中国「ゼロ・コロナ」政策に恩恵を受けるベトナム
中国と米国の緊張関係を懸念して生産ネットワークの地理的多様化を進めていた多くの多国籍企業が、中国の厳しいロックダウン政策に懲りてその動きを加速させている。アップルもベトナムへの工場移転をさらに推し進めていくことを決定した。
仏経済紙
『レゼコー』は、アップルが初めて、中国以外の国でiPadの組み立てを行うことを決定したことは、象徴的な動きであると報じている。アップルはまだこの「移転」を正式には発表していないものの、すでにサプライヤー、特に中国の組立メーカーBYDに対し、同社の新世代タブレットの一部をベトナムの工場で製造する準備をするよう要請しているという。
アップルは、この生産拠点の多様化について、特に米国と中国の間の地政学的・経済的緊張が高まっていることから、何年も前から検討し、2020年には、すでにAirPodsの一部の製造をベトナムに移していた。...
全部読む
仏経済紙
『レゼコー』は、アップルが初めて、中国以外の国でiPadの組み立てを行うことを決定したことは、象徴的な動きであると報じている。アップルはまだこの「移転」を正式には発表していないものの、すでにサプライヤー、特に中国の組立メーカーBYDに対し、同社の新世代タブレットの一部をベトナムの工場で製造する準備をするよう要請しているという。
アップルは、この生産拠点の多様化について、特に米国と中国の間の地政学的・経済的緊張が高まっていることから、何年も前から検討し、2020年には、すでにAirPodsの一部の製造をベトナムに移していた。しかし、習近平政権が「ゼロ・コロナ」戦略の一環として実施している厳格なロックダウンにより、アップルは他の高付加価値製品の移転を加速させている。投資銀行ナティクシスでアジア新興国を専門とするエコノミストのトリン・グエンさんは、「アップルのサプライチェーンは中国に極度に集中していた。アップルはサムスンに続き、ベトナムなど生産拠点を大幅に分散させている」と述べている。
アナリスト達は、大規模な多国籍企業の多角化の努力は、すでにベトナム経済の統計で測定可能であると指摘している。5 月の製造業 PMI は、4 月の 51.7 から 54.7 に上昇し、東南アジア地域で最もダイナミックな産業活動を記録した。一方中国では、工場の活動の成長と縮小の分かれ目となる50を依然として下回っている。中国の輸出が停滞する中、ベトナムの輸出は記録的な成長を遂げている。グエンさんは、「ベトナムは、この地域の他の国々と同様に、中国のロックダウン政策の影響を受けていることは確かだが、優れた回復力を示し、多様化戦略の妥当性を証明している」と述べている。
今年、ベトナムのGDPは6.5%の成長が見込まれている。東南アジアの近隣諸国も、中国から流出する生産(繊維、自動車など)の一部を受け入れており、経済活動は力強く回復すると予想されている。この数十年で初めて、アセアン6カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム)の経済成長率が中国を上回る可能性が出てきている。マレーシアの銀行メイバンクのアナリストによると、2022年のアジア6カ国のGDP成長率は5%近くになることが見込まれているが、中国は最大で4.5%の成長にとどまると推測されている。
独『ドイチェ・ヴェレ』も、エレクトロニクス業界をはじめ、多くの企業が多額の資金をベトナムに投入していると報じている。韓国の電子機器大手サムスンは2月、ベトナムにさらに9億2000万ドル(約1195億円)を投資すると発表した。また、ハイテク産業においても生産拠点を中国からベトナムに移す傾向も続いているという。コンサルタント会社フィッチ・レーティングスのラファエル・モック氏はロイターに対し、「ベトナムはサプライチェーンのシフトによる主な受益者の1つになるだろう」と述べている。ドイツアジア太平洋ビジネス協会のミュラー氏は、「中国に対するビジネス上の不満は、以前にはなかったレベルにまで達している」と指摘している。
