1月16日付米
『CNN』:「富士通、ソフトウェアの被害者に補償の意向」:
富士通の欧州担当CEOは16日、富士通は英国郵便局の被害者への「道義的義務」があると述べている。
1999年から2015年まで、多くの政府系郵便局の支店の職員が、冤罪の窃盗や横領の疑いで起訴された。富士通が開発した「ホライゾン」のシステム異常により、口座から数千ポンドが消える事態が度々起きていた。
郵便局長のうち、700名が有罪判決となった。多くが服役し、中には自らの命を絶つものも出た。これまで、2700名以上の元郵便局長が政府を通じ、額に不足はあるものの、金銭的補償を受けている。多くは、今も政府の受注をしている富士通からの補償の必要性を主張している。2020年、このスキャンダルの補償は個人とすべきか組織とすべきか決定する公聴会が開かれた。
政府はこの事件を英国史上最大の不祥事と位置づけている。この事件については、長年英国のメディアで報じられ、その後複数の裁判に繋がったが、今月初頭、郵便局長の悲劇的側面にフォーカスをあてたテレビドラマが放映されたことで、一気に注目が集まり、事件への怒りが高まっていった。
国民の声が政府の迅速な反応を引き起こした。先週スナク首相は、議会で数百名の郵便局長の有罪を無効とする新法の制定を迅速に進めると発表。現在までに、有罪が解かれたのは訴追された郵便局長700人のうちわずか93人。
同日付英『Guardian』:「富士通、初めて郵便局被害者への賠償意思を表示」:
富士通は郵便局スキャンダルの被害者への賠償金支払いについて初めて言及した。
郵便局元職員アラン・ビーツ氏は、主張が通るまで非常に待ち望んでいたとする。ビジネス貿易委員会の議会証言で、欧州担当長のポール・パターソン氏は、1990年代から、富士通はITシステムの欠陥を把握していたと認めた。
同社の契約は24億ポンドで、25年以上続いた。現在は10億ドルを超える。今後賠償の具体的金額については、公聴会後に決定することとなる。
パターソン氏は「我々には道義的義務がある。責任が明確になったところで決定する。この事件には多くの関わった者がいる」とし、郵便局のサポート期間中に、富士通がホライゾンシステムの欠陥を認識していたと認めた。「富士通は、この不正行為に謝罪の意を表す。我々はスタート時点から関わっていた。立ち上げ時から、障害やエラーが存在していた。服郵便局長の訴追に加担したのだ」と証言した。
同事件では700人以上の職員が訴追されている。人々がえん罪に苦しんだ上、これを覆す政府側の十分な証拠資料が乏しく、手続きは難航。73項目の補償請求のうち認められたのは3項目だという。
元職員ジョセフィン・ハミルトン氏と、最近のテレビドラマ主人公として描かれたアラン・ベイツ氏も議会で証言。有罪判決を無効とする新法に向けた動きなど、政治的解決に期待を寄せるが、現在も郵便局ではホライゾンシステムが使用されており、契約更新後2025年まで継続される予定だという。
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2日夕刻、羽田空港で、新千歳発羽田行き日本航空(JAL)516便(エアバス350型)が、地震の被災地に物資を運搬する予定だった海上保安庁の機体(DHC8型)と滑走路上で衝突した。この事故で、海保機の乗員のうち機長を除く5人が死亡したが、JAL機の乗客が負傷者を出しながらも、全員脱出避難できたことが奇跡的だと報じられている。
1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。...
