ポリオは、ウィルスによって感染する病気の一つで、小児麻痺とも呼ばれている。このウィルスに感染しても多くの場合は症状が出ないか、出たとしても風邪や胃腸炎に似た症状だけで済むことが多い。しかしながら、感染者の1000人~2000人に一人は手足に麻痺が残るという。この病気が小児麻痺と呼ばれるのは、5歳以下の小児が多く(約90%以上)感染するためであるが、成人も感染しうる病気であることがわかっている。主な感染源は患者の便から排出されるウィルスによるとされ、現在世界各地でポリオワクチンの接種が行われている。ポリオはウイルス接種によりほとんどの国で根絶されつつあり、現在はパキスタンとアフガニスタンでごく少数の患者が出ているのみである。しかしながら、患者数がたとえ少数であっても、根絶されない限りは再び流行する危険性があるため、世界保健機関(WHO)はポリオ撲滅のキャンペーンを展開してきた。そして、今週からワクチンの型を変更し、ポリオ撲滅のためのラストスパートをかけている。各メディアは次のように報じている。
4月16日付
『PBS』(米)によれば、ポリオには3つの型があり、それぞれ1型、2型、3型とされ、全ての型に対応したワクチンは3価型と呼ばれる。しかし現在2型のポリオは撲滅済みとされ、2型を含んだワクチンの接種は無意味どころか、2型のポリオの流行を引き起こす可能性を有する。そのため、2型を排除したワクチン(2価ワクチン)を世界150か国で今週から導入する予定だという。このキャンペーンはWHO、米国疾病対策センター、ビル・アンド・メリンダゲイツ財団主導で行われるという。ポリオ患者は1988年の時点では世界125か国で35万5000人の患者がいたが、その後のWHOのワクチン接種キャンペーンにより減り続け、現在では患者数は当時の1%にまで減少しているという。WHOは1980年に天然痘撲滅を宣言して以来のポリオ撲滅宣言が目前だと意気込んでいるという。
4月15日付
『メディカル・エクスプレス』(米)では、2価ワクチンの導入のみならず、現在主流となっている生ワクチンから不活化ワクチンへの転換も行われることが取り上げられている。経口により接種される生ワクチンは、ポリオ予防の効果は高いものの、まれに接種によりポリオに感染するケースがみられるためである。
ただ、これらの2価、不活化ワクチンの導入には2型の再流行を防ぐため、世界が足並みをそろえて導入しなければならないという条件が付く。WHOの広報担当は、今回の切り替えにより、年間3億人に対する接種が行われる見込みだという。ただ、生産に手間がかかる等、様々な制約から完全移行にはもうしばらくかかるという。
同日付
『ハフィントンポスト』(米)はWHOでポリオ撲滅運動の責任者を務めるザフラン氏のコメントを載せている。「今年に入ってポリオの患者数はパキスタンとアフガニスタンで12人のみである。しかし、油断は禁物で、力を注がなければならないのはここからである。一度気を緩めれば、12人の患者が10万、20万人に膨れ上がるのはあっという間だ。今までの活動を無駄にしないためにも、ワクチンの転換は不可欠である」。
ワクチンの生産は、フランスのサノフィパスツール社や、イギリスのグラクソ・スミスクライン社が大きなシェアを占めているが、両社とも新しいワクチンの生産にはコスト、時間、手間がかかるとしている。
ポリオ撲滅運動が始まった1988年当初、ポリオは2000年までの撲滅が目標とされていた。しかし、99%の感染者削減を達成した後、最後の1%の撲滅に世界は苦労している。特に、今回名前が挙がっているパキスタンとアフガニスタンでは、政治的混乱や医療関係者に対する理解の欠如が予防接種活動の妨げになり、ポリオ撲滅に支障をきたしていることが指摘されている。特にパキスタンでの活動には高度な危険が伴うという。医療行為者は西欧諸国のスパイだと疑われ、今年の2月にテロリストから銃撃され、負傷した者もいる。また、1月にはポリオの予防接種会場のすぐそばで自爆テロが起こり、15人が死亡している。
完全な撲滅が達成されないがゆえに、2011年には10年以上ポリオ患者が出ていなかった中国で、パキスタン経由のポリオ感染が確認され、2013年にはシリアで14年ぶりにポリオ患者が発見され、ワクチン接種に多額の費用を費やしているという。
残り1%との戦いはまだまだ続く。
閉じる
軍事政府による批評家や活動家の拘束はここ数か月で増え続けている。病院から連行されたり、米大使までもがその発言で取り調べられている。そんな中、健康が心配された国王は誕生日式典、政府行事にともない公の場に姿を見せた。一方で巷では国王の愛犬についての映画が劇場で人気となっている。ところがその愛犬をネット上で侮辱したとして”侮辱罪”が言い渡されるなど、些細な事でさえ許されない状況となってきている。
12月15日付け
