タイの野生動物保護当局は30日、タイ西部のトラと触れ合える「トラ寺院」からトラ137頭を接収、寺院関係者らを逮捕した。寺院の冷凍庫からはトラの遺体、ビン詰めの動物の一部なども見つかっており、寺院では漢方薬などに使用され、金になるトラの皮などを違法に取引するためトラを飼育していた疑いもあり、野生動物違法取引や動物虐待に問われる可能性がある。他にもライオン、サイチョウ、鹿の角などが見つかっている。
6月2日付
『ロイター通信』は「タイ寺院の僧侶、トラの不正取引で逮捕」との見出しで次のように報道している。
・タイ当局はタイガー寺院で観光向けにトラの皮や生体の一部を御守りとするため不正に取引しようとした疑いで僧侶1人と2人の信者、運搬を助けた2人の僧侶らを逮捕。トラックからは相当の取引額と見られるトラの皮やトラの子どもの遺体が入った瓶が見つかった。
・当局は野生生物の虐待と不正取引容疑で寺院を家宅捜索、トラ137体を接収、麻酔銃を使い檻に確保しトラックで政府の野生生物保護区で保護する。冷凍庫内では40体のトラの遺体も発見された。
・当局は寺院の「ラボ」で、トラの赤ちゃんや臓器が入った20個のガラス瓶を発見。瓶にはラベルが貼られており、民間薬を製造していた証拠とされる。
・トラの一部は漢方薬に使用され、数百万ドルで取引されるため、野生のトラが絶滅の危機となり、中国などアジアの一部でトラの飼育がみられる。タイは象牙など野生生物製造品の密輸の中心として知られる。活動家は長年寺院を批判し、観光客に寺院訪問を控えるよう呼びかけ、野生生物保護法が機能していないと訴えていた。
・トラ寺院は入場料20ドルで、トラと写真を撮り、えさをやり、トラを見学できる寺院として観光客に人気だった。寺院の代表者らのコメントは得られていない。
同日付タイ
『PBS』は「トラ寺院でトラック内からトラの一部を接収」との見出しで以下のように報道している。
・タイ当局はトラの皮や体の一部から作られた1000個の魔除けの御守りを接収。カンチャナブリのトラ寺院からトラックで逃走する僧侶、寺院職員、運転手を逮捕した。
・国立公園・野生生物・植物保全局、警察、陸軍の職員が寺院前のチェックポイントで止めたトラックの後部座席には3つのスーツケースからは2体分強の皮、トラの牙9本、1045個のトラでできた魔除けの御守りが見つかった。寺院職員は僧侶に、これらを隠し場所に運ぶよう命じられたという。寺院職員と運転手は尋問のためその後拘束され、当局は他にも違法品がないか寺院の地下を捜査する予定。
同日付
『バンコクポスト』は以下のように報道している。
・野生動物保護当局は、サイヨック地方のいわゆるトラ寺院(ワット・パルン・タマハブア)の冷凍庫から40体のトラの遺体、及び当寺院で飼育されたとみられる生きたトラを接収。冷凍庫からは他にもレッサーパンダ、リス、鹿の角5本、ビン詰めの動物の内臓が見つかった。他にライオン、サイチョウ6羽も発見。
・トラ同士につながりがあるか調べるため、遺体を採取、もし検証で寺院以外のトラがいると判明すれば寺院は入手先を問われることとなる。トラの子どもの遺体は古いとみられるが、トラの体部すべて値打ちがあり、生きたトラは数十万バーツ(100万円前後)で取引されるとみられる。
同日付英国
『BBC』は「タイのトラ寺院僧侶が違法取引で逮捕」との見出しで以下のように報道している。
・タイ当局はトラの皮や牙の違法取引でトラ寺院の僧侶を逮捕。野生生物違法取引に問われているが容疑を否認。接収された137頭のトラの保護施設へ移送は一週間を要する模様。
・寺院はバンコクの西方カンチャナブリの観光地で、入場料を支払うと動物と写真を撮れる。接収後は閉館。動物活動家や寺院従業員は、トラは虐待され小さなコンクリートの檻に入れられていたと主張。
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タイでは軍事クーデターから2年が経過し、軍事政権プラユット首相が示す民政復帰に向けたロードマップ(工程表)に従い、新憲法草案の国民投票を8月7日に控えており、反対派は予断を許さない状況である。軍に250議席の決定権を与えるとする憲法案は可決されれば今後も軍政が続くと懸念されている。度重なる反政府デモ活動家の拘束・逮捕や表現の自由への弾圧から、反政府派拠点で東北地方の赤シャツ隊(タクシン派支持基盤)もひっそりとしている。人権問題への批判から米国との関係が冷え込む中、フェイスブックはタイ市民の個人データをタイ政府から保護する方針を発表、いかなる国家政府にも個人情報を開示しないとしている。
5月13日付
『ロイター通信』は「タイ反政府派が国民投票を控えて沈黙」との見出しで以下のように報道している。
・軍の勢力を増強させると批判される憲法草案に関して議論する余地も暫定政権は禁止している。この軍事暫定政権を批判するデモに参加した十数名は2週間拘束され、解放後も政治的活動を制限される。
