ジョー・バイデン大統領(78歳)は、敵対したり反旗を翻す人たちにすぐ激高した前任大統領に比べて、温厚で熟慮深い人物というイメージがある。しかし、非公開の打ち合わせ等の場所では、意に沿わない側近等に対して短気で毒舌的な対応をすると米メディアが暴露している。
5月16日付
『ウェスターン・タイムズ』紙(1886年創刊):「バイデン大統領は気取らない趣きと映るが実際は短気でよく罵声を浴びせる、と
『ニューヨーク・タイムズ』紙報道」
ジョー・バイデン大統領の印象を訊かれたら、ほとんどの人が好々爺だと答えるだろう。
彼は確かに、理知的とか大げさな表現が多いとかと言われたことはなく、愛想が良くて融和的で、誰にとっても気が合う人物とみられている。
しかし、『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』の特集記事によると、その認識は間違っているという。
非公開の会議の場所では、彼の“気取らない物腰”は雲散霧消し、代わって、短気で要求が多く、かつしばしば毒舌を伴う罵声を浴びせる姿が現われるという。
同紙は、二十人余りの新・旧側近らにインタビューした上で記事にしたとする。
まず、同大統領の政策決定に際しての対応であるが、“即断即決は彼の好むスタイルではない”とする。
“バイデン大統領は、ある政策決定に際し、数日、あるいは数週間かけて、再考に再考を重ねてから結論を出す傾向にある”とする。
ただ、慎重な姿勢は時には理解できるも、“新型コロナウィルス(COVID-19)流行問題が依然暗い影を落とし、経済回復も未だの当国にとって、かかる拙速な対応は問題なしとしない”と厳しく指摘している。
特に、同大統領は結論に至るまでに、“ホワイトハウス西棟(大統領執務室がある棟)に様々な政策専門家を集めて、「ソクラテス式問答法(注後記)」よろしく何時間も討議させている”とする。
そして、“討議の最中、漠然とした意見とか、細目ばかりに基づく討論に対しては怒りを表し、毒舌的な言葉で非難する傾向にある”という。
なお、『NYT』は、”前任のドナルド・トランプ大統領のように、発作的に起こり出すということはない“、と注釈を付けている。
また、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)への対応策を討議した際は、熟慮した対応を取ろうとしていたとする。
すなわち、ロシアが昨年11月の米大統領選へ介入した疑惑や、12月のソーラーウィンズ社(1998年設立のITベンダー企業)に対してサイバー攻撃を仕掛けてきた嫌疑に関して、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当、44歳)が3月下旬、プーチン大統領への制裁について問いかけたのに対して、同大統領は、“早晩決断する”とのみ回答するに留まっている。
一方、同大統領の短気さを示す逸話について、『NYT』記事は、“彼は、翌日の準備をする必要があると思い立ったら、当日の午後10時半でも11時でも、しばしば政策顧問らに電話をしてくる”とする。
同紙がインタビューした“側近の3人が、もし時間の無駄だと同大統領に思わせてしまったら、その途端に一方的に電話を切られた”と証言している。
そして、ほとんどの側近が、“同大統領が出した多くの質問に対して、うまく受け答えできない側近に対して容赦はしない”と述懐している。
バイデン氏の副大統領時代のスピーチ原稿代作者だったディラン・ロウィー氏(政治戦略家・作家)は、“バイデン氏の要求に応えるため、目まぐるしい速さで準備ができるようになったし、また、思い付く限りの如何なる質問にも答えられるようになった”とコメントしている。
なお、側近を叱った一例として、今年3月、“同大統領がハビエル・ベセラ厚生長官(63歳)に対して、移民子弟の保護について同省がどのような機能を発揮できるかと問い質した際、同長官がうまく答えられなかったことから、同長官に毒舌を浴びせた”という。
更に、国境の移民問題について付記すれば、3月の大統領執務室内での会議の席上、“同大統領が移民問題顧問らに対して、問題が発生している国境を訪れたかとの問いに対して、誰も未訪問だったことを知って非常に不満な態度を見せた”という。
そこでその4日後、アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官(61歳)及びスーザン・ライス国内政策会議委員長(56歳)を含めた4人の移民問題顧問らが、状況把握のために国境を訪問している。
ただ、これに関して言えば、同大統領自身はもとより、移民問題担当トップに任命しているカマラ・ハリス副大統領(56歳)も依然国境を訪れていないことは、問題なしとしない。
(注)ソクラテス式問答法:古代ギリシアの哲学者ソクラテス(紀元前470~399年)に因んで名づけられた探究の方式であり、個人間の議論の方式。反対の立場にある個人間での質問と討論の形式であり、理性的思考を刺激しアイデアを生み出すための質問と回答に基づく弁証法の一種。
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バイデン米政権は、トランプ前政権下での「最大限の圧力」の4年間の方針を転換し、イラン核合意への復帰に向け、イランと協議する用意があると発表している。多国間協議により、過去のトランプ前政権による痛手の修復を目指す。
2月18日付米国
『NYT』は「バイデン政権がイランとの核交渉再開を正式打診」との見出しで以下のように報道している。
バイデン大統領が、イランの核開発計画を制限する交渉復帰に向けて動いている。制裁解除を求めるイランが交渉に合意するかは不透明。
バイデン政権当局によると、米国は、トランプ元政権が廃止したイラン核合意を回復するという大きな方針転換を行い、4年ぶりにイランと交渉に乗りだそうとしている。これはバイデン大統領の公約の一つであった。米政権は、イランが2019年までの制限を再度守る場合のみ、交渉を再開するとしている。
この発表は非常にデリケートな交渉に道筋を開くものである。国務省は、イラン側の対応はまだ分からないが、核合意復帰に向けたプロセスの第一歩であるとしている。イラン政府がこの日までにトランプ元政権が課した国連の制裁が緩和されなければ、核合意に基づく核関連施設への抜き打ち査察を認めないとする最終期限日が21日となっている。
イランの大統領選を4か月後に控え、イランの最高指導者ハメネイ師や政府や軍部の指導者がこれを支持するかは不透明となっている。米政府内部では、中国、ロシア等の他国が参加すれば実現すると考えているが、サウジアラビア、イスラエル、アラブ首長国連邦が同意するかは疑問視されている。
同日付『AP通信』は「バイデン、対イランでトランプ路線から転換、核合意交渉再開か」との見出しで以下のように報道している。
バイデン政権は18日、イラン他世界大国との核合意への復帰を模索していると発表した。国連制裁の復活や外交官のイランへの渡航制限などドナルド・トランプの圧力外交から転換を図る意向。G7首脳との会談前に発表されたが、イラン政策のタカ派からは批判され、イスラエル他中東諸国からも懸念の声があがるものとみられる。
米国はイラン国内の人権問題違反や核弾頭プログラムを懸念。イランに再度制裁を行う「スナップバック」と呼ばれる制裁復活手続きから撤退したことを通知、国連大使代行Richard Mills氏は国連にトランプ元政権路線からの転換を示す書簡を送ったという。米高官によると、外交官のイラン渡航制限は緩和されたという。合同声明でブリンケンは、「イランが核プログラムの制限を再び順守するなら、米国は同様に向き合う用意がある」としている。
イランのロウハニ大統領は18日、国営テレビで、バイデン政権核合意に復帰し、トランプ時代の国連制裁を解除することに期待を示した。メルケル首相は今秋ロハウニ大統領と電話会談。 IAEAの幹部は今週末査察継続の解決策を求め、イランへ渡航する予定。
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