人口過密問題や交通渋滞、地盤沈下などの問題を抱えるタイの首都を移転する案が浮上した。以前から移転構想はあったが実現はしていない。渋滞解消のためバンコク郊外に移転した政府機関も既にあるが、首都を移転するには多額の投資が必要となるため現実的ではない。インドネシアの首都ジャカルタも似たような問題を抱えており、首都の移転計画を発表したばかりである。
9月30日付英国
『ガーディアン』は「タイ首相がバンコクの過密を理由に首都移転を検討」との見出しで以下のように報道している。
チャンオチャ首相が首都移転の可能性に触れ、タイがアジアで首都を移転する第二の国となる可能性がある。
ミャンマーやインドネシアでの同様の動きに感化されたタイ首相は、首都移転がバンコクの都市化問題の解決の糸口となる事に期待を寄せる。 インドネシアのジャカルタ同様、バンコクも過密、人口増加、海面上昇、交通渋滞の問題が深刻である。...
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9月30日付英国
『ガーディアン』は「タイ首相がバンコクの過密を理由に首都移転を検討」との見出しで以下のように報道している。
チャンオチャ首相が首都移転の可能性に触れ、タイがアジアで首都を移転する第二の国となる可能性がある。
ミャンマーやインドネシアでの同様の動きに感化されたタイ首相は、首都移転がバンコクの都市化問題の解決の糸口となる事に期待を寄せる。 インドネシアのジャカルタ同様、バンコクも過密、人口増加、海面上昇、交通渋滞の問題が深刻である。
18日タイで開催された世界会議の演説で、二つの構想案を述べた。一つはバンコクから遠すぎず、コストも高くすぎない移転先の都市を見つけること、二つ目は、過密軽減のためバンコク周辺へ移動することである。政府をバンコク近郊に移転する事も交通渋滞の緩和や都心への通勤混雑緩和につながる点にも触れた。首都移転に関わる社会的、経済的な総合研究や検証も必要となるとしながらも、在任中の移転の可能性にも言及した。
数週間前には、インドネシアのウィドド大統領が首都の移転を発表。ジャカルタからジャワ島以外の東カリマンタン島かボルネオ島に移転するという。
タイの首都移転は以前にもタクシン政権下で検討されてきた。バンコクから100キロ離れたナコンナヨックへの移転や、バンコク東方の農業都市のチャチェンサオへの移転が検証されたこともある。国家経済社会開発委員会の職員は、「首都移転は大きな問題で、各機関との連携協力が必要となる。今回首相は渋滞解消の策の一例として構想を公けに口にしたに過ぎない」とし、今回の移転への言及はそう具体的なものでないとしている。
昨年の世界の交通渋滞に関する調査ランキングで、ジャカルタに次いでバンコクが8位、1位はムンバイであった。専門家はバンコクの交通渋滞解消策の検討が先であり、都市移転を検討するのはその次にすべきだと指摘している。
同日付タイ『バンコクポスト』は「首都構想」との見出しで以下のように報道している。
首都移転構想が再び浮上した。首相がおそらく不用意に発言した移転案は二つ。タイの首都バンコクはインドネシアの首都ジャカルタと似たような問題を抱えている。人口過密問題や交通渋滞で、海面上昇で将来洪水が起きる可能性も指摘されている。以前にもタクシン政権期に移転構想はあったが実現には至らず、構想から実現への壁の厚さが露呈した。
タイを世界へつなぐをテーマとした国際会議(NESDC主催)のスピーチで、首相は過密問題解決の可能性として首都移転を述べた。過密解消と周辺都市の景気対策には、都市開発が鍵となる。 12期国家経済社会開発計画(2017~2021年)のテーマは、地域開発と都市部への集中緩和だ。現行の複線鉄道や高速鉄道システム等のインフラ計画により新たな経済圏が形成される。政府の主力東部経済回廊地帯(EEC)により、今後5年以内には新たな経済エリアが形成される予定。その次は南部のタイ湾沿いの道路、複線鉄道をインフラ計画。
現在はバンコクが対の経済の中心だが、5年先には東部の海岸地域がバンコクを上回る経済エリアとなるであろう。
首都移転は難しいが、多くの政府機関は、渋滞解消のため、既にバンコク郊外の周辺に移っており、そのための東西、南北を結ぶ交通網の発展は欠かせない。バンコクは洪水も起きやすく、問題が多い。バンコク都市行政・都市計画部長は、新首都の都市計画をゼロから立てるのは容易だが、バンコクから移転するのは非常に困難となるだろうとしている。バンコクは交通ネットワーク発展に多額の投資をしてきた。新首都に同様の再投資を期待するのは難しいという。
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シンガポールの
『TODAY』が報じたところによると、議長国タイのプラユット首相は会議後の記者会見で、「世界第1、第2の経済大国間で貿易摩擦の緊張が高まる中、ASEANはその経済力を生かして世界の中での交渉力を高める必要がある」と語った。首相はまた、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)締結に向けて交渉を加速させるようASEAN各国に促した。「ASEAN地域が将来直面する変化や不安定性に対処するためにRCEPをまとめることが重要だ。特にASEANの重要な貿易相手国の間で広がる貿易摩擦の問題に対処するためにRCEPは不可欠だ。ASEANとして協力して対応することができれば、我々は交渉力を強めることができる。ASEANは6億5千万人の人口を抱え、世界の中で最も大きい経済圏だからだ。」と指摘した。プラユット首相はまた、「ASEANのうち、タイ、インドネシア、シンガポール、ベトナム、の4か国は、G20サミットでも貿易戦争への対応について協議をする」としている。
RCEPの交渉は2012年に始まり、自由貿易圏を創出することを目指していた。RCEPはASEAN10か国に、日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランドを含めた計16か国から構成され、その経済圏は全世界の人口の45%と、全世界のGDPの3分の1以上を占める。だが中国とインドの間で、市場へのアクセス、及び保護する品目についての議論が続き、交渉が停滞している。
シンガポールのリー首相も、記者団に対してシンガポール経済が今年すでに減速していることを指摘し、ASEANは「米中の貿易戦争からある程度の影響を受けることは避けられない」と語った。首相はさらに、「規模の小さな国々は、大国の行動をコントロールできない。しかし貿易、安全保障、テクノロジーなどの問題に対してASEANは一体となって取り組み、ASEAN全体の利益とすることができる。ASEAN10か国はそれぞれ国の方針も異なり、自国が望む方向性も異なっているため、合意形成は簡単ではない。しかし我々は各国の利益が合致する地点で意見をまとめて、世界に対してASEANとして発言していく必要がある」と語った。
『バンコクポスト』も米中関税戦争への対応が議論の中心となったと伝えている。貿易戦争の問題に加えて、ミャンマーのロヒンギャ問題、南シナ海の問題についても協力して取り組むことも話し合われた。さらに同紙は、ASEANがプラスチックゴミも含めた海洋汚染の問題にも取り組むことで合意したことも伝えている。しかし、米中間の報復関税が世界経済に暗い影を落としている中、この問題への対応が一番の議題となったという。
同紙はプラユット首相の発言として「保護貿易政策が強まっており、ASEANの多国間貿易の枠組みを傷つけている。ASEANは手を取り合ってRCEP交渉に取り組まなければならない。RCEP交渉をまとめることで、貿易摩擦の影響を打ち消すことができる。」と報じた。
またフィリピンのドゥテルテ大統領は「米中の貿易戦争は世界に悪影響を及ぼしている。米中両国は、状況が制御不能な事態に陥る前に、きちんとした議論を行い、双方の見解の差を乗り越えなければならない。」と述べた。
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