『The Guardian』他海外メディアによると、政府への”反逆罪”で37年の禁固刑を言い渡されている工場員が国王のペットの犬に関する侮辱の容疑がかけられていると報じている。タイでは王家への批判、名誉棄損、侮辱行為には最高で15年までの禁固刑が科せられる。
タナコーン・シリパブーンは国王が拾った雑種犬ペット”トンデーン”をネット上で”皮肉を込めて”コメントしたとして起訴されている。国王は2002年この愛犬に関する本を出版、今年アニメ映画化(題名”トンデーンさん;インスピレーション”)され劇場2位の人気である。
タナコーンの弁護士アノン・ヌンパ氏は「インターナショナル・ニューヨークタイムズ」紙を通して「具体的に愛犬の何を侮辱したのか詳細が明らかにされていない。まさか国王の愛犬が法に関わるとは予想もつかなかった。」と述べている。当愛犬不敬事件に関するニューヨークタイムズ紙の記事は火曜、現地印刷会社の意図により掲載されなかった。このような措置はタイ不景気についてのみ書かれていた記事を含め今回で4回目となる。昨年5月の当政権発足以来不敬罪で男性一人がフェイスブックに王室への侮辱を投稿したとして30年の禁固刑となっている。
タナコーンも公園記念碑の建設に関する軍の腐敗をフェイスブックで扇動したとして先週起訴され、今週月曜まで拘束されていた。
軍事政府は、批評家に対する不敬罪を行使するが、多くのタイ人は2005年国王が誕生日の演説で彼が人間であり反対意見も受け入れると述べた事を振り返る。
現在88歳となった在位世界最長プミポン国王は、第二次世界大戦終戦以来影響力を持っており、流血と反乱の政治的分裂になくてはならない重要な存在感を示してきた。しかし、王の体調不良による皇太子への王位継承問題や、軍による暫定2年とした時間枠での民主主義への復帰に国民の不安が高まっている。
最近着任した米国大使グリン・デイヴィス氏も不敬罪で取り調べが行われている。タイ警察によると、大使は演説の中で、軍事政府を称賛しつつも軍事裁判所による前例のない長期実刑判決を批判したとのことである。タイ警察は大使の外交特権は保障されるとしている。
12月15日付け
『ロイター』は次のように報道している。
反政府活動家シラウィット・セリチワット氏は、ラチャダー刑事裁判所が火曜日、25歳の活動家サネット・アナンタウォン氏解放の懇願書を拒否したと述べた。
報道関係者の裁判所法廷での取材は許可されていない。ヒューマン・ライト・ウォッチ(*注)によるとサネット氏は日曜、手術を待っている病院で覆面警官らにより連行された。ヒューマン・ライト・ウォッチ アジア支部長ブラッド・アダムス氏は「タイ軍部は病床から活動家を連行するほど非情な手段に出始めた」と述べる。対する軍スポークスマン、コロネル・ウィンチャイ氏は「サネット氏の拘束時の容体は安定しており、健康診断後病院の支払いを済ませている所だった。ともかく、我々は容疑者の健康に留意しており医師による検診を行い、彼の病状に異常がない事を確かめた。今後も適切な処置を受ける予定である。」と述べている。
警察によるとサネット氏は軍関係者が過去の王を称えるために軍によって建てられた公園の資金調達に関わる不正疑惑を裏付けたとされる画像をフェイスブックに再投稿したとの嫌疑が掛けられた。アダム氏は、「タイはクーデター以来、軍事政権を批判し投獄されることが日常茶飯事となった。我々が出来ることがあるとすればフェイスブック上で「いいね」を押すことだ。」と述べている。
(*注);ニューヨークを拠点とする国際的な人権NGO。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、人権を守ることを目的とし、世界90か国で人権状況をモニターしている。
12月15日付け
『CBS NEWS』は別の女性逮捕につき、次のように報道している。
6月に政府への反対をフェイスブック投稿したことで7年の刑が言い渡された女性の名は、弁護士によるとチャヤパー・Cという名であることが分かった。人権擁護タイ弁護士グループによると、刑が確定したことで当初の14年の刑から減刑となった。
12月15日付け
『Thai PBS』は国王について次のように報道している。
国王が軍事裁判所の裁判官と地方検事の就任宣誓式典に出席した。式典は午後5時過ぎ、国王の入院先の病院に隣接した14階のホールで行われた。
式典には憲法裁判所所長、防衛大臣、防衛省の事務次官、国軍の最高司令官、陸海空軍司令官、検事総長が出席した。
12月15日付け
『BBC』によると、王室により放送されたテレビ映像でプミポン国王は9月以来元気な姿を国民に見せた。国王は肺感染症等の様々な治療を受けているが、健康の詳細について皇室当局は明らかにはしていない。ここ数年間は入退院を繰り返しており、胆嚢除去手術と水頭症の治療を受けている。6月には退院直後バンコクのシリラート病院に再入院した。12月5日の誕生日には恒例だった演説が2年連続して中止となったが、ワチラロンコン皇太子が主催する誕生日を祝うサイクリングイベントが11日に行なわれた。
閉じる