米国首都ワシントンD.C.で最低賃金が15ドルに(2016/06/08)
ニューヨーク州やカリフォルニア州に続いて米国首都ワシントンD.C.でも小売業などの最低時給が15ドル(約1607円)に増額される法案が可決された。国が定める最低賃金は7.25ドル(約776円)であるのに比べると随分と高額だ。これは昨今の物価高を受けて、2012年にニューヨークで端を発した賃上げ運動の一環によるものである。アメリカの各州では最低時給の値上げが相次いでおり、社会経済への影響が懸念される。各メディアは以下のように報じている。
6月7日付
『ABCニュース』(米)はニュースを報じ、1年半近く最低時給の引き上げを求めてきたバウザー市長のコメントを掲載している。「これで貧困層の生活水準が多少改善されるとは思うが、15ドルでもワシントンD.C.での生活は厳しい」。
ワシントンD.C.では従前は10.5ドル(約1124円)を最低時給としてきたが、バウザー氏の前任者であるグレー氏の在任中に11.5ドル(約1231円)に引き上げる法案が可決され、来月から施行されることになっている。...
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6月7日付
『ABCニュース』(米)はニュースを報じ、1年半近く最低時給の引き上げを求めてきたバウザー市長のコメントを掲載している。「これで貧困層の生活水準が多少改善されるとは思うが、15ドルでもワシントンD.C.での生活は厳しい」。
ワシントンD.C.では従前は10.5ドル(約1124円)を最低時給としてきたが、バウザー氏の前任者であるグレー氏の在任中に11.5ドル(約1231円)に引き上げる法案が可決され、来月から施行されることになっている。今回可決された15ドルの最低時給へは今後2020年まで段階的に引き上げられ、その後は物価のインフレ率と連動させていくという。
今回の最低時給引き上げについて、コストカットのためにリストラが敢行され、かえって労働者を苦しめることになると主張する専門家もいる。米国下院議員のポール・ライアン氏も今回の法案可決については「最低時給の引き上げは多くの弊害を引き起こす」と、反対の意見を表明している。
三年前のグレー市長時代に、ワシントンD.C.ではウォルマートをはじめとする大手の小売業に従事する者の最低時給を12.5ドル(約1338円)に引き上げようとする動きがあった。しかしこれはウォルマートらが「現在計画中のワシントンD.C.内での新たな出店を行わない」と主張し、強固に反対したため頓挫している。実際、今年に入ってからウォルマートは大型店舗2つの出店計画の中止を発表し、賃上げの動きがかえって貧困層の経済状況を悪化させたとも言われている。
同記事は今回の法案では小売りサービス業の時給にスポットライトが当てられているが、収入をチップに頼っているウェイトレスやバーテンダーなどの時給の変化にも注目すべきとする。今回の法案内でバウザー氏はこれらの職種の時給を従来の2.77ドル(約296円)から7.5ドル(約804円)に引き上げることを提案していたが、これは雇用者側からの猛烈な反対に遭い5ドル(約535円)への引き上げにとどめられている。
同日付
『CBSニュース』(米)では、最低時給の引き上げに好意的な意見を掲載している。家電量販店やレストランでは、最低時給の引き上げにより住居費以外への支出が増えることを期待する声も上がっている。
同記事も今回の法案に反対するポール・ライアン氏のコメントが掲載されている。これに関してはライアン氏の主張によると貧困層救済のためには政府の援助が必要であるが、策が後手に回るため、貧困層をさらなる貧困へと追いやるものであると批判している。
同日付
『PBSニュースアワー』(米)は、「この法案の可決により12万7000人の労働者が直接的な恩恵を受けるだろう」とするバウザー氏のコメントを載せている。
冒頭でも記した通り、アメリカでは最低時給を15ドルに引き上げよういう「15ドルへの戦い」キャンペーンが盛んに行われている。2012年、ニューヨークのファーストフードの店員らが始めたこの運動は各地に飛び火し、カリフォルニアやニューヨークでは時給引き上げが行われ、ロサンゼルスやシアトルでも時給引き上げが決定している。この運動は今後全米に広がることが予測されるが、一方でヴァージニア州の最低時給は国が定める7.25ドル(約776円)の最低時給を採用しておりこういった州との格差や労働力の流出も懸念されている。今後この運動が米経済に与える影響を注視していく必要があるといえる。
