中国人民元IMFのSDR構成通貨へ(2015/11/18)
IMF(国際通貨基金)のSpecial Drawing Rights(SDR:特別引出し権)は、IMFが通貨危機に備えて加盟国に配る準備通貨で、現在米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円の四つの通貨で構成されている。現在の国際通貨は米ドルに大きく依存しており、米ドルの価値が減価した場合のリスクが大きい。中国の習近平政権は過度の米ドル依存を是正するために、中国人民元を国際通貨とする政策を進めており、その一環として人民元をSDRの構成通貨とするよう働きかけて来た。IMFは11月13日人民元がSDR入りの条件を満たしているという報告書を発表したが、この結果11月30日のIMF理事会の承認を経て正式決定がなされることになる。人民元は資本取引の自由化が完了しておらず国際通貨と認めるには早計の感もあるが、SDRの構成通貨変更は5年に一度とされており、世界第二の経済大国に成長した中国の意向を無視できない欧米各国の思惑が見てとれる。13日のIMFの発表について世界各紙は次のように報じた。
11月15日付
『ブルームバーグ ビジネス』は、「人民元の興隆が世界経済に意味するもの」という見出しで今後人民元の国際化が与える影響を分析している。人民元がドル、ユーロと並んで上位の準備通貨に加わることにより世界経済の安定度が大いに増すというエコノミストは多い。世界の外国為替取引の87%はドル絡みの取引である。特に欧州債務危機以降ユーロの割合が低下してドルへの依存度は増しており、ドル一極依存の世界通貨体制は不安定且つ継続不能の状態にあるので、経済規模は世界第二位、貿易量は世界第一位の中国がドルを補完する準備通貨を提供するだろうと、あるエコノミストは言う。...
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11月15日付
『ブルームバーグ ビジネス』は、「人民元の興隆が世界経済に意味するもの」という見出しで今後人民元の国際化が与える影響を分析している。人民元がドル、ユーロと並んで上位の準備通貨に加わることにより世界経済の安定度が大いに増すというエコノミストは多い。世界の外国為替取引の87%はドル絡みの取引である。特に欧州債務危機以降ユーロの割合が低下してドルへの依存度は増しており、ドル一極依存の世界通貨体制は不安定且つ継続不能の状態にあるので、経済規模は世界第二位、貿易量は世界第一位の中国がドルを補完する準備通貨を提供するだろうと、あるエコノミストは言う。人民元のSDR入りで世界の中央銀行や政府系ファンドが約3,500億ドルを中国の債券市場に投じると言われている。しかし、人民元が国際通貨として資金調達や投資に使われるようになるためには、SDR入りに加えて投資家の尊敬と信頼が必要であり、これには時間が掛かる。今年8月の株式暴落の際の政府の市場介入や、人民元切下げは信頼に打撃を与えた。今後信頼は、国営企業改革、輸入、投資の自由化を含む市場改革を進めることで強固なものになる、というエコノミストの意見を伝えている。
11月16日付
『メールオンライン』は、「ロイター通信」を引用して「資本流出に要注意 日本中国の人民元改革減速化を求める」という見出しで日本の二の舞にならないようにと言う日本の政府関係者の意見を報じている。今年8月の株式暴落と人民元切下げの際市場の開放を急速に進め過ぎると市場をコントロール出来なくなることを経験している筈で、市場の投機筋に翻弄されないためには徐々に改革を進めるべきだとする。従って市場の改革が完了して初めて人民元のSDR入りを考えるべきという意見であり、中国が改革に失敗すれば中国だけの問題に止まらず、日本やアジア全体が大きな影響を受けるという懸念を伝えている。
11月15日付で
『CNBC通信社』は、「IMFの支持あっても元高に振れない訳は?」という見出しでIMF報告書発表後16日の市場で人民元為替レートが6.379元/ドルと13日よりも元安に推移していることを報じている。IMF報告書発表で人民元のSDR入りは8割がた決まったが、人民元買いを増やすためには人民元建て資産購入のメリットを示す必要がある。SDRのバスケットの中の人民元の比率がまだ決まっていないことも、人民元買いが直ぐに増えない理由である。比率については9%という説、10%という説と色々ある(日本円は現在9.4%)と、元高に繋がっていない理由を分析している。
11月16日付英文版
『上海日報』は、「中国 IMF人民元報告を歓迎」という見出しで、13日のIMF報告書発表とラガルド専務理事の人民元のSDR入り支持声明を歓迎するという14日の中国の中央銀行・中国人民銀行の声明を報じた。銀行の声明では「人民元のSDR入りはSDRの象徴性と魅力を増し、現状の国際通貨制度の最適化に資するため、中国と世界の双方に利益をもたらす。」とも表明している。