しかし、ベトナム経済には課題もある。近年の開放的な経済政策により、グローバルなサプライチェーンに組み込まれていることが、近年の経済成長を可能にしている一方で、ベトナムは原材料や部品製品の供給に依存しているため、その一部がパンデミックによって欠品または遅延しているという。また、ベトナムは米国と中国の地政学的緊張の高まりの影響を受けやすいため、その経済力を維持するためには、弾力性のあるサプライチェーンが鍵となる。しかし、ミュラー氏は、この分野でベトナムはまだ十分ではないと指摘している。例えば、サプライチェーンのすべてのプロセスやステップのデジタルネットワーク化はまだ遅れており、デジタル化への関心も低い。さらに、ベトナム経済全体もレジリエンスを高めるために、付加価値の高い生産の基盤の充実が求められ、あらゆるレベルの専門性を高めるためにベトナムの教育システムの改善が必要だという。国内の消費者需要の強化の必要性も指摘されている。世界銀行によると、2020年のベトナムの対外貿易比率は209%であり、経済依存度の高さを示している。しかし人口1億人弱のベトナムは、中国のような内需中心の経済発展を目指すことはできない点が弱点となっている。
閉じる
ドイツ、ウクライナに最新兵器を提供することを発表
ドイツのショルツ首相は1日、最新の対空防衛システム「IRIS-T」を含む、国内で生産されている兵器をウクライナに提供すると発表した。同首相はこれまでウクライナへの支援に消極的だったと批判されてきたが、本格的なウクライナ支援に重要な一歩を踏み出した。
仏
『レゼコー』によると、ここ最近、ショルツ政権に対するウクライナ支援のための国内外からの政治的圧力が強まっていた。ドイツの野党指導者フリードリヒ・メルツ氏は、ウクライナに重火器を提供するという連邦議会の命令を首相が尊重していないと非難していた。また、ウクライナに譲渡した戦車の代替兵器を受け取っていないことに不満を持つポーランドもショルツ政権を非難していた。グレッセル氏は、欧州連合(EU)では、「ドイツの不明確な役割に失望し、同政権に対する苛立ちがあった」と説明している。...
全部読む
仏
『レゼコー』によると、ここ最近、ショルツ政権に対するウクライナ支援のための国内外からの政治的圧力が強まっていた。ドイツの野党指導者フリードリヒ・メルツ氏は、ウクライナに重火器を提供するという連邦議会の命令を首相が尊重していないと非難していた。また、ウクライナに譲渡した戦車の代替兵器を受け取っていないことに不満を持つポーランドもショルツ政権を非難していた。グレッセル氏は、欧州連合(EU)では、「ドイツの不明確な役割に失望し、同政権に対する苛立ちがあった」と説明している。
ショルツ首相は連邦議会で、ドイツの軍需企業ディールディフェンス社が開発した最新兵器、対空防衛システム「IRIS―T」をウクライナに納入することを発表した。ドイツはこれまで、国内生産の武器をウクライナに直接送ることに難色を示し、旧東欧諸国の在庫から古い機器を送るという循環型の配送システムを好んでいた。
欧州外交問題評議会(ECFR)のグスタフ・グレッセル研究員は、「ロシアの空爆は激化する一方なので、これは非常に重要なステップだ」と述べている。ウクライナは、他の西側諸国が供給できない対空ミサイルシステムS-300の弾薬を使い果たす危険性があり、ドイツを除けば、代替システムを作れる国はほとんどないと指摘している。
ショルツ首相は、人道的な観点から、「ロシアの空爆から大都市全体を守る可能性をウクライナに与えることになる」と述べ、今後数週間のうちに「オランダと緊密に連携し、世界で最も近代的な装甲榴弾砲を12基」納入するだけでなく、米国と協力して、自国がロケットランチャーを提供することを示唆した。また、敵の榴弾砲、迫撃砲、ロケット砲を探知するための追跡レーダーも提供することを明らかにした。しかし、「最新の機器を使えるようにしなければならない。数週間から数カ月の訓練が必要だ」と述べた。
米ニュースサイト『マディソン』によると、国連軍の元フランス軍司令官ドミニク・トランカンは、新しい武器は、町や都市を攻撃しているロシアの砲弾を打ち返し、ロシアの空爆を制限することによって、ウクライナが東部に新しい防衛線を設定し保持するのに役立つだろうと述べている。トランカン氏は、「NATO諸国は、ウクライナが自由に使える武器を徐々に増やしてきた。これには、ロシアの限界を試す目的があったと思う」と述べ、「毎回、ロシアの反応を測っているが、反応がないので、ますます効果的で洗練された兵器を供給し続けている」と説明している。
米国のバイデン大統領も1日、ウクライナに高度なロケットシステムを含む兵器を供与すると表明した。軍事専門家たちによると、ロシアは流れを変える可能性のある兵器が到着する前にウクライナ東部を制圧することを望んでいるという。米国防総省によれば、米国の精密な兵器と訓練を受けた兵士を戦場に送り込むには、少なくとも3週間かかるという。しかし、コリン・カール国防次官は、戦いに変化をもたらすのに十分間に合うと信じていると述べた。
閉じる
その他の最新記事