ドイツのシンクタンク「キール世界経済研究所」が発表したデータによると、ウクライナへの支持を表明している国々の間には援助の程度に大きな格差があることが判明した。米国がウクライナ人に対する最大の援助供与国となっており、その支援はヨーロッパのすべての国や機関の合計を上回っている。
仏紙
『レゼコー』によると、ドイツのキール世界経済研究所は、2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始から3月末までの間に、EU加盟国とその他のG7メンバー31カ国からの援助、および欧州機関からの寄付など、公開されているすべてのデータを集計した。シンクタンクのリサーチディレクターで、このデータベースの主執筆者であるクリストフ・トレベッヒ氏は、「戦争が始まって以来、世間の議論はロシアの幹部を効果的に弱体化させる方策に集中し、ウクライナへの支援は、データ不足もあり、あまり注目されてこなかった」と述べている。
集計結果で気が付くことは、ヨーロッパがウクライナを支援するために様々な対策を取ってきたものの、圧倒的に多くの資金を費やしているのはアメリカであるということである。アメリカだけで76億ユーロ(約1兆円)を費やした。その半分強が武器、食糧、燃料などの軍事援助で、残りが人道支援であった。戦争が始まって以来、ウクライナに提供された二国間軍事援助のうち、合計で4分の3以上がアメリカからのものである。
次いで、隣国のポーランドが10億ユーロ(約1390億円)弱を支出し、主に資金面で支援し、米国に次いでウクライナ人への軍事支援額が大きい英国は、7億ユーロ(約975億円)で3位となっている。EUの二大勢力であるドイツとフランスは、人道的支援と財政的支援を中心としており、それぞれ4位と5位に登場する。日本は、イタリア、スウェーデン、エストニア、カナダに続いて10位に登場している。
欧州機関では、ウクライナに軍事支援を行っている加盟国に償還するための10億ユーロ(約1390億円)の基金がEU理事会で承認された。しかし、欧州投資銀行が発表した20億ユーロ(約2786億円)の緊急融資など、欧州の他のすべての施策と合計しても、合計63億ユーロ(約8777億円)は米国の支出より少ない。
しかし、一部の加盟国による努力は相当なものである。国内総生産(GDP)比率で比較すると、東欧4カ国が放出する援助金は米国を上回っている。特に、エストニアはGDPの0.8%近くをもって援助していると推定され、圧倒的な支援を施している。
仏ニュースサイト『ユーロニュース』によると、2位はポーランドでGDPの0.18%に相当し、リトアニア、スロバキア、スウェーデンが上位5位までを占めた。一方、米国の支援額はGDPの0.4%弱で、6位に下がる。日本は上位10位から外れている。
リサーチディレクターのトレベッヒ氏は、「ウクライナに地理的に近いということが、東欧諸国の関与に大きな役割を果たしているようだ」と述べている。ただし、このデータには限界があり、「特にウクライナへの軍事援助は必ずしも透明ではないので、全体像を示すことはできない」という。また、難民支援の費用など、他の種類の支援も含まれていない。
国連によると、ロシアの攻撃開始以来、ウクライナから脱出した人は490万人以上にのぼる。近隣諸国はその大部分を受け入れており、ポーランドは280万人の難民を、ルーマニア、ハンガリー、モルドバは合計190万人の難民を受け入れている。
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仏紙
『レゼコー』は、世界第3位の経済大国の成長は陰り、もはや輸出の強さに頼れず、コントロール不能となっている通貨安は日本にとって障害となりつつある、と報じている。先週、円が20年ぶりの安値を更新し、象徴的な1ドル=125円を突破した際、2022年末までに1ドル=130円まで下落する可能性があると予測された。しかし、その予測はもっと早く的中する可能性があるという。20日、ドルは数分の間129円に達し、ウクライナ戦争が始まって以来、日本の通貨の価値が12%失われた。
同紙は、円の急落に対して、日本当局や経済関係者がパニックに陥り始めていると指摘。日本の保守党政権は、何十年もの間、円安戦略を支持し、それが自国企業の輸出を促進すると確信していた。しかし、この理論は時代遅れであり、円安は日本経済にとって障害になっていることが証明されたと伝えている。仏紙『ルフィガロ』も、急激な円安は、2011年以降、貿易黒字を3回しか記録していない日本の国際競争力の低下を示すものであると報じている。
米『ABCニュース』は、日本政府が発表した貿易赤字が予想以上に大きく、その主な原因が原油や食料、その他の必需品の輸入コストが高騰しているためであり、日本国内でも円安に対する警戒感が強まっていると報じている。3月の赤字額は4124億円で、前月の6682億円を下回ったが、予想の4倍に達し、世界第3位の経済大国である日本が記録した前年の6150億円の黒字から一転して赤字となった。日銀は円安に歯止めをかけようとしており、日銀の膨大な外貨準備に頼って、ドルを売って円を買い上げる可能性がある。しかし、その種の介入には限界があり、どれほど効果があるかは不明だという。
米『ブルームバーグ』も、円安は日本の家計にとって物価上昇の痛みを悪化させていると伝えている。財務省が20日に発表したところによると、3月の日本の輸入は前年比31%増で、原油、石炭、天然ガスが牽引して過去最高額となった。これは、エネルギー資源を他国に大きく依存している日本では、電力料金の上昇につながるだろうと指摘。また、急激な通貨下落は輸入品をより高価にし、日本の家庭の痛みを増幅させるだろうと伝えている。こうした中、岸田首相は、数カ月後に迫った国政選挙を前に、物価上昇に対する国民の反発の声に耳を傾け、今月末、国民を助けるために追加の救済措置を発表する予定だ。しかし、『ブルームバーグ』は、米国の金利上昇と日本の超低金利が円安圧力に拍車をかけているため、日本政府は円安を止めるのに苦労していると伝えている。
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