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1月2日付英
『Guardian』:「羽田空港で滑走路での衝突事故後、乗客の奇跡的救出」:
羽田空港の滑走路で海上保安庁の機体と衝突した日本航空の全乗客乗員が「奇跡的」な脱出に成功した。
海保機は元日の地震の救助物資を新潟へ運ぶ準備をしていた。通称「ダッシュ8」、デ・ハビランド・カナダ DHC-8に乗っていた海上保安庁の6人のうち5人は死亡。
元旅客機パイロットのロジャー・ホイットフィールド氏は、「まずはミラクルが起きたと言える。乗客全員を脱出させた方法が信じられない」とする。
機内の様子を写したソーシャルメディアの映像からは、衝突後、滑走路を走行中に、客席の窓から機体後方に煙が見えている。
生存者の話によると、避難準備をする乗員は、乗客に落ち着くよう促すが、荷物を手に取ろうとした人々に持ち物を置いていくように言った。その後、電気が消え、機内の温度が上がり始めたという。乗客は暗闇と濃い煙の中、懐中電灯を持った乗員に誘導された。
搭乗していた17歳のスウェーデン人でアントン・デイベ氏は、スウェーデン紙「アフトンブラデット」に、「機内全体に数分で煙が充満した。皆が下の階に降り、非常ドアが開かれそこから脱出した」と述べている。また、「キャビン内の煙は酷く、どこに向かっているかも分からないまま外に出た。混乱状態だった」とも述べている。
オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、オーストラリア国籍の12人が搭乗していたが、全員怪我なく避難したと発表している。
1月3日付米『Business Insider』:「日本航空機の死者ゼロ、最新安全性能と秀逸な訓練」:
羽田空港で着陸前に炎上しているJAL機の恐ろしい映像は世界を震撼させた。
着陸の際、海上保安庁の機体と衝突したが、驚くべきことに379人全ての乗客がエアバス350から救出された。
英国クランフィールド大学の航空安全の専門家グラハム・ブレイスウェイ教授は、航空機のデザインや、ハイレベルなスタッフの訓練が災難を回避するのに役立ったと分析する。
機内で撮影された映像をみると、乗客が避難する間に煙が充満するのが確認できる。エンジンを炎が包み込む中、緊急脱出スライドを滑り降り、飛行機の下を乗客が走っている。
安全ルールに従うと、緊急時に非常出口の50%のみが使える場合、90秒で脱出する必要があるという。だがこれは、今回の様な事故で発生するパニック状態を勘案していない。子どもや高齢者などを含めると、安全な避難に必要な時間は更に必要だと推定される。
今回の状況で、死者を出さずに軽症の負傷者が僅か17人とは、クルーの避難誘導の素晴らしさを物語る。一方の海上保安庁の機体の5人は死亡し、1人は重傷となっている。
メトロポリタン州立大学の航空安全学のジェフリー・プライス教授は、全員が安全に避難できたのは「奇跡だ」とする。クルーの素晴らしい行動のみならず、乗客自身も、機内に煙が充満してしまう前に、多くの人が飛行機から脱出できるよう迅速に行動した」と分析する。
乗客が混乱と人命喪失につながるパニックを起こさず、冷静さを保ったことが更に奇跡的だ。飛行場でレスキュー隊や消防隊員が現場に到達するにも、3分以上は要する。飛行機の機内に炎が入るまでが約90秒。これらの数字から、乗客、乗員クルーは、救助が来る前の最初の1,2分は自分たちの判断で行動したこととなる。
また、航空機の最新設備設計の耐久性も重要な要素だったと指摘する。機内の炎上は航空安全上の最大の脅威だと長く考えられてきた。飛行機には非常に可燃性の高い燃料と物質が積載されている。
エアバス350には火の急速な広がりと、毒性のある煙の発生を抑える特別な素材が使用されているという。また、現在は、どこに座っていても、煙が充満した場合など、見えにくい状況下でも見えるようライトが点灯しており、非常口に容易にたどりつけるよう設計されている。
運も作用した。2002年の研究によると、機内の炎を感知した場合にパイロットが安全に着陸させるまでには17分を要するという。今回旅客機が既に着陸していたことは、乗客の救出に重要な要素であったといえる。
JALの乗客安全へのアプローチも素晴らしく、「安全性向上への取り組みが組織全体に根付き、標準操作手順に従う厳格な文化が守られている」と称賛する。
520人の死者を出し、航空機史上最悪の事故となった1985年の日航機墜落事故をきっかけに、同社は乗客の安全を非常に重視するようになった。全スタッフが本社の航空安全センターを訪れ、間違えが起きる可能性と、乗客安全に必要な仕事がどれだけ必要かを教え込まれるという。JALの文化が今回の惨事を見事に回避したとしている。
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