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NASAが1200以上の惑星を発見、うち9つは生命存在の条件を充たす(2016/05/12)
NASAのケプラー望遠鏡が今回、太陽系外に1284もの惑星の存在を発見し、そのうち9つは「ハビタブル・ゾーン」(直訳で居住可能地域)、すなわち惑星に適度な水分を保持することが可能な位置に存在することが明らかになった。NASAはケプラー望遠鏡に600万ドル(約650億円)という巨額の費用を投じて、2009年から地球とほぼ同サイズの「居住可能な」太陽系外の惑星を探している。今回の発表について、各メディアは次のように報じている。
5月10日付
『ウォールストリート・ジャーナル』(米)は、今回の発表がプリンストン大学、コロンビア大学、カリフォルニア工科大学、NASAエイムズ研究センターの研究者らによってなされ、学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されていると報じる。今回「居住可能」とされた9つの惑星の他にも、550が地球と似た形態の岩が多い天体であり、さらに100以上が地球と同じ大きさかそれ以下であるという。
プロジェクト参加者の一人、プリンストン大学のモートン氏は「これほど多くの惑星の存在が一度に確認されたのは初めて」と語っている。...
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5月10日付
『ウォールストリート・ジャーナル』(米)は、今回の発表がプリンストン大学、コロンビア大学、カリフォルニア工科大学、NASAエイムズ研究センターの研究者らによってなされ、学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されていると報じる。今回「居住可能」とされた9つの惑星の他にも、550が地球と似た形態の岩が多い天体であり、さらに100以上が地球と同じ大きさかそれ以下であるという。
プロジェクト参加者の一人、プリンストン大学のモートン氏は「これほど多くの惑星の存在が一度に確認されたのは初めて」と語っている。
しかしながら同記事は今回発表された内容はあくまでも宇宙望遠鏡から送られたデータからの計算によるもので、独立した第三者機関の地上に設置された望遠鏡による確認はまだ行われていないと指摘する。
ただ、先週にはドイツにあるヨーロッパ南天天文台の研究チームが、地球から40光年離れた場所に金星や地球と似た大きさと温度の惑星を発見したことを発表しており、「居住可能な」天体への関心はこれからも高まりそうだ。
同日付
『PBSニュースアワー』(米)は「統計による分析の勝利」として、今回の発表を讃えている。ケプラー望遠鏡は宇宙で、望遠鏡を通過する物体を観測する方法で、目的物のデータを集める。目的物の形や軌道、発せられる光から、目的物を惑星や恒星、それ以外のものという風に識別していくのである。しかしながら、ここで問題が生じる。というのもこの識別には、地上に設置された望遠鏡による分析も必要で、この作業に多額の費用と時間がかかっていたのである。今回はこのステップを自動確認システムの導入により省略し、一度に大量の識別を行うことができたのだという。
来年には20万以上の太陽系外惑星を観測する衛星(TESS)が、打ち上げ予定であるし、その翌年には太陽系外の惑星の大気を観測するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も打ち上げられる。そのため今回導入された方法は、今後のNASAのプロジェクトにも導入され、大きな成果をもたらすと考えられている。今回のプロジェクト参加者の一人であるヘルツ氏は「地球以外に生命が存在するのかが、最大の関心事であり、この問いに科学が答えを出せる時代がやってきた」とコメントしている。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)は、プロジェクト参加者の一人、モートン氏のコメントを載せている。「バケツ一杯のゴミが散らばっている状況では、それを集めるほうきが必要で、今回導入されたシステムは、そのほうきにあたる。おびただしい数の物体を観測するために、今回のシステムが必要だった」。
また、同記事は2009年に打ち上げられたケプラー望遠鏡が、1度目の打ち上げでは15万もの天体を観測し、K2と称された2度目の打ち上げでは故障にも悩まされていたと報じる。先月には「危機的状態」にも陥ったが、なんとか持ちこたえていたという。
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