のもたらす惨事、これから人類が採るべき道について語った。日本国内の報道では今回のオバマ大統領の広島訪問、スピーチは概ね好意的に受け入れられていたが、米、英のメディアはこれとは違った反応をしている。日本の文化には「言葉はなくとも分かり合える」といった「思いやり」を貴ぶ精神が強く存在する。これに対してアメリカでは「大切なことは言葉にして表現すべき」との発想が根本にある。今回オバマ大統領が広島を訪問し、献花を行ったことだけでも「有り難い」と感じ、「アメリカの原爆投下の重大性を理解してもらえた」と感じる日本と、「原爆によりもたらされる被害は甚大であり、繰り返してはならない」ことを表現しただけだとするアメリカの間には未だ温度差があるようだ。各メディアは以下のように報じている。
5月27日付
『PBS』(米)では、「ニューヨークタイムズ」のコラムニストであるブルックッス氏のコメントが掲載されている。これによると、同氏は今回のスピーチを「富をめぐり争う人間の本質や戦争を始める人間の悲しい性に触れた、大変美しい文言」と称賛し、これはオバマ大統領独特のスピーチだとする。今回のスピーチの中に、素晴らしい表現は多々あるが、最大の功績は「オバマ大統領が原爆投下について謝罪しなかったこと」だと同氏は語る。...
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5月27日付
『PBS』(米)では、「ニューヨークタイムズ」のコラムニストであるブルックッス氏のコメントが掲載されている。これによると、同氏は今回のスピーチを「富をめぐり争う人間の本質や戦争を始める人間の悲しい性に触れた、大変美しい文言」と称賛し、これはオバマ大統領独特のスピーチだとする。今回のスピーチの中に、素晴らしい表現は多々あるが、最大の功績は「オバマ大統領が原爆投下について謝罪しなかったこと」だと同氏は語る。「日米の立場両方を考えれば、謝罪しないことは賢明な選択であり、オバマ大統領は、その類まれな文章力により、問題をぼかすことに成功している」。実際戦争を始める愚かさや戦争の悲惨さについて触れながらも、オバマ大統領は外交政策上重要な問題となりうる「日米どちらが戦争を始めたかという点には一切触れていない。さらに同氏はオバマ大統領が現在に至るまで「核兵器廃絶のための具体的な策を何ら講じていない」と今回のスピーチが両国間の関係を良好に維持するためだけのもので、具体性の無いものであることを裏付けているとする。
同日付
『FOXニュース』(米)には、「ワシントンポスト」のコラムニストであるクラウトハマー氏のコメントを載せている。同氏は今回のスピーチ内で明確な謝罪こそなされなかったものの、「遠まわしの謝罪」とも受け取られかねない表現が米国の名誉を傷つけたと語っている。「謝罪という言葉は使いたくないが、オバマ大統領は就任以来インディアンといった先住民族への非人道的行為やグアテマラ内戦での米軍の行いなど、数々のアメリカの犯した罪を認め続け、その締めくくりが今回の広島訪問となったというわけだ。明確な謝罪こそなされていないものの、今回のようなことを言いたければ、ノーベル平和賞を受賞した2009年のプラハでのスピーチで語ればよかったのだ。そうでなければ任期満了後、一私人として広島を訪れるべきだった」。謝罪を表明するならば、ノーベル平和賞受賞のスピーチで言及すべきであったし、今回のような曖昧な形の表現を用いることにより米国が「罪の意識を持っている」と誤解を招くスピーチは行われない方がよかったということだ。
同日付
『BBC』(英)は今回の広島訪問が、日本のメディアでは広く好意的に受け取られていると報じつつ、今回のスピーチは平和への願いを象徴するものではあるが、アメリカは今でも核保有国であり、核開発に巨額の資金を投じていることを忘れてはならないとする。オバマ大統領はスピーチを行うことにより二国間が様々な困難を乗り越えて友好国以上の「強い同盟関係」を築くことが目的と考えているとも報じる。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)はオバマ大統領の他に類をみない名演説者としての素養に焦点を当てている。2004年に行われた民主党大会基調演説以来、オバマ大統領の演説の腕は磨かれ続け、特に非核化問題については自身の政策よりも、スピーチ能力の方で腕をあげていると皮肉たっぷりに報じている。オバマ大統領のスピーチの素晴らしさはベン・ローズ副補佐官の協力によるところが大きいとし、今回のスピーチ原稿は誰が書いたのものか分析している。同記事によれば、ローズ氏が原稿の最初と最終段階で、オバマ大統領とともにチェックを行っているのは確かだが、大抵の場合、スピーチ原稿は関連する委員会のメンバーと共に作成されるという。今回のスピーチについていえば、国防省やエネルギー省のスタッフのチェックを受けた後、ローズ氏がチェックを行っているはずだとする。ただ、最終的な原稿作成者はオバマ大統領であり、原稿は手書きで作成されるという。今回のスピーチの言葉の大半はオバマ大統領自身の言葉といえそうだ。