・3月、軍事政府は兵士に市民を逮捕や拘束できる権限を与え、軍部がその資産の差し押え、家宅捜索、逮捕、尋問できる法令を定めた。これを受け米国務省は軍事政府の権限を国政に留めるよう促した。米国は軍政発足以後はタイの民政化への先行きを案じ両国関係を縮小。
・表現の自由を取り締まる行為は8月の新憲法案の国民投票で国民の意思を問う用意が軍政にあるのかとの批判を生む。軍政部報道官はその批判を否定し、「国民は思う存分反論できる」と述べている。
・軍政府は政権掌握以来、東北部のイサーン地方に目を光らせてきた。広大な当地はタクシン元首相のお膝元でその支持者ら「赤シャツ」隊の基盤となっている。以前イサーン地方で道路脇や軒先でよく見られた赤い旗はクーデター以来見受けられず、反軍事政府派が受けているような仕打ちを恐れひっそりしている。態度矯正プログラムに呼ばれた者は二度と違反しないという誓約書に署名すれば解放されるをという。
・先月政府は、デモや抗議活動などをした再犯者に対し「再教育キャンプ」での態度矯正に踏み込むと発表。
・赤シャツ隊によると、抗議側はクーデター以後、明確な指導者は殆どおらず、国民投票への抗議が難航しているという。赤シャツ隊が名乗っていた反独裁民主戦線(UDD)の報道官は、「出来る事といえばTVに出て公正な国民投票を訴えたり、Tシャツ等にメッセージを書いたり、国民投票でノーと言うことだ」という。
・政府は国民投票を議論するために軍部候補生を全国各地に派遣するとしており、これは選挙規定に抵触しないとしている。」
5月11日付
『ヤフーニュース』(AP通信引用)は、「フェイスブック、タイユーザーのデータは政府に渡らないと公言」との見出しで以下のように報道している。
・フェイスブックは、ソーシャルネットワークがタイ軍事政権から個人情報を守り切れていなかったという懸念の高まりから、タイのユーザーの個人データを保護する方針。
・フェイスブックアジア太平洋局報道官の声明では、「アカウント情報とシステムの安全を期し、タイ政府に情報は与えない。規定に従いタイ政府のデータ要求やサイトのブロック要請を公表し、対処する。最新システムとツールにより情報を守り、いかなる政府国家にも個人データへのアクセス件を与えない」とした。
・先月末、プラユット首相をからかったフェイスブックの投稿がコンピュータ犯罪法にあたるとして8人が当局に逮捕された。更に重刑の王室侮辱罪に問われ別の2人が起訴。警察が証拠として個人的メッセージのやりとりにアクセスしていたと見られている。
・人権ウォッチによると、扇動により軍政府はこれまで46人を逮捕。
・「フェイスブック内での政治風刺で国民を弾圧するとはタイに政治的議論がないということだ」と人権ウォッチアジア代表ブラッド・アダム氏。
・フェイスブックでの度々の投稿から逮捕者が出ており、大手ソーシャルネットワークの使用を見送る活動家も出てきている。オンライン上のプライバシーが侵害されており、メッセージアプリ「LINE」も監視されるとの懸念から、電報やその他の媒体に移行するユーザーもいる。」
同日付タイ
『バンコクポスト』(AFP通信引用)は、「米国がタイの活動家の母親逮捕を批判」との見出しで以下のように報道している。
・息子が反軍政派の40歳の女性が王室侮辱罪で逮捕された。弁護士によると、王室を批判したフェイスブックの投稿に一言だけ「そう」と肯定をしたという。
・これを米国が批判。かつて親タイだった米国は軍事政府の度重なる市民拘束に苛立ちを見せる。
・米国務省東アジア太平洋担当局カーチナ・アダムス報道官は、「このような行為は、自制的で物が言えない状況を生む。活動家やその親族の逮捕尋問が相次ぎ、表現の自由においてタイが国際的基準に達しないと判断される事が懸念される。」と批判している。
5月12日付トルコ
『Turkish Weekly』は、「元タイ首相、軍事政府は国民に改革案をゆだねるべき」との見出しで以下のように報道している。
・2008年~2011年首相を務めた民主党のアピシット・ウェチャチワ氏は、2年前発足した軍事政府は保守的思考が広がっているが改革を進めるには「国民を巻き込む」 ことが必要だと主張。
・ロードマップに従うよう主張する軍政府に、民政復帰を目的とした国家実現のためには永久に権力に固執してはいられないはずだと自信を持って述べた。一方、選挙後に軍政府が権力を持ち続けると懸念。
・オックスフォード出身の同氏は、タイ経済と社会が旧成功モデルの限界に達し、中間層の時代に入ったとし、経済復興のために「新たな思考」の必要性を強調。政策面での政治的構造改革が必要で、それを自覚し行動しないと再び停滞してしまう、とした。
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