ドイツ、ウクライナ支援で社会が分断
ドイツ政府は15日、ウクライナが重火器を購入できるよう10億ユーロの放出を決定した。しかし、ウクライナ支援に関して社会も政府も意見がかつてないほど分かれている。
仏紙
『レゼコー』によると、伝統的に左派の地区であるクロイツベルクの通りで16日に行われた平和デモでは、オラフ・ショルツ首相の政党である社会民主党、ドイツ最大の労働組合IGメタル、極左団体、福音教会の旗の下、1000人以上が行進を行った。
40年の間、社会民主党の活動家だったゲアハルト・シュタインバッハさんは、兵器提供は「事態をエスカレートさせロシア側の核兵器の使用につながる」として反対するために参加したという。...
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仏紙
『レゼコー』によると、伝統的に左派の地区であるクロイツベルクの通りで16日に行われた平和デモでは、オラフ・ショルツ首相の政党である社会民主党、ドイツ最大の労働組合IGメタル、極左団体、福音教会の旗の下、1000人以上が行進を行った。
40年の間、社会民主党の活動家だったゲアハルト・シュタインバッハさんは、兵器提供は「事態をエスカレートさせロシア側の核兵器の使用につながる」として反対するために参加したという。一方、数キロ離れたベルリンの中心部にあるフンボルト大学前では、ウクライナとシリアの団体の連合が対抗デモを行った。数百枚の青と黄色の旗の中で、ウクライナへの武器の即時提供とロシアのガス禁輸の実行を訴えた。環境保護主義者のモニカさんは、「武器を持たずにプーチンと闘うのは考えが甘い」という信念のもと、このデモに臨んだという。
こうした中、ドイツ政府は15日に、外国への「軍事援助」として20億ユーロ(約2761億円)の予算を組み、その中にはウクライナが必要な兵器を購入できるよう、少なくとも10億ユーロ(約1380億円)が含まれると発表した。ドイツ軍からの現地での手ほどきが必要となる新兵器ではなく、ウクライナ軍が使い方を知っている武器を東欧で手に入れてもらう狙いだ。今回の決定は、連立政権の中で、武器の即時供与に賛成するエコロジストやリベラル派と、それに反対する社会民主党の間の妥協点でもあった。ただし、伝統的に平和主義を掲げる社会民主党にとって大きな一歩であったものの、エコロジストやリベラル派にとっては、遅すぎる上に不十分だというのが本音だ。
最新世論調査では、ウクライナへの重火器の納入には55%が賛成と回答。特に緑の党(72%)でその傾向が強く、経済・気候保護担当のロベルト・ハーベック大臣は、今や「平和主義は遠い夢だ」と述べている。連立政権内からの圧力に直面し、ショルツ首相の立場は揺らいでおり、世論調査では、49%が首相の紛争に対する対応で強いリーダーシップが発揮できていないと回答している。
仏ニュースサイト『ユーロニュース』によると、ショルツ政権は保守系野党からも批判されている。ドイツ連邦議会保守党(CDU/CSU)のヴァーデフール議員は、「ショルツ首相はブレーキを踏んでいる。武器納入を進めようとしていないのは明らかだ。彼は大きな責任を背負っているが、助けることが出来るウクライナを助けていない」と述べている。
仏ニュース専門局『BFMTV』は、ショルツ政権は、ポーランド、バルト諸国などEUの一部のパートナーからも、軍備面でウクライナを支援していないという批判が高まっていることに対応するために、支援金に踏み切ったと伝えている。しかし、ショルツ首相は、ロシアとの間で全面的な戦争になることを恐れており、戦車など兵器の納入を許可することに消極的となっている。
ウクライナのゼレンスキー大統領は17日夜、ウクライナ支援に対して「ためらいをなくす」ように再び呼びかけた。
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IMF、世界の地政学的な分断の進行を警告
国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は14 日、米ワシントンのカーネギー国際平和財団の講演で、ロシアのウクライナ戦争が世界のほとんどの国の経済見通しを弱めていると警告し、高いインフレは世界経済にとって「明確かつ目の前にある危険」だと述べた。
『ロイター通信』とドイツ週刊誌
『シュピーゲル』によると、IMFは2022年と2023年の世界経済成長率の予測を下方修正することを明らかにした。ロシアのウクライナ戦争によって食糧とエネルギー価格が上昇し、すでに脆弱な経済に圧力がかかっている。ゲオルギエワ専務理事は、世界は「非常に危険な時期」にあると警告している。また、ほとんどの国がプラス成長を維持するものの、世界経済生産の86%を占める143カ国の経済成長見通しを下方修正すると述べた。...
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『ロイター通信』とドイツ週刊誌
『シュピーゲル』によると、IMFは2022年と2023年の世界経済成長率の予測を下方修正することを明らかにした。ロシアのウクライナ戦争によって食糧とエネルギー価格が上昇し、すでに脆弱な経済に圧力がかかっている。ゲオルギエワ専務理事は、世界は「非常に危険な時期」にあると警告している。また、ほとんどの国がプラス成長を維持するものの、世界経済生産の86%を占める143カ国の経済成長見通しを下方修正すると述べた。
ゲオルギエワ専務理事は、「今日、私たちが直面していることの根本的な原因は戦争であり、戦争こそ終わらせなければならない」と述べ、「経済的には、成長率は低下し、インフレが進行している。人で言えば、人々の所得は減り、苦難が増している」と語った。そして、インフレが、以前の予想よりも長く高止まりする見通しを明らかにした。
ゲオルギエワ専務理事はまた、世界経済の成長率について「戦争とその影響のため、見通しは大幅に悪化している。さらにインフレ、金融引き締め、世界のサプライチェーンに新たな混乱をもたらしている中国での頻繁で広範囲なロックダウンなどが、(世界経済の)重荷になっている」と述べた。その上で、貿易や技術、決済システム、基軸通貨などの基準が異なる、競合するシステムが出現する恐れをもたらす世界経済の分断化は、第二次世界大戦後に設立されたIMFや世界銀行などの機関が統治する米国主導の経済秩序に対する最大の脅威であると警告した。「このような地殻変動が起きれば、痛みを伴う調整コストが発生する。サプライチェーン、研究開発、生産ネットワークが破壊され、再構築が必要になるだろう。貧しい国や貧しい人々が、このような混乱の矢面に立たされることになる」と語った。
そして、「ヨーロッパの戦争がアフリカの飢餓を引き起こし、パンデミックが数日で世界を一周して何年も長引き、ある国で排出されたものが海全体の上昇を引き起こすような世界では、グローバルな協力関係が崩壊し、集団繁栄に対する脅威となることは誇張されてはならない」と述べた一方で、「複雑だからといって不可能なわけではない。冷戦終結後の統合により、世界経済規模が3倍になり、約13億人の貧困が大幅に削減された」と指摘した。
厳しい世界情勢が続く中、IMFは、5月1日付で新たな基金「レジリエンス・サステナビリティー・トラスト」を創設することを発表した。仏『レゼコー』によると、この基金は、「低所得国や脆弱な中所得国が、気候変動やパンデミックなど、マクロ経済上のリスクをもたらす長期的な構造的課題に取り組むのを支援する」ことを目的としており、資源目標は少なくとも450億ドル(約5兆6853億円)だという。
この新しい基金は、「国際収支上のリスク管理の支援のために、20年の償還期間と10年半の猶予期間」という、より長期の手頃な資金調達を提供する。加盟国の4分の3が利用可能となる。
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