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NASAが1200以上の惑星を発見、うち9つは生命存在の条件を充たす(2016/05/12)
NASAのケプラー望遠鏡が今回、太陽系外に1284もの惑星の存在を発見し、そのうち9つは「ハビタブル・ゾーン」(直訳で居住可能地域)、すなわち惑星に適度な水分を保持することが可能な位置に存在することが明らかになった。NASAはケプラー望遠鏡に600万ドル(約650億円)という巨額の費用を投じて、2009年から地球とほぼ同サイズの「居住可能な」太陽系外の惑星を探している。今回の発表について、各メディアは次のように報じている。
5月10日付
『ウォールストリート・ジャーナル』(米)は、今回の発表がプリンストン大学、コロンビア大学、カリフォルニア工科大学、NASAエイムズ研究センターの研究者らによってなされ、学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されていると報じる。今回「居住可能」とされた9つの惑星の他にも、550が地球と似た形態の岩が多い天体であり、さらに100以上が地球と同じ大きさかそれ以下であるという。
プロジェクト参加者の一人、プリンストン大学のモートン氏は「これほど多くの惑星の存在が一度に確認されたのは初めて」と語っている。...
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5月10日付
『ウォールストリート・ジャーナル』(米)は、今回の発表がプリンストン大学、コロンビア大学、カリフォルニア工科大学、NASAエイムズ研究センターの研究者らによってなされ、学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されていると報じる。今回「居住可能」とされた9つの惑星の他にも、550が地球と似た形態の岩が多い天体であり、さらに100以上が地球と同じ大きさかそれ以下であるという。
プロジェクト参加者の一人、プリンストン大学のモートン氏は「これほど多くの惑星の存在が一度に確認されたのは初めて」と語っている。
しかしながら同記事は今回発表された内容はあくまでも宇宙望遠鏡から送られたデータからの計算によるもので、独立した第三者機関の地上に設置された望遠鏡による確認はまだ行われていないと指摘する。
ただ、先週にはドイツにあるヨーロッパ南天天文台の研究チームが、地球から40光年離れた場所に金星や地球と似た大きさと温度の惑星を発見したことを発表しており、「居住可能な」天体への関心はこれからも高まりそうだ。
同日付
『PBSニュースアワー』(米)は「統計による分析の勝利」として、今回の発表を讃えている。ケプラー望遠鏡は宇宙で、望遠鏡を通過する物体を観測する方法で、目的物のデータを集める。目的物の形や軌道、発せられる光から、目的物を惑星や恒星、それ以外のものという風に識別していくのである。しかしながら、ここで問題が生じる。というのもこの識別には、地上に設置された望遠鏡による分析も必要で、この作業に多額の費用と時間がかかっていたのである。今回はこのステップを自動確認システムの導入により省略し、一度に大量の識別を行うことができたのだという。
来年には20万以上の太陽系外惑星を観測する衛星(TESS)が、打ち上げ予定であるし、その翌年には太陽系外の惑星の大気を観測するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も打ち上げられる。そのため今回導入された方法は、今後のNASAのプロジェクトにも導入され、大きな成果をもたらすと考えられている。今回のプロジェクト参加者の一人であるヘルツ氏は「地球以外に生命が存在するのかが、最大の関心事であり、この問いに科学が答えを出せる時代がやってきた」とコメントしている。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)は、プロジェクト参加者の一人、モートン氏のコメントを載せている。「バケツ一杯のゴミが散らばっている状況では、それを集めるほうきが必要で、今回導入されたシステムは、そのほうきにあたる。おびただしい数の物体を観測するために、今回のシステムが必要だった」。
また、同記事は2009年に打ち上げられたケプラー望遠鏡が、1度目の打ち上げでは15万もの天体を観測し、K2と称された2度目の打ち上げでは故障にも悩まされていたと報じる。先月には「危機的状態」にも陥ったが、なんとか持ちこたえていたという。
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