三菱航空機(三菱重工子会社)の国産ジェット旅客機MRJが11月11日初飛行を行った。
日本における旅客機開発はYS11以来約50年ぶりとなるが、設計変更や製造工程の見直し、部品の改修などで当初2011年に予定されていた初飛行が4年以上遅れている。2017年半ばに初号機の全日空への引渡しが予定されており、それまで2500時間の飛行試験を実施する予定である。今後の途も平坦なものではないかもしれないが、需要増が期待される近中距離の航空機市場で大きな飛躍を期待したい。以下ではこの初飛行が海外メディアではどう報道されたかを見る。
11月11日付
『ロイター通信』は、「日本の50年ぶりの旅客機 処女飛行」という見出しで今回の飛行についての基本的な内容について伝えたほか、三菱重工がゼロ戦を製造したこと、三菱も加わったYS11の開発は不首尾に終わったが、開発の過程でボーイング社との関係が出来て、第二次大戦後解体された日本の航空機産業の再興に繋がったことが触れられている。また、初飛行はドバイで開かれていた航空ショーの参加者の耳目を惹きつけたが、参加者は今後日本、中国、ロシア等のメーカーが市場に参入して来ることを予想していると報じている。
11月11日付米国
『ニューヨークタイムズ』は、「三菱 日本で50年ぶりのジェット機を公開」という見出しで、ロイター通信の記事を引用する形で比較的簡単に伝えた。
11月11日付米国
『ブルームバーグ ビジネス』は、「日本のジェット旅客機 初飛行の空へ」という見出しで比較的長い記事で伝えている。菅官房長官が、政府は三菱機の海外販売を支援すると発言したこと、それに対する三菱航空機社長の「政府の支援に感謝し、将来海外での販売のため官民合同海外派遣団の組成を期待する」との発言も引用している。また、日本では余り報道されていないが、この初飛行の9日前に中国が初めて開発したナローボディージェット旅客機が公開されたことも紹介している。MRJが、ブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアの2社で独占して来た100席未満のジェット旅客機市場に楔を打込むことが期待されていることも伝えている。
競争相手となるカナダ、ブラジルでも報道された。
11月11日付カナダの
『グローブアンドメール』は、「日本のリージョナルジェット機 ボンバルディアの新しい競争相手として現れる」という見出しで「ブルームバーグ ビジネス」の記事を引用して伝えている。
11月11日付ブラジルの英字紙
『ブラジル サン』は、「三菱リージョナルジェット機の処女試験飛行 順調に終わる」という見出しで、ブラジルのエンブラエルやカナダのボンバルディアと競合する市場への参入を図ると報じている。
11月11日付中国の
『新華社通信』は、「50年ぶりに国内製造の日本ジェット旅客機 処女飛行を終える」という見出しで報じた。三菱航空機の営業担当者は、「日本の信頼性と品質は成功をもたらす。」と言う。また、エンブラエル社の飛行機と比較して、座席が幅広く快適、燃費効率は2割上、離着陸時の騒音が少ない点で問題にならないとも発言したと伝えている。同通信はまた、MRJプロジェクトがトヨタ、住友、三井、三菱関係会社という日本を代表する企業の2,000億円を超える出資を募っており、謂わば国営企業のようなものである。更には政府系金融機関である日本政策投資銀行が1,000億円を注込んでおり、優遇された輸出金融も受ける予定であるとも報じている。
(注)三菱航空機(株)の資本金と出資者は以下のとおり。
資本金:1,000億円
出資者:
三菱重工業 64.0%
三菱商事 10.0%
トヨタ自動車 10.0%
住友商事 5.0%
三井物産 5.0%
東京海上日動 1.5%
日揮 1.5%
三菱電機 1.0%
三菱レイヨン 1.0%
日本政策投資銀行 1.0%
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