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三菱MRJ初飛行の海外での報道(2015/11/13)
三菱航空機(三菱重工子会社)の国産ジェット旅客機MRJが11月11日初飛行を行った。
日本における旅客機開発はYS11以来約50年ぶりとなるが、設計変更や製造工程の見直し、部品の改修などで当初2011年に予定されていた初飛行が4年以上遅れている。2017年半ばに初号機の全日空への引渡しが予定されており、それまで2500時間の飛行試験を実施する予定である。今後の途も平坦なものではないかもしれないが、需要増が期待される近中距離の航空機市場で大きな飛躍を期待したい。以下ではこの初飛行が海外メディアではどう報道されたかを見る。
11月11日付
『ロイター通信』は、「日本の50年ぶりの旅客機 処女飛行」という見出しで今回の飛行についての基本的な内容について伝えたほか、三菱重工がゼロ戦を製造したこと、三菱も加わったYS11の開発は不首尾に終わったが、開発の過程でボーイング社との関係が出来て、第二次大戦後解体された日本の航空機産業の再興に繋がったことが触れられている。また、初飛行はドバイで開かれていた航空ショーの参加者の耳目を惹きつけたが、参加者は今後日本、中国、ロシア等のメーカーが市場に参入して来ることを予想していると報じている。...
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11月11日付
『ロイター通信』は、「日本の50年ぶりの旅客機 処女飛行」という見出しで今回の飛行についての基本的な内容について伝えたほか、三菱重工がゼロ戦を製造したこと、三菱も加わったYS11の開発は不首尾に終わったが、開発の過程でボーイング社との関係が出来て、第二次大戦後解体された日本の航空機産業の再興に繋がったことが触れられている。また、初飛行はドバイで開かれていた航空ショーの参加者の耳目を惹きつけたが、参加者は今後日本、中国、ロシア等のメーカーが市場に参入して来ることを予想していると報じている。
11月11日付米国
『ニューヨークタイムズ』は、「三菱 日本で50年ぶりのジェット機を公開」という見出しで、ロイター通信の記事を引用する形で比較的簡単に伝えた。
11月11日付米国
『ブルームバーグ ビジネス』は、「日本のジェット旅客機 初飛行の空へ」という見出しで比較的長い記事で伝えている。菅官房長官が、政府は三菱機の海外販売を支援すると発言したこと、それに対する三菱航空機社長の「政府の支援に感謝し、将来海外での販売のため官民合同海外派遣団の組成を期待する」との発言も引用している。また、日本では余り報道されていないが、この初飛行の9日前に中国が初めて開発したナローボディージェット旅客機が公開されたことも紹介している。MRJが、ブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアの2社で独占して来た100席未満のジェット旅客機市場に楔を打込むことが期待されていることも伝えている。
競争相手となるカナダ、ブラジルでも報道された。
11月11日付カナダの
『グローブアンドメール』は、「日本のリージョナルジェット機 ボンバルディアの新しい競争相手として現れる」という見出しで「ブルームバーグ ビジネス」の記事を引用して伝えている。
11月11日付ブラジルの英字紙
『ブラジル サン』は、「三菱リージョナルジェット機の処女試験飛行 順調に終わる」という見出しで、ブラジルのエンブラエルやカナダのボンバルディアと競合する市場への参入を図ると報じている。
11月11日付中国の
『新華社通信』は、「50年ぶりに国内製造の日本ジェット旅客機 処女飛行を終える」という見出しで報じた。三菱航空機の営業担当者は、「日本の信頼性と品質は成功をもたらす。」と言う。また、エンブラエル社の飛行機と比較して、座席が幅広く快適、燃費効率は2割上、離着陸時の騒音が少ない点で問題にならないとも発言したと伝えている。同通信はまた、MRJプロジェクトがトヨタ、住友、三井、三菱関係会社という日本を代表する企業の2,000億円を超える出資を募っており、謂わば国営企業のようなものである。更には政府系金融機関である日本政策投資銀行が1,000億円を注込んでおり、優遇された輸出金融も受ける予定であるとも報じている。
(注)三菱航空機(株)の資本金と出資者は以下のとおり。
資本金:1,000億円
出資者:
三菱重工業 64.0%
三菱商事 10.0%
トヨタ自動車 10.0%
住友商事 5.0%
三井物産 5.0%
東京海上日動 1.5%
日揮 1.5%
三菱電機 1.0%
三菱レイヨン 1.0%
日本政策投資銀行 1.0%
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